揺蕩うもの
《来訪者》の役割。それは多岐にわたる。
例えば、人外への対応。『場所』によっては魔物や魔族が出現することもある。
もしくは、技術の発展。文明がない『場所』ではそれが尊ばれる。
この『場所』は、常に変革を求めていた。だから、それぞれの『世界』にあった《来訪者》が幾度となく来た。
はじめは宗教的指導者として。次に皇帝の圧政に対する反逆者として。
名もなき司書として。
海賊の長として。
そして、公爵令嬢と公爵子息として。
最後は様々な役割を持ったものとして。
だが、彼は失念していた。
創造主としての掟を。
同じ『場所』に知り合いを時代を越えて呼んではならないことを。
すでに一度、彼はそれで制裁を受けた。
だが、彼は掟を再び破った。
完敗だった。
掟に。
二度も同じ過ちをするなんて。
もっとも世界を取り込もうとしようとしたこと自体が傲慢だったのだが。
たとえ、どんなにあの『世界』が恋しくても。
そして、少女たちの想いに。
彼女たちはそれぞれの道を自分の意志で歩もうとしている。
これ以上、自分が導いていく資格はない。
今、すべてを飲み込む闇の中にいる。おそらく二度目の罰なのだろう。もうここから出ることもかなわない。
「滑稽だな」
遠く見える光の中にきっと彼女たちはいるのだろう。
だが、二度と日の目を見ることのできない自分には関係ないことだ。
「運命に克つが良い、アンジェリーナ・コレンス侯爵令嬢」
そっと目を閉じた。
ああ、楽しかった。
ありがとう、《来訪者》たちよ。




