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植人  作者: NAO
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山岸 夏乃

7月27日午後3時頃【東京都千代田区丸の内1丁目 東友いずも銀行本店 人事部応接室】


 本店営業部 事務課で働く派遣社員の山岸 夏乃は昼食を慌ただしく取った後、3時半の出納仮締めまでに決済処理を行うべく伝票と悪戦苦闘していたが突然、上司から人事部に行くように命じられた。


 人事部に出向くと人事部長と担当課長が待ち受けており、営業課の石野 光太郎について矢継ぎ早に質問してきたので困惑していた。


 彼は得意先の営業担当で普段は10時から外回りに出掛け、夕方に帰ってきて預り金や伝票を夏乃に渡して処理を依頼するのだが、その際に少し言葉を交わすのみで後は時々彼が休暇先で買ってくるお土産を貰ったり、夏乃がお返しにささやかなお土産を渡すくらいで特段特別な男女関係ではない。


 夏乃としては嬉しそうにお土産を持ってきたり、彼女のお土産を貰って感動している彼を見て面白い人くらいにしか思っていなかった。


 しかし、人事部は彼の人となりについて夏乃が知る限りの事を訊いてきた。

 夏乃は光太郎が事件・事故に巻き込まれたか、何かの不正をしていたのかと思っていた。


「実は昼前に永田町の首相官房から、山岸さんの所在確認と夕方までにあなたを迎えに首相官邸から車を出すとの連絡がありました」

人事部長が緊張した顔で夏乃に話す。


「何でもうちの行員が首相官邸に保護されていて、山岸さんとの面会を求めているそうです」

担当課長が無遠慮な視線で夏乃を見る。


「当行の無名の一行員がなぜ首相官邸で保護されているのか、金融庁を通さず直接うちに連絡するなど普通ではあり得ない事です」

人事部長が言葉を選びながら話を続ける。


「当行行員が国家的な事件・事故に関係していると私達は考えています」

「当行の多くの行員と同様に石野さんは7月18日の出勤途中で行方不明になっています。そして、彼に関することは今日に至るまで分からなかったのです。この異常事態に関係していると考えるのが普通でしょう」

人事部長が説明する。


 あまりの内容に夏乃が言葉を失っているのを見て人事部長はようやく緊張した顔を緩めた。


「首相官房からの説明を聞く限り、彼が何か悪さをしたわけではないようです」

「ただ、山岸さんとの面会を''強く''要望しているようです。それでお話を伺った訳です。驚かせてしまい、申し訳ない」

人事部長と担当課長が夏乃に頭を下げた。


「いえいえ、頭を上げてください。石野さんの事はお話しした通りですし、彼が無事であればそれは良い事ですから会うことに問題はありません」

夏乃は慌てて答えるのだった。


 人事部長との面談後間もなく首相官邸から迎えの車が到着すると、現れた首相官邸の職員に促されて車に乗り込むと夏乃は首相官邸に向かうのだった。


「まさかうちの行員がなぁ……」


 人事部の在る高層階から樹木の発生により凸凹した首相官邸へ向かう夏乃が乗った車を見ながら人事部長がと呟く。


「もしかすると彼は大化けするかも知れませんね」

後ろに控えている担当課長が相槌を打つ。


 実際の所、光太郎は見た目も大化けしているので担当課長の相槌は間違ってはいなかった。

ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m


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