↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で念願の店を開く転生者  作者: うさだデジ子
第一章『異世界転生』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/34

第9話〘初めての製作依頼――新たに求められた武器〙

『異世界で念願の店を開く転生者』を読んでいただき、ありがとうございます。


前回、メタルホーンラビットを一撃で斬り倒したサイジョウ。


自ら製作した短剣の予想外の斬れ味に驚く中、その短剣をきっかけに新たな出来事が動き始めます。


そして、初めての素材採取を終えたサイジョウたちは、ビースヴァへ戻ることに。


今回も最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。

まさか、あれほど硬かったメタルホーンラビットを、弾かれることなく斬り倒してしまうとは――。


あまりの斬れ味に驚いたサイジョウは、自ら製作した短剣をじっと見つめていた。


(普通の鉄銀鉱石を使って作った短剣なんだけどな……。)


そんなことを考えていると、ナルガスがサイジョウの持つ短剣を見つめながら声を掛けてきた。


「サイジョウ、その短剣を少し見せてもらってもいいか?」


「大丈夫ですよ。どうぞ」


サイジョウは短剣をナルガスへ手渡した。


ナルガスは受け取った短剣をじっくりと確認する。


しかし、どこからどう見ても変わったところはなく、ごく普通の短剣にしか見えない。


「見た目は普通の短剣なんだが……。サイジョウ、少し試してみてもいいか?」


「はい。どうぞ」


サイジョウが了承すると、ナルガスは近くにある太い大木へ視線を向けた。


そして短剣を構えると、そのまま大木へ向かって一気に振り抜いた。


――。


何の音もしなかった。


「……ん?」


ナルガスは短剣と大木を交互に見つめる。


ボランダたちも何が起きたのか分からず、その様子を見ていた。


その直後――。


大木の幹がゆっくりと横へずれ始める。


「なっ……!?」


次の瞬間、大木は大きく傾き、そのまま地面へと倒れた。


「…………」


ナルガスだけでなく、ボランダ、レイア、ミューラも言葉を失っている。


そしてサイジョウも、倒れた大木を見つめながら固まっていた。


(やっぱり斬れ味がおかしいって……。)


