一話 『毒を喰らわば傘まで』
暗い空間の中で、俺はふと目を覚ました。
「あ…動ける?」
ひとまず足は動く。
試しに少し進んでみたら、土の壁に触れた。
「ここは…?」
いや、考えるな。とりあえず状況確認だ。
俺は棚田涼太、年齢は36歳。さっき、不慮の事故で死んだはずだ。
強い衝撃で視界が暗転したあと、その後の記憶はない。
落ち着こうと思考を集中させると、不意に視界の端に半透明の板が浮かび上がる。
「うおっ、これは…?」
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【毒キノコ Lv.1】
HP:3/3
MP:2/2
力:1 敏捷:1 知能:74
■スキル
・どくのからだ
→ 食べると麻痺を起こす。
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そこにはゲームのステータス画面のような説明が記載されていた。説明とともに珍妙なクリーチャーの画像が添付されている。
大きめの、真っ白なかさを持つキノコだ。
その根本は2本に分裂しており、たまにインターネットで観測されるセクシーな大根のように、脚部を形作っている。
「毒キノコ…」
その言葉が、脳に響く。
ふと、足元を見る。そこには画像と同じ、2本の脚部が見えた。
…つまり、俺はキノコで毒を持ってる。それと、ちょいとばかりセクシーな足も。うふふ。
「最悪だ」
そう思った矢先。
ガサッ。
何かが、近づいてきた。
大きな何かの気配がする。
「え___?」
ドン。
何かが、俺に激突した。
「いっ、てえええぇ!!」
思わず絶叫する。衝撃が背中を襲った。前につんのめり、地面に倒れる。
慌てて起き上がり、後ろを振り返ると、緑色の何かがいる。
ゴブリン…?
「グルル…」
「待て待て待て、落ち着け」
攻撃しよう。蹴る。
足をビシッと伸ばして、ゴブリンに蹴りを入れた。
ダァン。
……うん、全くダメージが入っていない。
ゴブリンの牙が、俺の…何?体?に噛みつく。
「あ、ああ…!?」
痛っ。
えちょ、痛い痛い痛い。
やめろって。
ビリッという音とともに、何かが取れた。
「…っ!?あああああああああああああああああああああああああああああああああ」
HP表示が、3/3 → 1/3 になった。
体に激痛が走る。
ゴブリンが、もう一度襲いかかってくる。
(ああ、俺は数分前にキノコに生まれたばかりで、もう死ぬんだ。)
ゴブリンの牙が迫る。
終わった____と、思った次の瞬間。
「グギッ…!?グギャアアア!」
ゴブリンが叫んだ。
え?
何が起きた?
ワンテンポ遅れて気づく。
ゴブリンが泡を吹いて倒れていた。その体は痙攣している。
本能が、目の前の光景の理由を理解させた。
毒だ。
俺の体を食ったことで溢れた毒が、ゴブリンの体内で回ったのだ。
ビリビリと、ゴブリンの全身が震える。
「ぎ…ぎぎ…」
ゴブリンが、動かなくなった。
死んだ。
「あ……」
俺は、敵を倒した。
[レベルアップ! Lv.1 → Lv.2]
[新しいスキルを習得した:消化液分泌(Lv.1)]
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【毒キノコ Lv.2】
HP:2/4
MP:3/3
力:2 敏捷:1 知能:74
■スキル
・どくのからだ
・消化液分泌
→ 酸性の液体を吹きかける。
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どうやらレベルアップしたみたいだ。
ステータスのいくつかが上昇している。
「と、とりあえず…生き残ったのか。」
体が痛い。
HPが2減っている。
これが0になったら終わりというわけだ。
唐突に訪れた命の危機に震える。
痛みが止まらない。
人間でいえば脇腹に該当する箇所を、丸々齧り取られている。
きのこのくせに、一丁前に痛覚はあるみたいだ。
「うっ...ぐう…」
さっきの物音で他の魔物が来るかもしれない。
俺はフラつきながら、なんとかその場を後にした。
ブックマーク・pt評価本当にありがとうございます!
どうか気楽に読んでくださると幸いです。




