隣国の情勢
【東京都千代田永田町 首相官邸】
光太郎と久島達が警備陣に包囲されたとき、首相の日向誠は執務室で須賀官房長官から中国の状況について報告を受けていた。
「そうか。中国は相変わらず厄介だな」
「ええ、中国の内戦はおそらく歴史的に見ても三國志以来の世界最大規模になると思われます」
「我が国とて他人事ではないのだがな」
顔を顰める日向。
「2万人を超える在留邦人の保護は手付かず、人民解放軍の生物化学兵器・核ミサイルがいつ使われるかわからん状況なのだ。あまり胸を躍らせるのはどうかと思う」
と言って須賀を嗜める。
「申し訳ございませんでした。軽率な発言でした。総理の仰るとおりです。
現在現地の大使館及び領事館で連絡が付くものを通じて各地方政府との交渉を行っておりますが、難航しています。いずれの地方政府とも、日本国の軍事・経済の全面支援要請を受けています」
謝罪した後、苦り切った顔で報告を続ける須賀官房長官。
「大量破壊兵器は今のところ中国国内では使用されていませんが、状況が地方政府にとって不利になれば力ずくで人民解放軍基地を占拠して使用するのは間違いないでしょう」
「介入は論外だ。火中の栗を誰が拾うものか!」
日向首相は吐き捨てるように答えるとセブンスターに火を着けた。
この異常事態が始まった日から彼の禁煙の誓いは破られていた。
煮詰まった思考をタバコで煙に巻いていると秘書官が須賀を呼びに来た。
「官房長官、表に奇妙な不審者複数を確認しました。如何されますか?」
「奇妙とはなんだ?プラカード以外に奇抜なコスプレをした反戦活動家や反原発活動家か?」
「いいえ。それが、鳥から人に変わった者達だと」
「……またか」
この異常事態から何度、常識外の出来事が有った事か。須賀は免疫が付いてきたようだ。
「私が直接見てこよう」
気分転換がてら外に出たかった日向首相が言い出す。
「総理。改めて報告を行いますので総理は万が一に備えて地下の危機管理センターに移動してください」
日向に断りを入れて須賀官房長官は執務室を出るのだった。
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