ナルガスは手にした短剣をもう一度確認すると、真剣な表情でサイジョウへ尋ねる。


「サイジョウ……本当にこの短剣は、普通の鉱石で作ったのか?」


「はい」


サイジョウは頷く。


「鉄銀鉱石を使って製作しました」


「鉄銀鉱石だと!?」


ナルガスが驚きの声を上げた。


ボランダたちも驚いた表情を浮かべている。


鉄銀鉱石は、特別珍しい鉱石ではない。


洞窟などでも普通に採掘することができ、武器や防具の素材として広く使われている鉱石である。


そんな鉄銀鉱石から作られた短剣が、硬い皮膚を持つメタルホーンラビットを斬り、大木までも音一つ立てずに斬ってしまったのである。


ナルガスはしばらく短剣を見つめていたが、やがて何かを決めたようにサイジョウへ顔を向けた。


「サイジョウ……この短剣を俺に売って欲しい」


「えっ? この短剣をですか?」


まさか売って欲しいと言われるとは思っておらず、サイジョウは驚いて聞き返した。


「ああ。900Gでどうだ?」


「900G……」


一般的な短剣は、安い物なら200Gほどで購入することができ、高い物でも800Gほどである。


それを考えれば、900Gは普通の短剣よりも高い。


だが、自分が作った短剣を欲しいと言ってくれたことが、サイジョウには素直に嬉しかった。


「わかりました。ただ、今は素材採取の途中なので、街へ戻ってからでもいいですか?」


「もちろんだ。それで構わない」


ナルガスはそう答えると、短剣を一度サイジョウへ返した。


すると、今まで話を聞いていたボランダがサイジョウへ声を掛ける。


「それならサイジョウ。俺からも頼みがある」


「はい?」


「俺にも鉄銀鉱石を使って、盾を作って欲しい」


「盾ですか?」


「ああ。あの短剣を見せられたら、頼みたくもなる」


ボランダはそう言いながら、自分の大盾へ視線を向ける。


すると今度はレイアが口を開いた。


「サイジョウさん。それなら私からもお願いしていいですか?」


「もちろんです」


「私にも杖を一本作ってほしいです」


「杖ですね。わかりました」


「だったら私もお願い!」


ミューラがすぐに手を上げる。


「私は弓を作ってほしいな」


「弓ですか? わかりました」


まさか三人から立て続けに製作をお願いされるとは思っていなかったサイジョウは、少し戸惑いながら三人を見る。


(短剣を一本作っただけなのに、盾に杖に弓まで作ることになるとは……。)


しかし、自分が製作した物を欲しいと言ってもらえることは嬉しかった。


(店を開いたら、こうやってお客さんから依頼を受けることもあるのかな。)


