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山田大地、逃亡する。
向かってくる音は、どんどん近づくにつれて大きくなっていた。
どうしよう。早く魔法を、いやまず隠れてからのほうがって隠れるって何処に。
慌てながらも近くの木の後ろにしゃがんだ。直ぐに逃亡魔法を思い浮かべた。
頭の中に呪文が浮かんできたとき、音が止んだ。
直ぐに唱えればいいのに、俺は木の陰から覗いてしまった。
それはいた。俺の何倍もありそうな巨体で、黒い毛で覆われた、猪のような魔物を。
俺は唱えた、絶叫するように。
「エスケープ!」
そして俺は意識を手放した。