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第53話:食後の運動?

 


 あたしのヤモリ料理を堪能したシュヴァイゲンの面々は、あたしを仲間として漸く歓迎してくれたようで、表情が最初の時に比べると柔らかくなっていた。


「まさか野宿で美味い料理に出会えるとは思っても見なかったよ」


「ああ、本当に素晴らしかった」


「なぁなぁ、今のうちにヤモリ沢山捕まえておこうぜ。どうせならまるごと喰いたいし!」


「いくら魔物が少ないからといっても安全ではないのだから、単独行動は……」


 フリューゲルさんが苦言を呈する前に、イレイザさんとナーデルさんが夜の闇の中へと飛び出して行き、行き場のなくなった手をフリューゲルさんは溜息と共に下ろした。


「まぁ、この辺は精々C級程度の魔物しかいないから大丈夫か……」


 仕方のない人達だといった表情でそう呟くフリューゲルさんに、問題ないとタクトさんが頷いた。


「に、してもお前達は言わないんだな?」


 唐突にタクトさんにそう聞かれ、なんの事か判らずに首を傾げているとタクトさんは苦笑しながら続けた。


「ヤモリを食べた俺に共食いとさ」


 あぁ、なんだそんな事か。


「蜥蜴みたいな外見だけど蜥蜴じゃないですよね?

 この世の中には外見が似ているだけでまるで違う生物もいます。例えばイモリなんて蜥蜴っぽいですけど蛙の仲間ですし、それに、生きる為に同胞を食べなきゃならない時もありますから……」


 周囲に見捨てられようとしていた赤龍の民を思い出してあたしは顔を歪めた。

 食物がないから起こった悲劇は昔の出来事ではなく、つい最近の出来事だ。

 二度とあんな悲劇が起こらないようあたしは何がなんでも街興しを成功させなきゃいけない。


「すまん。どうやら嫌な事を思い出させたようだ」


 あたしの表情に不味い事を言ったと判断したのか、謝ってくるタクトさんに「大丈夫」と告げて笑み浮かべようとしたけれど、それは出来なくなった。

 何故なら強烈な敵意をイレイザさん達が消えた方から感じたからだ。


「カッツェ兄さん。千里眼を使える?」


 あたしがそう訪ねると、


「もう既に使っている」


 と、頼もしい言葉が返ってきた。

 そして、あたし達の行動に訝しく思ってフリューゲルさんが口を開こうとしたけれど、タクトさんの言葉に顔を強張らせた。


「敵襲だ。3体だ」


「大きいな。こっちに向かっている。どうやらイレイザさんとナーデルさんを追っているようだ」


「カッツェ兄さん。魔物はなんだか見える?」


 あたしの言葉にタクトさんとフリューゲルさんが驚いていたけれど、説明している場合じゃない。

 カッツェ兄さんも彼等の反応を無視してあたしの質問に答えた。


「ワームだ。2体は芋虫型だが、1体は胴体に羽が生え始めている」


「羽根付きワームだって!?馬鹿な!A級の魔物じゃないか!」


 思ってもみなかった強敵の存在に驚愕しながらも、フリューゲルさんとタクトさんは戦闘態勢になった。


「フリューゲルさん。ワームについて教えて下さい」


「奴等は凶暴で攻撃に法則はない。だからどのタイミングで何が来るか予想は出来ないけれど、猛毒の霧や液体、炎を吐いて攻撃する。もしくは鋭い牙で噛みついてくる。羽根付きに関しては羽が成長しきっていたら空を飛べるが、生え始めなら羽で風を起こすか切り裂いてくる」


 流石は長年冒険者をしていただけはある。フリューゲルさんは淀む事なくワームの情報を教えてくれた。


「ならばあたし達の方が相性がいいと思うんで、羽根付きはあたしとカッツェ兄さんがやります。フリューゲルさんは補助魔法をあたしに掛けて下さい。毒の耐性をあたしもカッツェ兄さんも持っているので火属性の耐性でお願いします。タクトさんは羽なしをお願いします。イレイザさんとナーデルさんが合流し次第、彼女等も羽なしの応戦をするよう伝えて下さい」


「ああ、わかった」


 淀みなく指示を出すあたしに戸惑いながらフリューゲルさんは頷いたのを視線で捉えると、あたしはワームが迫ってくる方にいつでも攻撃出来るように構えた。


「戦闘開始はミレイが円月輪を投げるのが合図だ。ミレイは投擲後私に続け。今のレベルで最大限に使える魔法を組み合わせて攻撃しろ」


 今使える魔法?相手の属性を考えると虫なんだからきっと寒さには弱いよね?

 なら、『アイス』に他の魔法を組み合わせればいいって事か。

 だけど、今使えて『アイス』と合わせられる属性を考えると『ウォーターボール』と『ウインドカッター』と『アースランス』しかないよ。


「ミレイ。聞いているのか?」


「ちゃんと聞いてるよ。構成を考えていただけだよ。あたしはこれが初陣なんだから事前に考える時間くらい欲しいよ」


 あたしが返事しなかったからカッツェ兄さんは焦れたようにそう聞いてきて、咄嗟にそう答えた。

 すると、


「馬鹿か、お前は。意識を分割するくらいやってのけろ」


なんて言ってきた。


「無茶振りしないでよ!」


 簡単に出来れば苦労しないっつうの!


「……来るぞ!」


 タクトさんの緊迫した声音に視線を気配のする方に向けると土煙が迫って来ていた。

 そして、土煙の前をナーデルさんを背負ったイレイザさんが走ってくる。

 背負われたナーデルさんは無茶な体勢だというのに弓をワームに向けて居続けていた。

 円月輪の射程距離までまだ遠い。

 投げるタイミングはイレイザさん達が到着するのと同時がいいだろう。

 後方でフリューゲルさんが詠唱を始めた。

 相変わらず詠唱の言葉は聞き取れない。


「『ブースト』『マジックシェル・ファイヤー』『プロテクト』『ファスト』」


 聞き取れる魔法名は複数。それが聞こえる度にあたしの身体が光る。力が漲り、身体が軽くなっていく。

 そして、イレイザさんがあたし達の所に雪崩れ込んで来るのと同時にあたしは円月輪を投げた。

 それを合図にあたしの初陣は始まった。



イモリはお腹が赤いのが特徴の両生類です。

間違えてイモリは食べないようにしてください。

毒がありますよ((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

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