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世界を超える紫  作者: 素人
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神VS最強

 その頃、外ではサーチ役の男が笑いながらマンションを見上げていた。

「バカな奴らだ。たった七人で。まぁ、赤のカードへの生贄が七人も増えたと思えばむしろありがたいくらいか」

 男はそう言いながらサーチを使った。

 ワイト達は三階を越えたようだ。

「よし、俺もそろそろ行くか。三階のカードは、今大したカードを持っていない俺の装備用も兼ねてるのさ」

 男が一歩踏み出そうとした瞬間だった。

「よっ!」

 突如、後ろから女性が呼びかけてくる。

「ああん?」

 男が怪訝そうに振り向き、その姿を目にした瞬間だった。

 男はムンクの叫びのような表情を浮かべる。

「エ! エエエ!! エルメ=レッドホーク!!!」

 世界最強クラスのカード使いの一人、エルメ=レッドホーク。公認ランクB。

 Bランカーなど、普通のカード使いなら一生に一度も遭遇しない方が普通だ。

 しかし、今、本物が目の前にいる。

 以前ワイトが空港の映像で見た服装だ。

「ここだな。例のカードが発動直前ってのは」

 エルメはそう言うとサーチのカードを取り出し発動させた。

 ワイトや男よりも遥かに強く波が広がっていく。

「ふ~ん。カードは十五階か。十五階で六人も待機してるのな。ってあれ? 一番強え奴はどこだ?」

 男は脂汗が止まらなかった。

(たった一回のサーチで中の様子を全部見抜きやがった! やっぱりバケモンだ!)

「まぁいいや。アタシはここで待ってるとするか」

 男は忍び足でゆっくりその場から去ろうとしていた。しかし、

「おいおいちょっと待てよ」

 男はビクリとして振り返った。

「は! ははははい! 何でございましょう!?」

「アンタ、カード使いだよな?」

「いえいえ! 私はカード使いなどではございません!」

「嘘つけよ。サーチと加速と腕力強化のカード持ってるだろ」

(何であの一瞬で俺のカードまで見抜いてるんだよ!)

「わりーな。アンタの名前知らねぇんだけど、アンタつえーのか?」

 エルメが挑発的に睨む。

「いえいえいえいえいえ! 全くもってゴミでございます! 私を相手にするなど貴女様の貴重なお時間が勿体無うございます!」

「ふーん。そうなのか」

 エルメは興味が冷めたような目になる。

 男はほっと胸を撫で下ろした。

「まぁでも暇だし、ちょっと相手してくれよ。カード使いなら潰してもいいし、楽なんだよ」

 男は再びムンクの叫びとなった。

 通常、あるランクの中央値の者がもう一つ上のランクの中央値の者と普通に戦えば勝率は一パーセント程度と言われる。BランカーとEランカーなら勝率がどの程度かなど計算する必要性もない。

 エルメが何やら黒色のカードを取り出した瞬間だった。

 突如、エルメの手が止まる。

 エルメは男の少し後ろにいる者の顔に釘付けになっていた。

「どうした小娘? ワシの顔に何か付いておるか?」

「へぇ……」

 エルメは一筋の汗を流し、神を睨んだ。

 そして、男をまるで居ない者の如く無視し、神の元へゆっくりと歩く。

 神が見えていない男は全くもって訳が分からなかったが、千載一遇のチャンスと言わんばかりに逃げ出した。

 エルメは神の二メートル程前で止まる。

「ワシの姿が見えるとは。小娘よ。お前、かなりやんちゃしておるな」

「まぁ、立場上、どうしても色んなカードに触れる機会があるもんでね」

「お前には神が付いておらんな。という事は……」

「アタシのは付いて回るほどの物じゃないって事ですかね」

「なるほどな」

 神はふっと笑う。

「そんな事より……」

 エルメは挑発的に神を睨んだ。

 神は一切動じること無くその視線を受け止める。

「アタシが知る限り、神様ってのは自分から相手を攻撃できないって聞いてる。それは本当か?」

「さあな。試してみればよかろう?」

 次の瞬間、エルメはニヤリと笑い、後ろに飛び、神との距離を取る。

 そして、

 ――三秒の行動停止!

 エルメは神に向かって、行動停止のカードを発動させた。

 行動停止はよく使われる認識消去の完全上位互換で認識消去よりも遥かに危険なカードだ。よって消耗も非常に大きい。

 認識消去は、相手の認識から自分自身を一定時間消すだけでその他は何も制限されない。しかし、行動停止は認識も勿論、その他全てが止まる。意識も体も。一時的な植物状態と言っても過言ではない。

 しかし、神は全く避ける素振りを見せない。

 次の瞬間、エルメは急加速し、神の背後に回り込む。

 神は全く動かない。

 ――止まってる!

 エルメは神の首筋目掛けて手刀を繰り出した。

 しかし、神は一切振り向くこと無く、それを躱す。

「なっ!」

 エルメは着地し、一旦神との距離を取る。

(無効化のカードを使う素振りも避ける素振りも見せなかった。なんで動ける!)

 神はゆっくりと振り向き、薄く笑う。

 ――だったら!

 エルメは、一つの箱を取り出し、蓋を開けた。

 中からは鮮やかな赤色のカードが出てくる。しかし、カードは禍々しい赤色のオーラのようなものでうっすらと包まれている。

「ほぅ」

 神は笑いながら口元を扇子で隠した。

 エルメは赤のカードを掴む。

 赤色のオーラのようなものがゆらりと揺らめく。

 そして、エルメは再び急加速し、神の背後へ回り込む。

 神はやはり振り向きもしない。

 エルメは渾身の力を込めてカードを発動させた。

 ――一人分の広さで十分だろ! 二メートル四方の結界を展開!

 次の瞬間、神は赤色の結界に包まれる。

 そして、

 ――天界葬送!

 天界葬送。結界内にいる人間を即死させるカードだ。マンション内の物と異なり、人が自由に発動させる事が出来る赤のカード。その分消耗は桁違いだ。普通のカード使いでは触ることすら容易ではない。

 エルメは神から離れる。

 無効化のカードを使っている様子は無い。

 しかし、

「な……に……」

 神は赤の結界の中で何事もなかったかのようにゆっくりと振り向く。

 その様子を見たエルメはすぐに赤の結界を解いた。

 エルメは冷や汗を流しながら口を開く。

「やっぱり神様には黒や赤のカードは効かないって事か。今のカードはどっちも百パーセントの確率で効くはずだ」

 それを聞いた神は、ふっと笑う。

「意外じゃな。小娘よ。お前ほどの使い手が知らんのか」

「なに?」

「今お前が使ったカードはどちらも百パーセント効くカードではない。正確には、限りなく百パーセント・・・・・・・・・・に近い確率で効くカー・・・・・・・・・・だ」

「な……」

「お前達人間にとってこの二つは同義と言ってもいいものだろう。しかし、ワシにとってこの二つは天と地の差だ。いかにワシでも本当に百パーセント効くカードは無効化無しに凌ぐ事は出来ん」

 エルメは冷や汗を流しながら神を睨む。

「よーく分かったぜ。要するに何でもありって事だな」

「そうではないとたった今言ったばかりのつもりだったが。まぁ良い。それで、小娘よ。もう終わりか?」

「いやいや、折角の機会だ。もう少し相手して下さいよ。せめて神様だけが持ってるレアカードとかだけでも見てみたいもんだ!」

 エルメは再び黒のカードを取り出し、神に向かって突進した。

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