第33話:模型を使ってみよう
☆
それから毎日のようにぶっ倒れる直前までピース作りに格闘し続け、一週間が過ぎようとした時に漸く完成した。パーツがね。
「やっと、やっと出来たよ!」
あたしがそう歓喜しているその横で、カッツェさんは意味が解らないと言ったように首を傾げた。
「……私には小さい塵が散乱しているようにしか見えないのだが?」
ゴミ!?あたしの努力の結晶をゴミですってぇ!?
散乱しているのは建物毎にピースを仕分けしているからなのに、あんまりだ。
これを作るのにどんだけ悪戦苦闘したのかまるで解ってない。
「これは部品なの。これが出来なきゃ何も始まらない大切なものなんだからね」
「はあ。そうですか?」
うわぁ、この人信用してないよ。
そりゃあ、きっとこの世界には模型なんてないかもしれないからカッツェさんが訝しく思うのも仕方ない。だけど、そこを敢えて誉めて欲しかった。
そのくらい大変な作業だったのに……
予想外の強敵を相手に格闘していたあたしの涙ぐましい努力が理解出来ないなんて酷いじゃないか!
「そんな事言っていいのかな?出来上がったらビックリしちゃうんだからね!」
「はぁ、そうですか?」
何!?この興味ありません的な相槌は!!
あたしは開拓の進捗情報をまとめているカッツェさんに背を向けると、愛情込めたパーツ達を手に取り、それを組み立て始めた。
そして、数時間が経過した所でカッツェさんが席を立ち、あたしの様子を覗き込ん出来た。
「器用なものですね」
フフフ、模型作りには自信あるのよ。プラモデルばっかり作っていたからね!
それに、『天の声』さんから先程『建築スキル』ゲット出来たとお告げがあってポイントMAXで注ぎ込んだし、抜かりはない!
どうだ、カッツェ君。あまりの素晴らしさに声も出ないだろう!
「まずは大部分の所から先にやってみたんだ」
「この、建物は妙に長いのですね」
「それは長屋といって、建物の中は一軒一軒壁で区切られていて、沢山の家族が住めるようになっているの。平屋が一般的なんだけど二階建てにして、一階が店舗で二階が住居にする予定。そうしたら、此処で店を出す人が住む所に困らないでしょ?」
「成程、それはいいですね」
カッツェさんが感心してそう頷いてくれたのが嬉しくて、あたしは今手にしている温泉施設模型の説明やお金持ちの貴族や一般人の宿をどんな風にしようとしているのか一通り説明した。
その度にカッツェさんが興味深く頷いてくれる。
模型を使えば、どんな風に生活していくのか説明がしやすくなる。
あたしのやった事は間違っていない。
それが嬉しくて急いで完成させようと俄然やる気になったあたしに、カッツェさんが更に質問してきた。
「素朴な疑問なのだが……」
「え?何?なんでも答えるよ」
「模型の必要さというのは理解出来たのですが、根本的な所が理解出来ない」
根本的なところ?何か変な所あったかな?
カッツェさんが解らないならグリックさんにだって上手く伝わらないかもしれない。
あたしは、修正点があればすぐ直そうとカッツェさんの次の言葉を待った。
だけどその問いは、あたしが全く考えていないものだった。
「そもそも、何故魔力切れで倒れるほどの大量な部品を作っているのだろうか?
同じ魔法を使うなら初めからこの建物の形を作り出せば良かったのではと思うのですが……」
「……建物?」
「はい。建物自体をです。部品のような小さなものを土魔法で作るには魔力の加減を緻密に計算しないと出来ないため、上級魔法使いでも骨が折れる作業になる。ですが、この模型の大きさなら難易度は下がるので作りやすいと思うのですが……」
「……」
「……神子?」
しまった!その手があった!
思うように部品が作れなくてムキになっていたけれど、建物ごと一つ一つ作れば良かったんじゃん。いや、それ以上に街そのものの構図は頭の中に完全に出来ているんだから、それごとこの場に再現すれば一日で十分出来る内容だ!
なんで言われるまで思い付かないのよ……あたしのバカ!!
あたしはそっとカッツェさんを見上げた。
すると、露骨に溜息を吐いていた。
呆れてる!呆れていらっしゃる!
忠誠の値(そんなものはないが)が離反レベルまで落ちしていらっしゃる!
「……セレナ様に書類を見せに行ってきます」
肺から空気がすべて抜けるくらいの溜息を更に漏らしたカッツェさんは、なかったもの扱いをしてそのまま去っていった。
待って!カッツェさん!あたしを見捨てないで!!
魔力値上がったし、スキルだって新しく覚えて使える子になってるからぁ!!!!




