覚醒(めざめ)
何故か成り行きで、トトと戦う事になってしまった政宗。
トトが飛び掛かると政宗は後へ跳んでなんとか避けた。
トトはとても動きが速く、政宗が着地するよりも先に回り込んでいた。
トトは真上に政宗を蹴り上げ、跳び上がりそのまま掴んで投げ飛ばした。
『貴様の力はこの程度か? 英雄が聞いて呆れる!』
『英雄? どいつもこいつも何の事だよ……。俺は普通の学生だーっ!!』
政宗は殴りかかった。トトは避ける気が無いのか、甘く見られているのか、全く動こうとしなかった。
『上等だコラァーーー!!』
トトの顔面を思い切り殴った。しかし、トトは表情1つ変えずに政宗を睨んでいた。
『うおぉぉぉーーーっ!!』
何度も何度も殴った。相変わらず、トトはビクともしていなかった。
一つため息をつくと政宗の拳を受け止め、再び投げ飛ばした。
『貴様がこんなに弱いとは、とんだ期待外れだった』
政宗には立ち上がる力がもう無かった。身体のいたる所が痛み、意識を保つだけで精一杯だった。
『もう終わりにするぞ』
トトは大きく手を振りかざし、鋭い爪で思い切り斬りかかった。
『政宗くーーーーん!!』
ドロシーの必死に叫ぶ声が聞こえた。
(そうだ、俺には守りたい人がいるんだ……守るべき人が……守るべき約束が……。自分自身を守れないで何を守れる!? 俺は欲しい……守れるだけの力が欲しい!!)
そして斬りかかったトトの腕は何か不思議な力によって受け止められていた。
『これは……!?』
目の前には、バリアの様な物が貼られていた。
『これがグリンダの言っていた力!?』
政宗は痛みに耐え、力を振り絞り立ち上がった。
トトは幾度も殴りかかったが壊す事は出来なかった。
『はい、合格ですわ』
何処からともなくグリンダが現れた。
『やっぱり、アンタの差し金か……』
政宗はその場にへたり込ん。
『あら、気付いてましたの?』
『タイミングが良すぎるし、それにコイツ演技下手だし。それに丁寧すぎる!!』
トトの方を指差した。
『残念、頑張ったのにな』
トトの身体が見る見る縮んで犬耳と尻尾の少年の姿に成った。
『トトもお疲れ様』
『お役に立たみたいで良かったです』
そう言って尻尾を左右に振った。
『とりあえず、傷を治してもらえると助かるんだけど?』
ボロ雑巾の様に政宗の身体は荒れ地の様になっている。
『そうでしたわね』
グリンダが治癒魔法をかけると政宗の傷は消え、一瞬で元気になった。
『一つ聞きたいんだが、何で俺は英雄って呼ばれるだ?』
『私も教えてもらいたいと思ってたの』
ドロシーが話に加わってきた。
一息つくとグリンダは話始めた。
『それでは話しましょう。オズの伝説を……』