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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第十章 『悪の組織と人の未来』

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回想:1999年7月のとある日 その1

 ヤルダバオトが現れ、人類に対して宣戦布告めいた声明を出してから約二時間。

 声明の後に開いた扉から世界中に現れた機械天使による混乱により、世界は大混乱に陥っていた。

 機械天使の性質は『非戦闘員には威圧を、戦闘員には相応の武力を』というものなので、抵抗さえしなければ日常生活を送る分には問題ない(ただし道路上に平気で居座っていたりする)のだが、そんなもの誰に分かるわけでもなく。

 人々は半狂乱になりながらも、警察や自衛隊、国軍等の指示で避難所へと逃げ延びていた。

 人の居なくなった町を数多の機械天使が我が物顔で徘徊する様は、世界滅亡の危機をどうしようもなく自覚させられる光景であった。


 「……という、外は酷い有様なんですがぁ~。カシワギ博士は逃げなくて良いのですかぁ?」

 どこか間延びした声で問い掛けるのはラミィ・エーミル18号。

 彼女はカシワギ博士の助手として派遣された分身の一体であり、今はソファに寝そべって煎餅をむしゃむしゃと食みながら、何やら作業をしているカシワギ博士ら数名を見守っているのである。

 「ワシらが逃げたら最終手段が立ち消えになってしまう。直接襲われることはないじゃろうし、ギリギリまで作業を続けるつもりじゃよ」


 確かにこの支部の防御はシェルターよりも分厚い。いざとなれば緊急脱出装置もある為、最悪でも逃げるだけは可能だろうが……。

 「まぁ、万が一はわたしが守りますのでぇ、いつでも逃げられるようにはしておいてくださいねぇ」

 機械天使が相手であれば電子の精霊であるラミィは相性がいい。勝てはしなくても足止めくらいはできるだろう。

 一度徹底的に解析こそしたものの、バーバリアンと名付けられたアレは言ってしまえば過去の遺物。現行機である今の機械天使にどれほど通用するかは分からないというのが本音だ。


 そこでふと、ずっと疑問があったことを思い出して、今ならばとその問いを口に出す。

 「そういえばダークエルダーってぇ、ずっと今回の……ヤルダバオト? を警戒していたみたいですけど、何か因縁でもあるんですかぁ?」

 ラミィはココ最近になって精霊化し、傘下に加わった新参者だ。故に組織の由来やら過去に何があったのか、なんてのは簡単に纏められた資料しか目を通していない。

 ノア様に聞けばわかる話ではありそうだが、常に忙しそうで手を煩わせるのもどうかと思っていたのだ。

 しかし今ならば最古参らしいカシワギ博士が、手は忙しそうでも口と心には若干の余裕がありそうに見える。ならば、と思い問い掛けてみたのだ。


 「ああ、そうか。その辺の話は詳しくした事はなかったのう。気分転換にもなるし、昔話をするのも一興か……」

 ずっとキーボードの上で動かしっぱなしだった指を止め、目頭を揉んで目薬を差すカシワギ博士。

 他の皆も集中力が途切れたのか、次々と席を立っては喫煙所に向かったり仮眠室に籠ったり空き部屋で「びっくりするほどユートピア!」と叫び始めたりと様々な休憩を挟んでいる。

 あまりにも普段通り。人間とはやはり面白い生き物だなと、ラミィは笑みを零す。


 そんな他の面子を気に求めず、カシワギ博士は食堂から持ち出してきたパンドラ☆ボックスからプリンを生成すると、渋そうな緑茶と共に卓へと並べ、いただきますと手を合わせた。

 食べながら話してくれるらしい。

 「アレは1999年7月。世間ではノストラダムスの大予言で世界が滅亡するんじゃないかと、世界中が半信半疑ながらも騒いでいた頃じゃった」



 ◇



 ──1991年7月のとある日の事じゃ。

 一生に一度の世紀末や大予言の月というのもあって、世界中が何やら浮ついた雰囲気が漂う中。

 カシワギ(ワシ)は当時、本名の柏木 充琉(かしわぎ みつる)と名乗っておった。

 今では想像もつかんじゃろうけど、これでもなかなかのイケオジでな?

 バブルの頃はそれはもうモテておったんじゃ。


 ……え? 今のこのロリっ子体型から想像もできない?

 モテてたことを自慢に思ってたのに、なんでロリっ子になったのか、じゃと?

 その理由もこれから語ってやるわい。

 聞くも涙、語るも涙の長編スペクタクルをな……。

 いやいや、長編って言った途端に露骨に嫌な顔せんでくれ。

 要点だけ掻い摘んで話したら薄っぺらくなってしまうじゃろうと思って、ならば若かりしワシの武勇伝から……分かった、わーっかった!

 ワシが悪かった!


 あの機械天使達との因縁についてだけ話せばいいんじゃろ?

 まったく、だーれもワシの過去を聞いてくれんから、せっかく話せる機会に巡り会えたと悦んでおったというに……。

 ごほん。ではまず、肝心な部分を話す前に前提知識というか、『こういう裏がありましたよ』くらいの話はしてもええかの?

 先に知っておかねば、いちいち話の腰を折らねばならぬようなものがいくつかあるからの。

 ……手短に?

 はいはい、分かっとるわい。


 ではまず、ワシとダークエルダー首領であるシンイチロウ、そして雷の精霊ヴォルトに胡散臭い占い師ことモルガンに“最強”カスティル=シシオウに、不老の巫女瀧宮 帝にヤミの魔女コッペルナ、そして熱風烈風快男児こと楓原くん。

 ザックリ言うとこの面子は昔、世界防衛隊の一員だったんじゃよ。

 World(ワールド) Defense(ディフェンス) Heroes(ヒーローズ)って聞いたことないかの?

 ……まぁ、ある訳ないわな。

 なにせ世界中のヒーローや実力者達にホワイトハウスが主導として声掛けし、秘密裏に組織された表舞台には決して立たない過剰戦力部隊じゃったからのう。


 ……ああいや、個々に活動していたヒーローの名はそりゃ通っとるじゃろうて。彼らにも守るべきものはあるからの。

 ただ彼らの後ろには、その活動を支援したり取りまとめたり、有事の際には招集を掛けたりする組織が存在していたと、そういう話なんじゃよ。

 一騎当千と名高いヒーロー達を、大国とはいえアメリカが独断で声掛けしたんじゃ、どこの国もいい顔をせん。

 だから世界のバランスが崩れそうとか、そういうホントの有事の際にしか招集を掛けられることはなかった……まぁ、消防団みたいな組織じゃな。


 そしてそんな組織に居たワシらに、数年ぶりの招集が掛かったワケじゃ。

 それが1999年7月。

 ……そう、ヤルダバオトが最初に攻めてきた、あの時じゃ。

 回想といいつつまだ触りだけ。

 最終章まで残した謎の回答編だと思って貰えれば。

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