官房長官との会話
「その不審者の要求は?」
総理大臣執務室を出た須賀は職員にと尋ねる。
「老人達は屋久島から来た、総理に話したいことがある、と面会を求めております」
秘書官はが答える。
「屋久島だと!?」
須賀は密かに唸った。
電磁パルス攻撃で九州地方もブラックアウトに陥ったが屋久島だけが唯一完全復旧を遂げたのだ。
しかし、復旧原因が不明な上に、世界遺産の縄文杉が忽然と消失していたことから「屋久島の奇跡」との報告が公安や内閣調査室から上げられていた。
彼らはもしかすると、''本物かもしれない''
「私が話してみよう。本当に屋久島から来たかも確認せねばならん。」
ブラックアウトで通常の交通手段が利用不可能な中を僅か1日,2日で東京に来れる筈が無いのだ。普通は。
須賀はSPを伴って官邸の外へ向かった。
首相官邸の警備陣に包囲された光太郎と久島三兄弟にSPも機動隊も自衛隊員も手が出せずにいた。
文字どおり、物理的に彼らの元へ到達出来ないのだ。
久島三兄弟が展開する思念波シールドにより接触は拒絶され、機動隊の強化樹脂で出来た盾も、SPのスタンガンも、自衛隊の閃光グレネードも全く歯が立たず、膠着状態となっていた。
にらみ合い(久島三兄弟は微笑したままだが)を続ける久島三兄弟に60代半ばのグレーのスーツ姿の男性が近付いて来た。
一郎の手に握られたままの光太郎は指の隙間から見える男性を見て直感が判断する。
「彼は総理大臣に一番近い人物だから話をした方が良い」
一郎に伝える光太郎。
須賀は一郎達まで3mまで近付くと自ら挨拶した。
「遠いところをわざわざお越し頂き恐縮です。内閣官房長官の須賀と申します。お話を伺いたい」
「これはご丁寧に。儂は久島一郎というしがない爺じゃ。そこに居るのは兄弟じゃ」
「二郎じゃ、腹が減ったわい。」
「三郎じゃ、咽が渇いたわい。」
二人は惚けた挨拶をする。
須賀はバツが悪そうに頭を軽くかきながら、
「それは申し訳ありません。ですが、私達が案内しようとしても近付けないと報告を受けましたが?これではおもてなしも出来ませんよ」
「口の廻る小童じゃのう。お前さん達が物騒な物を向けるからじゃよ。いたいけな老人に酷い仕打ちじゃのう。これだから人間は自分勝手なのじゃ」
一郎が皮肉を込めて答える。
「申し開き様もありませんな。ところでどうやって屋久島からこんなに早く来れるのでしょうか?」
「なに、簡単じゃよ。鳥の力を借りたまでじゃ。」
一郎は二人の弟に目配せすると二人は光輝いて一瞬でツバメに変身して一郎の両肩に停まった。
須賀はあんぐりと口を空けて呆けてしまっていた。後ろで包囲する警備隊員達も目を見開いて唖然としていた。
「大変失礼致しました。ご案内いたしますので能力を解いて頂けませんか?」
我に帰った須賀が神妙な口ぶりで要請する。
官房長官直々の案内で一郎達は官邸の中へ入って行く。
包囲していたSPや自衛隊員、機動隊員らは毒気を抜かれた顔で一行を見送るのだった。
そんな光景を一郎に握られた手の内から眺めながら、「俺要らなくね?」と思う光太郎だった。
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