27・溜め息猫と羊!ひつじ!執事!
結局、私達とシシミはまた、豚の勇者の部屋番号を聞くのを忘れていた。
今回、それは大きな問題となっていた。
理由は『見回りの後はお互いちゃんと報告すること!』という約束だ。つまり、豚の勇者も私達もお互い部屋番号を知らないのだ。
「はぁ~。困ったなぁ」
私は深い溜め息をついた。今は午前中。豚の勇者が見回りをしているハズだった。つまり、廊下で待ち伏せをしていたら、会ってお互いに部屋の番号を聞くことができたはずだ。
しかし、私がそれに気付いたときは豚の勇者は2階の見回りが終わり、エレベーターに乗ったところだった。私は急いでエレベーターに駆けつけて3階にエレベーターが行ったのを確認して追いかけたが、すでに部屋に入ったのか、豚の勇者はいなかったのだ。
「はぁ~」
と再び私は溜め息をもらす。
「なにやら!なにやら!深刻な事が起こってますねぇ」
いつの間にか私の横にシシミがいた。嵐のようにうるさいシシミも潜入捜査(?)の時は存在を消すほど忍が得意なようだ。
「わぁっ!びっくりした!実は豚の勇者の部屋番号を知りたいのだけど、シシミ、なにか知らない?」
私は驚いたが、すぐに冷静になり隣にいたシシミに聞いた。
「はい!はい!はーい!私は見ました!あの、勇者様が!勇者様がとある部屋に入っていくのを!」
両手を腰にあてて言う。
「では!では!勇者様が入っていった部屋は!ダガダガダガダガダン!310号室なのです!!」
な、なんと!私の部屋の斜め上の部屋が豚の勇者の部屋だったなんて。
「ありがとう、シシミ。そうと分かれば、さっそく乗り込もう!」
そう言って310号室に近付く。
「そこまでです!」
いつの間にか310号室の前に執事の服に白い手袋、右目には片眼鏡をしており、髪型は茶色のミデイアムウルフで羊の角があるイケメンの男性が立っていた。
「えっ?執事!?」
私は正直驚いた。なぜなら、ここにはたくさんのメイドさんはいるが、執事を見たのは初めてだった。っというか、羊の執事とかまるでダジャレでしかない。
「私はこの部屋の主につかえてる右流明 羊と申します。」
羊は礼儀正しくお辞儀をする。
「ど、どうも!私はミケです」
あまりにも丁寧すぎる挨拶に私はとても緊張してしまった。
「やあ!やあ!どうも!どうも!私はシシミなのです!」
相変わらずシシミはマイペースであった。
「そうですか。ミケ様、シシミ様。本日はどのようなご用件でしょうか?」
羊は私達2人を交互に見つめて問う。
「あの~。ここの住人に用事があるのだけど・・・・」
私は恐る恐る羊に訪ねた。
「おや!珍しい。お2人はお嬢様に会いに来られた客人なのですね?」
羊の顔が明るくなり、とても嬉しそうに私達を見る。
「「えっ?お嬢様!?」」
私とシシミは驚いて顔を見合わせる。豚の勇者は、見た目、声、口調からして男性かと思っていた。まさか、女性だったとは・・・。私は人を見た目で判断してしまったことを深く反省したのであった。
「うん。その『お嬢様』に会いに来たの。だって、大事な約束をしたもん!」
私は羊に自信満々に答える。
「そうでしたか!しかし、いつの間に・・・・。約束を・・・。まぁ、いいでしょう。どうぞ!お入りください!」
少し疑問に思った羊であったが、お嬢様に用事がある人を通さない訳にはいかない。羊は一礼をし、310号室のドアを開ける。
私とシシミは豚の女勇者に会いに来たのだ。
ドアを開けた部屋の向こう。そこには、悪趣味な絵画や彫刻があり、中央にはガーデンテーブルがある。テーブルに向き合うように椅子に座っている豚の勇者(男)と知らない女性がお茶を楽しんでいた。
「ミジャお嬢様、ミケ様とシシミ様をお連れしました」
羊はそのミジャお嬢様とやらに深々と頭を下げた。
「その2人は誰じゃ?」
ミジャという女性はキョトンとしていた。安心しろ、私も意味がわからない。




