43・夢幽霊と夢見る猫
私達は今、シシミと豚の勇者の3人で202号室の前にいる。
「ここに!この部屋に!な、なんと!イテちゃんが居るのです!」
私はすごく緊張していたのだが、シシミの陽気な(?)話し方で少し楽になったような気がした。
ここに住んでいるイテちゃんは私の知っているイテちゃんだろうか。それとも・・・・・。
「どうせ同じ名前の別人だろ?早く確認しようぜ!」
私がこの部屋に居るイテちゃんのことを考えていたら、少し冷たく豚の勇者が急かす。
私はドアの前まで行き、右手で拳を作りノックをする。
トン!トン!トン!
静かになった廊下にノックの音が響く。しかし、部屋の中から返事が全くない。しばらく待っていたのだが、部屋から人が出てくる気配もない。
「誰も出てこないよ?」
私は振り返りシシミと豚の勇者に誰も居ないことを報告する。
「あらら・・・・。もしかして!もしかすると!今日は居ない日なのかもしれません!」
「居ない日ってどういうこと?」
「それが!それがですねぇ!イテちゃんは1ヶ月に1週間しか居ないのですよ!今日は居る日と思ったんですけどねぇ・・・」
どうやらシシミの話によると、その1週間もランダムらしい。2日前は居たらしいのだが、今日居ないということは私達とすれ違いになってしまったようだ。
「いやいや!残念でしたねぇ。また来月にしましょう。今度はイテちゃんを見かけたら、即!ミケミケにお伝えしますよ!」
私はイテちゃんに会えなかったことに(っといっても私の知っているイテちゃんか分からないが)落ち込んでいたら、シシミが私の肩をポンポンと優しく叩いてくれた。
「そうだね。居なかったら仕方ないよね」
私は無理をして笑顔を作り、3人でその場から離れた。
私はまだイテちゃんの事を考えていた。長くは会っていないが、『弓道部のイテちゃん』といえば、本人だと思う。
「僕様は絶対に別人と思うんだけどなぁ」
「確かにそうだね。年齢的に違うもんね」
私と珍しくシシミが無言で歩いていたら、豚の勇者がずっとそんなことをブツブツと言っていたので私はもうどうでもよくなり適当に流した。
「ハァハァ!ネコミミロリはっけーん!」
私とシシミと豚の勇者は少しテンションが下がりトボトボと歩いていたら、そんな言葉が後ろから聞こえる。私達が振り返ってみると、そこには半透明の変な男性が立っていた。服装とかは分からないが、かなりの不審者オーラが出ている。どうやら私を見ているようだ。
「ハァハァ!いいねぇ。萌えー!萌えー!」
はっきり言って私には訳がわからない言葉をずっと話している。
「ねぇ。あの半透明の変な人は誰なの?」
私は左右にいる同じく固まっているシシミと豚の勇者の顔を交互に見て聞いてみた。
「あ、あれは!あれはですね!夢幽霊ですね」
「スリープゴースト?」
シシミは本当になんでも知っているんだなと感心してしまう。実は豚の勇者もシシミも知らない現象かと聞いた直後に思ってしまった。シシミはいったいどこまでの事を知っているのだろうか。
「夢幽霊は別の世界に住んでいる人などが見ている夢なのです。あの人にとってはここは夢の世界なのです。ちなみに!ちなみにですね!私達が見ている夢もたまに他の世界に行ったりしますよ!」
シシミはすごく詳しく説明をしてくれた。なるほど!私を見てハァハァ!と言っている人は今、夢を見ているのか。
「こ、これは夢なのか?そうじゃない!ここは現実だ!これから夢じゃないことを証明して目の前のネコミミちゃんと良いことをするんだ!」
バチン!
