決戦! さらばダークエルダーよ! その6
“気功”使いの奥義、気炎万拳が炸裂し、公園に土煙が舞う。
今日はなんだか調子が良かったので思っていたよりも威力が上がっていた気もするが……まぁいいだろうと黒雷は笑う。
「これで晴れて四人揃って私と相対するのだ、このくらい序の口と思ってもらわねばな?」
土煙が晴れた先、そこには未だに脱力しているウンディーネと、彼女を庇うように槍を盾にしているサラマンダー。そして、
「……ちょっと容赦無さすぎやしませんか?」
そんな二人を守った、使い捨てのシールド発生装置を構えたノームとシルフィがいた。
雷瞳ミカヅチを倒し、今のタイミングで合流したのだろう。当のミカヅチはジャングルジムの上で倒立腕立てなんてやっているが。
「敵に容赦なぞ求めるんじゃあない。ライバルを名乗る怪人が本気で“勝ち”に来ているのだ、手を抜くことすら私は許さんぞ」
そう言って黒雷は《飛竜鎧装》を身に纏い、ベルトにルミナスエネルギーをチャージする。
相手が四人に増えたのだ。ここからが本番と見ていいだろう。
なので黒雷は、一度は言ってみたかった台詞を吐く。
「──どうしたブレイヴ・エレメンツ! お前達の本気はその程度か!?」
その言葉と共に、彼女達へとビームをお見舞いした。
◇
黒雷のベルトから発射されたルミナスビームが迫る。
「シルフィ、あれはシールドで防げる!?」
「無理です!」
「だよね!」
ノームは咄嗟に地面を叩き、大量の土壁を生成しながら脳ミソをフル回転させて対策を考える。
その土壁も即座に貫通されているが、一秒でも時間を稼げればそれでいい。
そもそも先程黒雷が使っていた技だって高威力だったというのに、別系統で今度は貫通力のある技を持っているのが卑怯ではないかと、ノームは内心で怒りながらも誇らしい気分になる。
好きになった人が強いというのはいい事だ。それが現状では自分達に向けられているという現実から目を背けられさえすれば。
「シールドはもうないの!?」
「使ったら自分達が閉じ込められるタイプならありますよ! 今の兄さんの攻撃を防げるかは未知数ですが!」
避ける選択肢を潰した上で防げるか分からないなら却下だ。
もっとも、あのビームを先輩達が避けきれないと判断したからこそ防御を考えているのだが。
「皆が今使える技で相殺! これしかありません!」
「りょ!」
結局は力押しでしか解決できる道はない。叫びながら会話しているから先輩達にも聞こえているだろう。
やるしかない!
「風の……!」「土の……!」
「炎の……!」「水の……!」
『一閃!!』
四属性の閃光がそれぞれの武器から迸り、ルミナスビームと衝突する。
僅かな拮抗のあと、押し負けたのはルミナスビームの方だった。閃光がビームを分割し、その場で爆ぜる。
シルフィが風を操り即座に爆煙を吹き飛ばすが、地上に何故か黒雷はいない。
「! 上だ!」
サラマンダーの声に視線を上へと向ければ、そこには飛竜の翼を広げ、背中側から緑色の後光が差す黒雷の姿があった。
「……アレが、半神モードってやつ……?」
聞きしに勝る迫力に、ノームは思わず喉を鳴らした。
◇
ブレイヴ・エレメンツが四人揃ったのならばもう出し惜しみは必要ないと、黒雷はルミナスビームを撃ったすぐに空へと上がり半神化を行った。
彼女達は自身らの攻撃でルミナスビームに打ち勝ったが、照射が前提の技を単発で破られたところで怖くはない。
「……ふぅ。練習してたからか少しは早くなったかな」
拳を何度かグーパーしながら、黒雷は悠々と地上に降り立つ。
飛竜の翼を使わない飛行もだいぶ熟れてきたし、半神化を完全制御できる日もそう遠くはないだろう。
今はまだ半神化を解除する以外に光輪を消すことはできていないが、それもいずれマスターしたいところではある。
「……さて、お待たせしたようだねブレイヴ・エレメンツの諸君。ここからが本番だ」
トンファーを太鼓の撥へと持ち替え、緩く脱力する。
迎え打つ準備は万端。後は彼女達が動き出すのを待つのみだ。
「……ついに出したか、噂のアレを」
デートの時に半神化について軽く説明したサラマンダーが呻く。
説明した時は半信半疑みたいだった彼女も、実際に目の当たりにすれば信じる他ないだろう。
「フハハハハ、怖かろう。我が魂は既に人のモノではない、人外の理に身をやつしたのだ。本気で来なければ痛い目を見るどころでは済まさんぞ?」
背中に光輪を背負う人間なんているわけがない。黒雷は既に人の道を踏み外したのだ。
正しく“怪人”。正義の味方が打倒するには丁度いい相手だろう。
「さぁ、かかって来いブレイヴ・エレメンツ! 私を倒せねばここで正義の道が途絶えると思え!!」
理想的な展開に心の内の情動を抑えぬまま、黒雷はテンション爆上がりの状態で叫ぶ。
──ああ、楽しいなぁ!
◇
「「デュアルエレメント・エスカレーション!!」」
満を持して登場した黒雷半神モードを前に、サラマンダーとウンディーネはそれぞれ自身の最高到達点たるアスカフォームとルナフォームへと変身する。
夏頃にこの強化形態を手にしてから一度も黒雷と争った記憶はないものの、戦力としては五分か若干不利ではないかとサラマンダーは考えている。
何せあの半神化に対してサラマンダー達は初見だが、黒雷はハクとしてコチラの強化形態を一度は見ているのだ。対策のひとつはふたつは当然用意しているだろう。
──けれども、そんなのはどうでもいいのだ。
「……ったく、楽しそうに『悪役』をやっちゃってまぁ」
サラマンダーは大槍を振るい、その穂先で黒雷を差す。
「アンタが神だろうが怪人だろうが、そんなのオレ達には関係ねぇ!」
ウンディーネもまた同様に太刀を構え、黒雷を真っ直ぐに見つめる。
「貴方が私達の敵を名乗ろうとも、私にとって貴方は『不器用で心優しい司さん』である事に変わりはありません」
サラマンダー達が何を言いたいのか察してくれたのか、シルフィとノームもまた得物を黒雷へと向け、口を開く。
「ボク達は司さんを打ち倒し、」「またいつもの日常へと戻ってもらいます」
決戦がなんだとか、ダークエルダーの目標がなんだとか。
敵がどうとか、正義がどうとか。
そんなの別に、どうでもいい。
ただ、勝っても負けても姿を消そうとしているであろう大杉 司を。
何もかもを放り投げて、一人だけ楽になろうとしているあの大事な人を。
『ぶん殴って連れ戻す!』
ようやくこの戦いに意義を見い出せた。
後は実力を示すのみ。
サラマンダー「ようやく同じ趣味持ってて仲間として戦える人を逃がす理由はない」
ウンディーネ「この気持ちが本当に恋なのかを知りたい。そうでなくても、きちんと整理がつくまでは傍にいて欲しい」
シルフィ「ここで兄を逃がしたら絶対面倒になる。私に苦労をさせるなバカ兄」
ノーム「ボクの物になってください」
ノア「生きてる内に伴侶を早く見付けて。どうせ死んだら私と一緒に社畜生活だもの、生きてる間くらいはいい夢みないとね?」
……あれぇ? ヒロイン?




