表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/97

第73話:次にするべき事

 


 リンが部屋から出ていき、私はフリューゲルさんに一先ず帰って貰う事にした。


「先程はリンがすみません。彼も本心から言った事ではないので、どうか気にしないで下さい」


 私がそう言うと、フリューゲルさんは驚きながらも逆に謝ってきた。


「え?あ、いや、さっきのは僕が悪い。あの時、ミレイさんが助けてくれていなければ、僕もイレイザも死んでいた。それなのにあんな風に言われたら誰だって怒るよ。ましては、助けてくれた本人は一番の重症なんだからね」


「どうか気になさらないで下さい。あの台詞はあの男の単なる八つ当たりですから」


 ミレイを助けられる所にリンはいた。

 だが、リンは協定に従って自分の領地外での戦闘を避けてただ見ているだけだった。

 目の前で幼子が瀕死になったとしても自分の領地から出る事はなかった。

 だが、その幼子の正体を知り、恐らく自分自身を呪った事だろう。

 そして、その思いは行き先を失い、自分勝手な台詞を言うフリューゲルさんに向けられた。

 気持ちが解らないでもない。

 だが、フリューゲルさん達はミレイと共に戦い、私は早々に戦線離脱、そしてリンは戦わなかった。

 だから、私達はフリューゲルさんに何かを言える立場ではない。


「あ、あの男って……ぶ、不躾な事を聞くけど、ユウキ様は確か龍神国に行った事はないハズ。そして、君達は龍神国から出た事はない。ユウキ様がミレイさんを妹分と呼び、君はまるで旧知の仲のような話し方をしている。いったい何処で知り合ったんだい?」


 ミレイが空から降ってきた神子だとは言ったが、転生者とは伝えていない。

 伝えるべきだろうか?

 一瞬そう悩んだが、伝えるのは止めておいた。

 ミレイの知らないところで正体を全て明かすわけにもいかないし、正直私はまだ彼を信頼していない。


「私に関して言えば、初対面ですよ。ですが、もし私が敬語で接していたら彼は非常に気持ち悪がる様な気がします。そして、何故か私も彼に敬語を使う気にどうしてもなりません。もしかしたら、彼の何かしらのスキルが働いているのかもしれませんが、判断材料が乏しい為推測の域を越えません。

 ミレイに関しては本人に聞いてみないとなんとも言えません。私が彼女と知り合ったのは数ヶ月前なのであるとすれば、それ以前に知り合いだったのかもしれません」


 正直穴だらけの返答だ。

 何故なら、リンはミレイが神子である事を知らなかったし、私は『初めから』と答えていたからだ。私が出会った頃からと言えば少しは違ったかもしれないが、それを悔やんでも後の祭りだ。

