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結局はサーシャが折れる形で俺は焚き火の傍に座る事になった。
俺はこの雑多な集団をもう一度観察する。距離が近くなったお陰で判る事もあるからだ……例えば顔色とか。
商人ラスの顔は生気を失っていた。一人残った年輩の使用人が彼に気を使っているのが解るが、破滅したと感じている様だ。
使用人のあらかたが命を落とし、品物は防水布で覆っていたにもかかわらず、先程の騒ぎで水浸しになってしまった。当然か。
今も顔を伏せ、ぶつぶつと呟いている。
同じく使用人──侍女──が一人だけとなった御嬢様、サーシャは顔色を青くしながらも背筋を伸ばし毅然とした態度をとっている。
いや、毅然と振る舞おうとしているが、身近な者達の死に衝撃と不安で押し潰される寸前……といったところだろう。同じ事の様に思えるかもしれないが、まるで違う事だ。
ヤザン、賞金稼ぎの顔色は微妙だ。
俺を都まで護送する事をまだ諦めてはいない。諦め切れていない。
しかし二人の仲間が倒れ、ラスの雇った傭兵達がここまで減り……ヤツにしてみれば思案のしどころだ。
俺は生きていないと賞金にならない。
そして俺は手枷足枷の状態、俺を生かしておくには身を挺して護らないとな?
今ヤツは俺の命を天秤にかけている。天秤の片方はヤザンの命という訳だ。
本当なら俺に懸かった賞金を三人で分けるはずだったのが、今や独り占めなんだからな。多少の無理もしたくなるだろう。
……さて、ヤツの天秤はどちらに傾く?
バースは俺をギリギリまで生かすつもりだ。ラルヴァを知っているのは俺だけだから。
しかし残り三人の傭兵達はそこまで考えていないだろう、自分の身がかわいいはずだ……囚人よりは。
つまりバースとヤザン、そして傭兵三人が俺の扱いで割れる。
さて、解らないのは俺につきまとうこの娘。
不可解だ。
司祭見習……だろうと俺はみたし、自分でもそうだと云う。
その割にそれらしい事はしていない。
ここは廃れたとは云え寺院だ。神像も飾られている。どんな神に仕えていたとしても、ここが自分の仕える神を祀っていないとしても……
……神像に一礼もしないものか?
この娘が仮に素性を偽っているとしても、いや偽っているなら尚更、その程度はするんじゃないのか?
これだけの死人が出ているのに、この娘が弔いの祈りを捧げる姿を俺は見ていなかった。
……何者だ?
「どうしました?」
「……居心地が悪いだけだ」
娘の問いを誤魔化して、俺は次に起こる事を待った。
どう転ぶにせよ、巧く立ち回らないとな。
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