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天井から落ちる雨漏りはだいぶ弱まり、外から聴こえる風の音もおさまった。
嵐の峠は過ぎた。
今は焚き火のぱちぱちとはぜる小さな音が場を満たしている。
四人の内、一人だけいる女の傭兵が焚き火にかけた小鍋から湯をすくい、珈琲を淹れて雇い主のラスやサーシャに渡していく。
「……よぉ、アンタ、何やって捕まったんだ?」
傭兵達の一人、ピートと呼ばれていた奴が俺に訊いてきた。
場の静けさに堪えられなかったのか、それとも眠気醒ましに話がしたかったからなのか……
誇る様な話でもない。
俺が無視していると今度はヤザンに問いかける。
「よぉ……コイツ何やったんだ?」
「うるせぇな、関係無ぇだろ」
「気になるじゃねぇか……そういやコイツの名前も知らねぇぜ」
ピートが俺の顔を横から覗き込む。
単なる興味本意からの質問だと解ったのだろう、ヤザンが口を開いた。
「コイツはな、ディックだ」
「ディック?……聞いた様な名前だな、どこで聞いたんだか」
「お前ら傭兵なら耳にして当然だ。『将軍殺し』のディック、『死神の想い人』だ」
「なんだって!?」
「そうさ、三年前の戦で布陣してたレント将軍と敵のリース将軍の両方を一晩で片付けた暗殺屋だ」
あぁ、そんな事もあったな。
両方の陣営から依頼されて、俺としてはどちらかが不利にならない様に仕事をした、それだけだが。
どちらも司令官がいなくなって戦う前に戦自体が終わった。元々小競り合いだ、終わるのが一日早まっただけの話。
俺にとっては近場の村が焼き討ちされずに済んだ、ラルヴァが湧かずに済んだ程度の事。
戦になれば将軍といえども誰かの手に掛かる事もある。それがたまたま俺だったのに『将軍殺し』ってのは大層な仇名じゃないか?
俺の前に珈琲のカップが突き出される。
「ほら、アンタの分」
ありがたくいただくと女傭兵が俺をまじまじと見詰めた。
「……解らないな」
「何がだ?」
「貴様の腕は私達より上にみえる、少なくともそこの賞金稼ぎ三人掛かりでも逃げるくらい出来ただろう?何故捕まった?」
「おい!酷ぇ言い草じゃねぇか」
「黙っていろヤザン、私はこの男に訊いている」
俺は女傭兵の目を見ながらカップを傾けた。
「美味いな……淹れ方が上手い」
女傭兵の口がへの字に曲がった。
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