 だが、フリューゲルさんは私が全てに答える気はない察したのか、それ以上突っ込んでくる事はなかった。

 良かった。ならば、もう話す事はない。

 私は、不完全燃焼気味の表情をしているフリューゲルさんと別れ、リンの様子を見に行った。

 彼はエーデルさんの部屋の前で壁に身を凭れ掛けさせていた。


「エーデルさんの部屋には入らないのか?」


 そう声を掛けると、彼は首を横に振った。


「寝ている女性の部屋に勝手に入るのは失礼だろう?」


 夫婦の間だというのに不思議な事を言う。

 だが、紳士的で好ましい。


「すまんな。フォローしてくれたのだろう?」


 唐突にそう言われ、私は思わず笑った。


「八つ当たりという自覚はあったようだな」


 すると、顔を歪めて恨めしそうに私を睨んだ。

 だが、私はそれを無視して続けて言った。


「これから私の部屋に来ないか?」


「お前の部屋に?」


「ああ。ミレイの事について、私が出会ってからの話をしよう。お前も気になっているだろうし、幼馴染みのお前には知る権利があるだろう?」


 そう言うと、急にエーデルさんの部屋が開き、メイド服の姿をしたハーフエルフの女性が姿を現した。


「お話し中失礼します。エーデル様がミレイ様の話を一緒に聞かせて欲しいとの仰せです。どうぞお入り下さい」


 どうやら起きてはいたが、まだ魔力が回復していない為動けないらしい。

 エーデルさんはミレイの為に動いてくれた恩人だ。ならば、彼女にも聞く権利はあるだろう。

 私は頷いて、エーデルさんの部屋に入らせて貰う事にした。



 ☆


 部屋に入った私達は、ベッドで枕をクッションにして座っているエーデルさんに頭を下げた。


「先程はミレイを助けて頂いてありがとうございます」


「わちきは、ただ補助をしただけでありんす。こなたのような失礼な姿で申し訳ないのでありんすが、早速ミレイちゃんのこなたの世界での話を聞かせてくんなまし」


 リンも早く聞きたいといった風に私の言葉を待っている。

 そして、メイドは人数分のお茶を入れると、礼を一度して部屋から出て行った。


「では、話は長くなりますが、話させて頂きます」


 私は全て話をした。

 ミレイが空から降ってきた事。そして、青龍の集落で牢屋に入れられ、そこで牢屋を魔法で快適空間を作り出した事。

 青龍様がその力を見込んで龍神国を救って欲しいと頼んだ事。

 それを実行するべく、ミレイが赤龍の集落を開拓し、その協力を仰ぐ為にこの国に来た事を伝えると、リンは機嫌が悪くなっていった。


「つまり、何だ?結局お前等もミレイを利用したのか?」


「否定はしない。ミレイは私達を助ける為に何度も魔力切れを起こした。最初は彼女を怖れていた者達も献身的な彼女の姿に心を打たれて、今では率先して動いている」


「そんな事はどうでもいい。ミレイを良いように利用したその行為が俺は許せん」


 エーデルさんの前だからだろうか。リンは怒鳴り出す事はしなかったが、その瞳は今にも殴りかかってきそうな気迫が込められている。

 だが、そんなリンに相対してエーデルさんはにこやかだ。


「ミレイちゃんは皆さんに愛されていたんでありんすぇ。良かった」

「違う。そう見せかけてただ利用しているだけだ」


 リンがそう否定すると、エーデルさんは首を横に振った。


「ミレイちゃんの身につけていんす物をキチンとご覧になりんしたかぇ?

 龍人族は頑丈に出来ていんすが、ミレイちゃんは人間でありんす。でありんすから、身を守る物は頑丈でなければなりんせん。でありんすが、それでもあの武器や防具はあまりありんす。アダマンタイトの防具の鎖は卓越した職人が全身全霊で行わなければ作成は不可能でありんす。そこには利用価値のある存在以上の思いが感じ取れんす。武器にしてもそうでありんす。アーティファクトを利用価値があるからといわすだけで授ける者などおりんせん。きっとそのお方は、自分の代わりにその武器がミレイちゃんを助けてくれる事を祈っていたに違いありんせん。

 いかがでありんすか?カッツェ様。あたしの考えは間違っていんすか?」


 何という人だろう。淫魔と聞くと、己の欲で動く自分勝手な存在のように感じるが、この人は相手の思いを知ろうと考える。

 こんな女性なら、リンが惚れるのも当然だろう。


「はい。その通りです。我が父はミレイを目に入れても痛くない位の可愛がりようで離れようとはしないですし、この防具の制作者も当初は掠り傷一つ追わせたくないという思いで全身を覆う鎧を作ろうとして、ミレイに却下され、泣く泣く現在の防具を制作しました。

 円月輪を与えたのは元龍神の神子で龍神国の長老なのですが、ミレイの魔力の高さを哀れんで眷属にして欲しいと頼んでいました」


「何故、そこで眷属なんだ?」


 リンが訝しげにそう訪ねると、エーデルさんは成程と頷いた。


「寿命でありんすね?」


「はい。彼は、ミレイに罪を擦り付けようとした部族の長の一人を殺害し、龍神の神子という資格を失い、本来の龍人族と同じ寿命となりました。ですが、それまで4千年もの間生き続けた彼は寿命が長い事により起こる辛さを味わってきました。

 ミレイの魔力の高さを知った彼は、彼女に自分と同じ思いを味わせたくなくて眷属になる事を願い出たのです。そうすれば、彼女は一人ぼっちになる事はない。龍神国を彼女の家としていつでも帰って来る事が出来る。そして、その時にいつまでも彼女を迎えて支える存在になりたいと言ってました。

 私も同じように眷属を願い出たのですが、大切な人を失う苦しみを味わせたくないと言って、保留となってます」


 その言葉をどう捉えたのか、二人は何かを考えるように黙り込んでしまった。


「……では、お前らは美麗を利用した事は認めるが、それ以上に大切な存在だと認識している、という事でいいんだな?」


「ああ、少なくても私はミレイを使い捨ての駒のような存在だとは思っていない。そして、彼女が望めば、いつまでも傍にいる覚悟は出来ている」


「……お前はそうだろうよ」


 リンは呟くようにそう言うと、話は終わりとばかりに手を打った。


「俺達への依頼ってヤツは、美麗が目覚めたら話す事にしよう。

 取り敢えずお前はゆっくり休んでろ」


「いや、私はイレイザさんの治療が落ち着き次第ノザリンに戻る。予定より長引きそうだし、龍神国の皆に報告をしておかなければならない」


「いいのか?美麗をおいてけぼりにして」


 意地悪そうにそう聞いてくるリンを睨み付けながら答えた。


「ミレイに意識があればそう頼んでくる筈だからな」


 すると、こんどはリンが面白くなさそうな表情となり、エーデルさんがリンを慰め始めた。

 いったい何なんだ?私は何か変な事を言ったのだろうか?

 よく判らないが、この城にいる限りはミレイは安全である事には間違いない。

 だから、気にしない事にした。





遅くなりました。

また文字数が多めに……遂に当初の倍になってしまいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