ウェイクアップヒーロー
ドロシーは、仲間達の助けにより政宗達を一時的だが、安全な場所へと運ぶことに成功した。
政宗とユーフォニアを地面に置くと、ドロシーは言った。
『バーチュは言っていたわ。六重奏と……』
きっと、雫が堕天の王と化した時に集まっていた者達の事だろう。
・アックス
・ゼブラ
・ユーフォニア
・ルーン(ミハイル)
・バーチュ
そして、レイの事をお姉様と呼んでいた女性【ツバキ】。
アックスは政宗が倒した。ゼブラ、ユーフォニア、ルーン、バーチュは建物の外に居る。
『今なら守りは手薄なハズ。急いで政宗君を起こして向かいましょう』
ドロシーは政宗を必死に起こしてみるが、目を覚ます気配すら見せなかった。
『どうして? 何で起きてくれないの?』
『どいてください』
レイが見かねて刀を抜いた。
『やはり、痛みで無理矢理起こしましょう』
『ちょっと待って!』
ドロシーが止めようとするが、レイは刀を政宗の腕目掛けレイが突き刺そうとした。すると、政宗の身体を黒い炎が包み込んだ。
『っ!? コレはいったい……』
その炎はまるで、刀を突き刺そうとしたレイに対し、威嚇をするかの様に燃えていた。
『今までこんな事なかった……。何が起きてるの? 政宗君……』
その頃、政宗は夢の中を彷徨っていた。
そこで、一人の見知らぬ男と出くわした。男は黒い布に覆われて、顔もよく見えなかった。
『政宗、俺はお前を待っていた』
何者かは、わからない。でも、その声に聞き覚えが有った。
『お前は誰だ!? ここは何処だ!?』
政宗は男に問う。
『ここはお前の夢の中だ。今は名前を教えるつもりはない』
ここが夢の中だと告げると、男は続けて言った。
『お前……弱すぎ』
その言葉にカチンときた政宗。誰だか知らないが、いきなりそんな事を言われたら誰でも頭にくる。
『お前にそんな事言われる筋合いはねー!!』
男は頭をポリポリと掻きながら言った。
『お前に死なれると困るんだよな〜』
よくわからないが、政宗に死んでほしくはない様子。
『まぁ、ヤバくなったら助けてやるよ。ただし、一度だけだ!!』
男はそう言って背を向けた。
『誰だか知らないけど、お前の助けなんて要らねー!! 誰が相手だろうが俺は絶対に負けない!!』
『そうか……。なら、倒してこいよ。お客さんのお出ましだ』
男はそのまま何処かへ去って行ってしまった。すると、辺りが歪み始め、政宗はまるで眠る時の様に意識を失った。
そして、政宗はようやく目を覚ました。目を開けると、そこにはドロシーが心配そうに見つめる姿が有った。
『良かった。いくら起こしても起きないから心配しちゃった』
そう言って涙ぐむドロシー。
『悪いな、ちょっと寝すぎたみたいだ』
夢の中での事を話さずに、笑って誤魔化した。
(結局のところアイツは誰だったんだ……?)色々と謎は残るが、最後に男が言っていた言葉が気に掛かった。【お客さんのお出ましだ】このお客さんとは誰の事なのか……。その答えはすぐに出た。
遠くから誰かが近付いてくる。手にはよく人形劇等で使われる、いわゆるパペットを二つはめていた。
『おっ、ようやく起きたな〜オズ〜』
ソレは、友人だった頃のように話し掛けてくるルーンだった。
『ミハイル!! テメーッ!!』
『ミハイル? 今はルーン、だよっ』
ニコニコとルーンはご機嫌な様子で歩み寄ってきた。
『牙王とゼブラはどうしたの!?』
ルーンに問いただすドロシー。
『ゼブラ? 誰だソレ?』
眠っていた政宗はゼブラを知らなかった。
『新しい仲間よ』
堕天使との戦いの末に仲間になった事は、説明が長くなりそうなので省いて簡潔に説明した。
『そうだ。ゼブラ? はどうした〜!』
よく理解していないが、ノリに任せる政宗。
『二人ならここに居るじゃないか』
何処を見回しても二人の姿は見えなかった。
『コレだよコレ。この可愛らしいお人形さ』
手に持っている人形を牙王とゼブラだと言うルーン。確かに、その人形は二人の姿によく似ていた。
『どうだい? 弱った相手を人形に変える俺の能力【パペット】は。メルヘンチックだろ?』
ルーンは両手を広げ高らかに笑った。どうやら二人はルーンに負けたらしい。
いつの間に気が付いたのか、ユーフォニアがムクっと起き上がった。
『ユーフォニア……ちゃん?』
ドロシーは戸惑いながら名前を呼ぶが、彼女には聞こえてはいないみたいだ。
『元に戻して……。ゼブラを元に戻せぇぇっっ!!』
怒りに身を任せ、ユーフォニアはルーンに向かっていった。
ルーンは牙王の人形を操り、襲い掛かるユーフォニアを殴った。すると、見た目は大したこと無いのに、ユーフォニアは木を薙ぎ倒しながらふっ飛ばされてしまった。
『どうだい? 僕の人形は。見た目はアレだけど、力その物は本人と同じだからねぇ』
どうやら普通の人形とは違い、人形にされた者を手軽に操る様な物らしい。つまり、ルーンを一人相手にするのに、三人同時に相手にするような物だ。
『ねぇ、オズ。俺に勝てたら二人を元に戻してあげるよ。その代わり、俺が勝ったら……ドロシー、君を貰うよ』
『っな!?』
恋人を掛け金として要求してきたルーンに対し、政宗は悩んだ。
『良いわ!! 受けて立ってあげるわよ!!』
ソレはドロシーの声だった。
『何言ってるんだ? そんな事出来るわけ無いだろ?』
『政宗君こそ何言ってるの? どっちにしろ勝たなきゃ駄目な相手でしょ? だったら今更BET数が増えたくらいどうって事無いじゃない?』
たしかにその通りだ。ゼブラ? はよく知らないが、牙王は大切な仲間だ。助けない訳にはいかない。なら、勝たなければならない。そこにドロシーが加わったところでやることは変わらない。だけど不思議だ。ドロシーが加わる事で重みが精神的に大きく変わった。認めたくはないが、コレが友情と愛情の重みの違いなのだろう。
政宗は深呼吸をして落ち着かせると、人差し指でビシッとルーンを指差した。
『この勝負、受けて立つ。かかって来な』