サイジョウは、これから始まる店での生活を想像しながら小さく笑みを浮かべた。


その後、サイジョウたちは戦闘で倒した魔物の回収を始めることにした。


メタルホーンラビットは一体だけだったため、その場で解体を行う。


硬く鋭い角。


金属のような硬さを持つ皮。


そして肉。


解体された素材を確認したサイジョウは、それぞれをマジックボックスへ収納していった。


一方、大量に倒したホーンラビットは数が多すぎるため、この場ですべてを解体するには時間が掛かりすぎる。


サイジョウは辺りに残された大量のホーンラビットを見渡した。


「これだけの数をここで全部解体するのは大変ですよね。皆さん、マジックボックスに入れるのを手伝ってもらえませんか?」


「ああ、もちろんだ」


ナルガスの返事を合図に、ボランダ、レイア、ミューラも回収を手伝い始める。


サイジョウがマジックボックスを開き、四人が次々とホーンラビットを運んでいく。


しばらくして、大量にいたホーンラビットの回収がようやく終わった。


ナルガスは周囲を確認すると、全員へ声を掛ける。


「よし、これで全部だな。そろそろ街へ戻るぞ」


「はい」


こうして素材採取と魔物の回収を終えたサイジョウたちは、アラドの森を後にしてビースヴァへ戻ることになった。


◇◇◇


ビースヴァへ戻ったサイジョウたちは、そのまま冒険者ギルドへ向かった。


ギルドの中へ入ると、ナルガスは真っ直ぐ受付へ向かう。


「すまない。ギルド長に至急報告したいことがある。面会をお願いできるか?」


「ロックヴァルクギルド長にですか?」


「ああ。アラドの森で少し問題が発生した」


受付嬢はナルガスの表情を見ると、すぐに頷いた。


「わかりました。少々お待ちください」


受付嬢は一度奥へ向かい、しばらくして戻ってきた。


「ギルド長がお会いになるそうです。皆様、こちらへどうぞ」


サイジョウと『楓鳳凰』の四人は受付嬢に案内され、ギルド長室へ向かった。


部屋へ入ると、そこにはロックヴァルクギルド長と秘書が待っていた。


「戻ったか。全員、そこへ座ってくれ」


サイジョウたちは用意された椅子へ腰を下ろす。


ロックヴァルクは受付嬢へ視線を向けた。


「案内ご苦労だった。下がっていいぞ」


「失礼いたします」


受付嬢が部屋から退出し、扉が閉められる。


すると秘書が静かに立ち上がった。


「【遮音結界】」


淡い光が部屋全体を包み込み、すぐに消えていく。


これで部屋の中で話した内容が、外へ漏れることはない。


ロックヴァルクはナルガスへ視線を向けた。


「それで、何があった?」


ナルガスの表情が真剣なものへ変わる。


「アラドの森で問題が発生しました」


「問題?」


「はい。大量のホーンラビットに襲撃されました」


「大量のホーンラビットだと?」


ロックヴァルクの表情が険しくなる。


ナルガスはさらに続ける。


「それだけではありません。その群れの中に、メタルホーンラビットが一体混じっていました」


「なに……メタルホーンラビットまで現れたのか」


ロックヴァルクは腕を組み、しばらく考え込む。


通常ならば、大量のホーンラビットがまとまって冒険者を襲撃すること自体が珍しい。


さらに、その群れにメタルホーンラビットまで現れた。


偶然で片付けるには、気になる出来事だった。


「わかった。この件はこちらでも調べてみよう」


「お願いします」


ナルガスが頷く。


「それと、討伐したホーンラビットはどうした?」


「数が多かったので、サイジョウのマジックボックスにすべて回収してあります」


ロックヴァルクはサイジョウへ視線を向けた。


「サイジョウ。そのホーンラビットだが、冒険者ギルドで買い取らせてもらえないか?」


「はい。大丈夫ですよ」


「助かる。数が多いようだから、あとで職員に確認させよう」


「わかりました」


するとロックヴァルクは、もう一つ気になっていたことを尋ねる。


「それとサイジョウ。メタルホーンラビットは解体したのか?」


「はい。角と皮、それから肉に分けてあります」


「そうか。一度見せてもらってもいいか?」


「もちろんです」


サイジョウはマジックボックスから、解体したメタルホーンラビットの素材を取り出した。


硬く鋭い角。


金属のような光沢を持つ皮。


そして肉。


それらを見た瞬間、ロックヴァルクの表情が変わった。


「これは……」


ロックヴァルクは角と皮をじっくりと確認する。


「状態がかなりいいな……。これほど綺麗な状態でメタルホーンラビットの素材が揃っているのは珍しい」


「そうなんですか?」


「ああ。メタルホーンラビットは身体が非常に硬いうえ、討伐そのものが難しい魔物だからな」


サイジョウは改めて目の前の素材を見る。


ロックヴァルクは素材を確認し終えると、サイジョウへ尋ねた。


「サイジョウ、このメタルホーンラビットの素材はどうするつもりだ?」


「武器や防具の製作に使おうと思っています」


「なるほど。売るつもりはないということだな」


「はい。せっかく手に入れた素材なので、まずは自分で何か作ってみたいです」


その答えを聞いたロックヴァルクは頷いた。


「わかった。ならば好きに使うといい」


そして少し考えたあと、再び口を開く。


「もし今後、メタルホーンラビットの素材を売ることがあれば、商業ギルド長にも伝えておこう」


「ありがとうございます」


サイジョウは頭を下げる。


初めてとなる本格的な素材採取。


そこで発見した希少な素材と、大量のホーンラビット。


さらにメタルホーンラビットとの予想外の戦闘。


そして、自ら製作した短剣に秘められていた異常な斬れ味。


サイジョウにとって、今回の素材採取は予想もしなかった出来事の連続となった。


それでも、新しい素材を手に入れ、自分が製作した武器を欲しいと言ってくれる者まで現れた。


異世界で念願だった自分の店を開くための道は、まだ始まったばかりである。


サイジョウは新たに手に入れた素材で何を製作しようかと考えながら、これから始まる異世界での生活を楽しみにするのであった。

第9話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


今回は、サイジョウが製作した短剣をきっかけに、新たな製作依頼へと繋がる話となりました。


初めての素材採取では予想外の出来事もありましたが、新たな素材や経験を得ることができたサイジョウ。


これからどのような武器や防具を製作していくのか、今後も楽しみにしていただけたら嬉しいです。


現在はメイン連載の執筆を優先しているため、こちらの作品はゆっくりと更新していく予定です。


いつも応援してくださる皆様、本当にありがとうございます。


皆様の応援やブックマーク、評価が執筆の大きな励みになっています。


今後とも『異世界で念願の店を開く転生者』をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。