私がどうしたらこの状況を逃れられるか考えているときであった。夢幽霊の男性は力一杯に自分の頬をビンタした。すると不思議なことにポン!という効果音が似合うように男性は消えていった。
「えっ?何が起こったの?」
「あらら・・・・。あの男性はお気の毒ですねぇ。どうやら自分の頬を叩いたから!叩いたから夢から覚めたみたいですねぇ」
これから男性がする事を楽しみに待ったいたのか、シシミは少し残念そうにしていた。
「僕様も見たかったぜ!」
いや、豚の勇者はこの屋敷を守る勇者だろ。阻止してよ!
「ここを離れようよ!またあの夢幽霊が出てくるよ!」
私は恐怖のあまり豚の勇者とシシミの腕を掴み、グイグイ引っ張る。
「大丈夫ですよ!ミケミケ。夢にはいろんなのがあるのですよ?予知夢、正夢、逆夢。これは!これは予言みたいな部類ですね。それに自分の世界や人物が出る夢。そして、他の世界に行く夢。私の計算によると、875億分の1の確率で彼は戻ってきます。それほど夢のバリエーションはあるのですよ?」
シシミは私を落ち着かせるために夢について話してくれた。っということは、もう彼には会わなくてすみそうだ。
「僕様も何回か夢幽霊に会ったことがあるぜ!まぁ、この聖剣『カズキ』で叩いたけどな!」
豚の勇者よ!剣は叩くものではなく、斬るものなんだよ。
しばらく3人で歩いていると私の部屋の前に着いた。
「おやおや?今日はもう部屋に戻るのですか?」
「うん。何もすることないし、後の時間は部屋に引きこもるよ。じゃあ、またね」
「おう!じゃあな!」
「また!一緒にお話とかしましょう」
私は豚の勇者とシシミに別れを告げ、部屋に戻る。私はベッドにうつ伏せになり、イテちゃんの事を考えていた。
(本当にイテちゃんだと思うんだけどなぁ・・・)
私の心の中はずっとその事でいっぱいだった。
ー(幕間)ー
今日、1日は後は何もしないで終わった。なにもしないとは嘘になる。本を読んだり、部屋をウロウロしたり、外を眺めたりして過ごしていた。結局、私はクルミちゃんに会うことはしなかった。けど、焦りはしない。明日も明後日もいつでも会えるからだ。
無駄に時間を過ごして、夜になり私は夢を見る。
それはとても暗い場所に私は立っていた。本当に暗く色で例えるなら黒だ。右を見ても、左を見ても前を見ても黒。周りが黒すぎて本当に左右を見ているか分からない。周りが暗いハズなのに、私の体はハッキリと分かる。分かる理由は手を前に出すと自分の両手がハッキリと見えるからだ。
私は黒の世界をただ真っ直ぐに歩いていた。どのくらい歩いただろう。微かに泣き声が聞こえてくる。この泣き声は誰のだろうか?もしかするとあの庭にいる女性のだろうか?私は更に歩いていくと、微かに聞こえていた泣き声はどんどん大きくなってくる。
この声は聞いたことがある。この声は・・・・・・・この女の子の声は・・・・・・クルミちゃん?
私が声の主を理解した瞬間。目の前にクルミちゃんの後ろ姿を見つける。クルミちゃんは立っていて頭を少し下げ、両手を目に当て泣いていた。
私はクルミちゃんに近付く・・・・。
「クルミちゃん?」
私はすごく大きな声を出していた。そんなに大きな声を出した感覚がないから、たぶんすごく声が響く空間なんだろう。
私の
手が・・・・・・クル
ミ・・・・・・・・・・・ちゃん
の・・・・・
・・・・・肩に・・・・・・・・・と
ど・・く・・・
ー(幕間)ー
ふと、私は目が覚めた。とても悲しい夢を見ていた気がする。いや、悲しくなかったかもしれない。だが、目にはなぜか涙が溢れていた。しかし、まだ眠い。涙と一緒に眠い目を擦る。ふと、廊下がうるさい気がする。静かな部屋に数人の慌ただしい足音が聞こえてくる。時計を見ると午前4時くらいを差していた。私は外の様子が気になったが、眠気の方が勝ち再び深い眠りについた。




