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風が吹いている

 放課後、いつものメンバーで図書室に集まり適当にだべりつつも仲良く勉強会をやっていた。

 俺、レオナルド、ルーファス、メアリアン、そしてルナ。

「いや、なんでいるの?」

 思わず俺はルナ嬢に尋ねる。

 俺は宿題の古典文学の論文の出典を調べつつルナ嬢は詩集等をめくりつつ俺たちは顔を見合わせる。

「だって、私たちお友達ですもの」

 ルナは悪びれもせず。時折詩集に目を落としつつ俺に笑いかけてきた。

 あの一件以来、ルナは俺と友達として話しかけてきたりそばに寄ってきたりする。

「別に悪いことはしていないでしょう」

 やっているのは宿題なので、別に悪いことはしていない。

 レオナルドとルーファスは俺たちの会話を聞こえないふりをして数式なんぞを解いていた。

「お前のクラスメイトだろ」

 メアリアンはそっぽを向いて聞こえないふりをする。

 もちろん俺たちは悪いことなんかしていない。宿題は学生の義務だ。でもな、俺たちは一応はぐれ者、はぐれていないお嬢様がかかわりあっていい人間じゃないんだ。

「それにしても、こんなところに集まって勉強会をなさっているなんて、本当に噂と違って真面目なんですね」

「真面目に頑張ってのあの程度の成績しか残せませんがね」

 これでも頑張ったら少し上がったくらいなんだぜ。言ってて空しいが。

「やらないよりいいんじゃないですか?」

 ルナはそう言って笑う。

 でもやっぱりいいのかなと思うのだ。評判に傷がついても知らんぞ俺。

 そんなことを思っていた時もありました。

 いつも重い足取りで実家の門をくぐる。

「おかえりなさい、デイビッド」

 何故か母親は明るく笑って俺を迎えてくれた。

 おかしい、なんだか明るさが数倍になってる。その明るさに不気味さを覚え思わず腰が引ける。

「聞いたわよ、貴方シュナウザーのお嬢さんと親しくしているって」

 おい、やばいぞルナ嬢、この母親の耳にまで入るなんてかなり噂になっている。この際だからきちんと話をしなければ。

「親しくなんかありませんよ」

 俺はそう言って自室に戻る。

 とにかくこの母親の誤解を解かなければ。同格の侯爵令嬢と噂になってそのまま婚約なんてことになったら目も当てられない。

 そんなことをしたら家督が転がり込む可能性が上がるじゃないか。

 それはいやだ。俺は卒業したらこの家を出ていくんだ。

 断固とした思いに駆られ、俺は今日のバイトに思いをはせる。

 家を出ていくために、家督を継ぐ息子として品性を疑われる行動と、その上将来の活動資金がたまるとてもお得な活動だ。

 メイドたちにはすでに俺の不良行為は噂になっている。

 そのことを母親も父親も何も言わないのが不気味すぎる。そろそろお説教とかあってもいいと思うが。

 まあ俺は説教ぐらいで反省はしない。このまま突き進むのみだ。



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