第49話:ギルド長からの依頼
「お待ちしておりました!ブラウドラッヘさんにサトーさん」
ギルド長はあたし達を見つけると、駆け寄ってきた。
「実はAランクの緊急の依頼がありましてお二人を捜しておりました」
Aランクって……あたし達はBランクの筈なのに何でまたそんな依頼が来るんだろう。
取り敢えず話を聞こうとしたけれど、立ち話というのもなんだしあたしはギルド長を部屋へと案内した。
無駄に広い部屋には応接室っぽいリビングもある事だし、聞き耳を立てる者を気にしなくてすむもんね。
ギルド長は初めは遠慮していたけれど、時間が惜しいと思ったのか、最後は大人しく従ってくれた。
そして、部屋に到着するなりギルド長が口を開いた。
「魔族の地との境界に大和国という国が存在しているのはご存じですか?」
知るも知らないもあたし達はそこに行こうとしている。
「元勇者が治めている魔族の国ですよね?」
「はい。その通りです。実は、最近大和国へ向かう馬車が襲われているのです。今までは盗賊討伐という依頼としてCランクの掲示板にありました。
ですが、つい先程その依頼を請け負ったCランクの3パーティが全滅したとの連絡が入ったのです。しかも、そのうちの1グループはもうじきBランクに上がろうとしていた実力者でした。
遠見の情報では魔法をしかも神聖魔法を使っていたとの事。
神聖魔法での攻撃は本来人間には利きにくい魔法として知られております。
それなのにそれを受けて全滅したという事は相手は何処かの教会の司祭以上と考えられます。
よって、Aランクに上げさせていただいたのですが、Aランクの冒険者はノザリンにはおらず、王都のイーストンに問い合わせたのですが、昨日まで残っていたパーティはダンジョン攻略に出掛けてしまい、あと一ヶ月は戻らないとの事。他のAランクの冒険者も依頼遂行中にて呼び寄せられません。Sランクは王命で他国へ行っているためいつ帰国するか判りません」
「Aランクの誰かが戻るまで待つ事は出来ないのですか?」
Bランクとしてあたし達は登録しているので、本来Aランクの仕事をする事はない。それなのにあたし達にそれが回ってくるのはおかしい。
カッツェさんがそれを指摘すると、ギルド長はその通りと頷いた。
「本来なら決してそのような無茶な事を致しません。ですが、今回は場所が悪いのです。魔族と人間が共存出来る世界を作ろうとしている大和国に向かう馬車が悉くやられている。つまり、大和国相手に商売を行う者を賊達は認めていないという事になります。
もし、この噂が広まれば下手をすれば人間と魔族間で戦が始まる恐れがあります。
それを一刻も早く回避して、噂が広回らないようにしなくてはなりません。
よって、緊急とさせて頂きました。
お二人はBランクとはいえ、高い魔力と魔法を身に付けていらっしゃる。実力で言えばAランクに匹敵します。
まだ実践経験のないお二人にあまりにも無茶なお願いだとは思いますが、この依頼をなんとか受けては貰えませんでしょうか?」
さて、どうしたものだろう。
カッツェさんは渋い表情を隠さずにギルド長を眺めている。
無理もない。
経験のないパーティがやっていい仕事ではないのだから。
だけど、このままにしていいものでもないと思う。
「カッツェさん、この依頼受けよう」
ギルド長の表情に笑顔が浮かぶより前にカッツェさんが反対した。
「駄目だ。お前を危険に晒すわけにはいかない」
「だけど、大和国に向かう馬車を狙っているならあたし達だって狙われるわけでしょ?ならば、依頼を受けなくても同じ展開になると思うし」
「冒険初心者のやる依頼ではないと私は言っている」
「だけど、犠牲が出る前に何とかしないといけないし、通り道なんだしやろうよ。アッシェさん、やります。その依頼あたし達がやります!」
堂々巡りになりそうだからとあたしがそう言うと、カッツェさんは派手に舌打ちした。
そして、ギルド長はカッツェさんを無視してあたしの手を嬉しそうに取った。
「よろしくお願いします!賊を捕らえたらロープで縛り魔法を唱えられないよう猿轡をした状態で、この煙幕を点てて頂ければ、私達が後の事をやりますのでそこで任務終了となります」
「猿轡をしても無詠唱を使われる恐れがあると思うんですが……」
あたしがそう言うと、ギルド長は目を真ん丸にしてから笑いだした。
「無詠唱なんてそれこそ賢者様でもない限り不可能ですよ」
え?そうなの?あたし、普通に出来るけど……?
そう言えば、初めてカッツェさんに魔法を見せた時に無詠唱で使えた事にかなり驚いていたっけ。
ならば、無詠唱は殆どの人が使えないというわけか。
「そうなんですね。なら指示通りにやらせて頂きます。
ですが、私達も先を急ぎますので、依頼達成の報告はその用事が終わってからになりますが構いませんか?」
「遠見が確認した時点で依頼完了となりますので構いません。
いやぁ、ダメ元だったのですが引き受けて頂いてありがとうございました」
ギルド長はそう言わなくてもいい事を口にしてギルドへ帰っていった。
ああ、どうしよう。振り替えるのが怖い。
「あ、あの?カ、カッツェさん?そ、その、勝手に引き受けてしまって、あの、……ごめんなさい」
漸くその言葉だけ伝えると、呆れたような溜息が背後に響き居たたまれなくなって振り替えると優しい視線とぶつかった。
「カッツェさん?」
「あなたのお人好しは既に理解している。
さあ、明日の出発に向けて話し合うとしようか」
「え?いいの?」
「話さなきゃ対応も出来ないだろう?」
いい人だ。いい人がここにいるよ!
あたしの事を『お人好しと』言うくせに、カッツェさんだってこうしてあたしに付き合ってくれるんだもん。カッツェさんだってお人好しだよ。
あたしは笑顔で頷いて、明日へ向けて作戦立案を始めた。




