第3話〘夢への第一歩――異世界で手にした念願の店〙
『異世界で念願の店を開く転生者』を読んでいただき、ありがとうございます。
第3話では、サイジョウが新たな街へ足を踏み入れ、夢への第一歩となる大きな出会いが待っています。
少しずつ形になっていく夢への道のりを、楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、第3話をお楽しみください。
ビースヴァの街へ到着したサイジョウは、目の前にそびえ立つ大きな城壁と正門を見上げた。
正門では二人の騎士が警戒に当たり、街へ出入りする者たちの身分確認を行っていた。
冒険者はギルドカードを提示し、商人や旅人、他の街から訪れた住民も厳しく審査を受けている。
やがて、サイジョウの番がやってきた。
「身分を証明できるものを提示してくれ。それと、この街へ来た目的は何だ?」
「身分を証明できるものはありません。ただ、何かあればこれを見せるように言われました。」
そう言ってサイジョウは、一通の書簡を騎士へ手渡した。
書簡に目を通した騎士は表情を変え、すぐさま騎士団長を呼びに向かった。
その間、サイジョウは別室へ案内され、静かに待つことになった。
五分ほど経つと、一人の壮年の騎士が部屋へ入ってきた。
「待たせたな。私がこの街の騎士団長だ。」
騎士団長はサイジョウの前に座ると、書簡を机の上へ置いた。
「書簡は確認した。君は、あの商業の街スロームの唯一の生存者……ということで間違いないな?」
「はい……。あの時はいきなり魔物の襲撃を受け、街中が大混乱になりました。逃げることしかできませんでした。気が付いた時には、両親の店も、他の店も壊滅し、街は焼け野原になっていました……。」
「そうか、あの街は消滅したからな……。緊急討伐命令を出して向かったが、街はすでに焼け野原だった。」
騎士団長は、魔物は殲滅したものの、街は壊滅状態だったことを詳しく話してくれた。
「それじゃ……俺の両親も……。」
「……ほとんどの住民が命を落とした。生存者は確認されなかった。」
「そうですか……。自分が生き残りだと言っても、信じてもらえそうにないですね。」
「そんなことはない。これで君の身元は証明できた。」
騎士団長は一枚の身分証を差し出した。
「ありがとうございます。」
「それでは、商業ギルドへ案内しよう。一緒に来なさい。」
サイジョウは騎士団長と共に商業ギルドへ向かった。
商業ギルドへ到着すると、騎士団長が受付嬢へ事情を説明し、二人は奥の部屋へ案内された。
「あの……騎士団長。どちらへ案内されているのでしょうか?」
「行けば分かるさ。」
騎士団長に促されるまま歩いていくと、案内された先は商業ギルド長室だった。
(いきなりトップの人と会うのか!?)
サイジョウは心の中で思わず叫んだ。
受付嬢が扉をノックする。
「ギルド長、騎士団長をお連れしました。」
「入りなさい。」
「失礼するよ、ギルド長。」
「騎士団長が私に用件とは珍しいな。……そちらの方は?」
「まずは、これを見てもらいたい。」
騎士団長はサイジョウから預かった書簡をギルド長へ手渡した。
書簡を読んだギルド長は、みるみる表情を変えた。
「まさか……その方が、あの商業都市スロームの唯一の生存者なのか? 本当に間違いないのだな?」
「ああ。サイジョウは嘘をついていない。水晶の反応も純粋な青だった。」
(青? そういえば、質問を受けている時に水晶のようなものへ手を添えていたな。)
騎士団長はサイジョウのこれまでの経緯を、ギルド長へ詳しく説明した。
「まさか、あの商業都市スロームの大商人クラウディルの息子が唯一の生存者とはね。」
(神様! 大商人の息子なんて設定にしていたのか!? 手紙にはそんなこと一言も書いてなかったぞ。……受け入れるしかないか。たぶん神様も、俺なら断ると分かっていたから手紙には書かなかったんだろう。)
「そうです。あの……それで……。」
騎士団長は静かに防音の結界を展開した。
「リラックスしなさい、サイジョウ。この話は私とギルド長、それに秘書にしか聞こえない。安心して話していい。」
「ありがとうございます。」
「それでサイジョウ。書簡には、君へこの街で店を持たせるようにと書かれている。」
すると秘書が四枚の土地と建物の資料を机へ並べた。
「この中から、店を開く土地と建物を選んでください。」
サイジョウは四枚の資料へ目を通した。
一枚目は商業ギルドから近く、建物の状態も良い。
しかし、冒険者ギルドからは少し離れている。
二枚目はその逆で、冒険者ギルドには近いが商業ギルドからは遠い。
三枚目は両ギルドから距離があるものの、建物は一番大きかった。
そして最後の四枚目は、商業ギルドと冒険者ギルドのほぼ中間に位置し、建物に加えて倉庫まで備えられていた。
(どれも魅力的で悩むな……。)
しばらく考えた末、サイジョウは四枚目の資料を手に取った。
「この土地と建物にします。」
「分かりました。それでは手続きを進めます。」
手続きが終わると、ギルド長、秘書、騎士団長に案内され、サイジョウは新たな店となる建物の前へやって来た。
サイジョウは目の前に建つ店を見上げ、小さく笑みを浮かべた。
「ここが……俺の店になるんだ。」
前世では叶えることのできなかった夢。
その夢が今、異世界でようやく現実になろうとしていた。
次回もお楽しみに。
いつも『異世界で念願の店を開く転生者』を読んでくださっている皆様、そして評価や応援をしてくださっている皆様、本当にありがとうございます。(`・ω・´)ゞ
皆様の応援が、毎日の執筆の励みになっています。
これからもサイジョウが夢に向かって歩んでいく物語を、楽しんでいただけたら嬉しいです。
最後に、よろしければブックマーク登録や評価をしていただけると、とても励みになります。
今後ともよろしくお願いいたします。




