第16話:問題を解決するために必要な事
「う、うん」
「神子、起きましたか?」
一体何日寝ていたのだろう?
目を開けると、そこには心配そうにあたしを見ているカッツェさんがいた。
「……これが、魔力切れなんだね」
身体の芯を支えている何かがなくなり、強制終了したかのように意識をなくす。
自分の魔力を考えて使わないと、戦場とかでこんな風になったら間違いなく死んじゃう。
気を付けないと……
あたしは、ステータスを開いて、魔力の回復度をみる事にした。
「回復してる」
ゲージは嘘のように満タンになっていた。
「ねぇ。あたし、一体何日眠っていたの?」
「3日程です。もう、大丈夫ですか?」
「うん。ここまで運んでくれたんだね。ありがとう」
「いえ……あの、神子」
歯切れが悪そうにあたしを呼んだカッツェさんはこの後、とんでもない事を言い始めた。
「やはり、この地は見捨てた方がいいと思います」
え?なんでそんな事を急に言い出すの?何度倒れてもやり遂げるようにと言っていたのは、カッツェさんなのに……
「彼ら、赤龍の民は既に人ではない。彼らを生かすのは諦めるべきです」
あたしはベッドから降りて、カッツェさんを問いただそうと、彼の腕を掴んだ。
「っつ!!」
顔を歪めて小さく呻いた彼を見て咄嗟に腕から手を離すと、彼は腕を守るように抱えた。
「……カッツェさん。服を脱いで」
「え!?ふ、服を、ですか?」
「うん。カッツェさんの身体が見たいの」
「わ、私の!?」
何故、顔を紅潮させて慌てているのか意味がまるでわからないけど、あたしは続けて頼んだ。
「ここにはあたししかいないし、問題ないでしょ?」
「いや、その、だから問題というか、なんと言うか…」
みだりに肌を見せてはならないという決まりでもあるのだろうかとも思ったけれど、ジェイドさんは、というか殆どの龍人族の服装は肌が露出度が高い。
と、いう事は違う理由で見せたくないのだろう。
「やっぱり、怪我してるんだね?隠したくなる程酷いの?」
「え?怪我!?……怪我?ああ、そういう事か……」
何がそういう事なのか理解出来ないのだけど……
まあ、カッツェさんが納得出来たのならそれでいい。
漸く服を脱いでくれたカッツェさんの身体をあたしは観察する事にした。
そこには、深くはないけれどあちらこちらに打撲痕や歯形が付いていて、更にまだ血液が滲み出ている傷も存在していた。
思った通りだ。あたしが意識を失っている間、ずっと守ってくれていたんだ。
「……治療するね」
あたしは掌を傷口に翳して水魔法を使った。
傷口をあたしが生み出す水で洗い、綺麗になった所で今度は彼の血液の流れを調節し、滲出液が傷を覆うように流れさせ、そして細胞が活性化させるようにした。
すると、薄くはあるけれど、皮膚が傷口を覆ってくれた。
「いつの間に治癒魔法を?」
「セレナさんのような治癒魔法は覚えてないよ。あたしがやったのは自然治癒能力を活性化させただけ」
生物と保健体育で習った知識があったから水魔法で何とかなるかもしれないと試しにやってみたら出来たとは流石に言えない。
でも、セレナさんのような治癒魔法は使えない。
いつかセレナさんに教えてもらわないと。
改めて、治癒魔法の必要性を感じながらあたしは話を続けた。
「……襲われたんだね?だから赤龍の民を助ける必要はないと判断したんだね?」
「彼らは長の命令さえ聞けない状態です。このままでは神子を守り切る自信がない」
理性を無くした人間程骨の折れる存在はない。
カッツェさんは、あたしの気持ちを汲んで民達を殺さないように手加減し続けながらあたしを守ってくれたのだろう。
食事さえまともに摂れないこの場所で、それを続けたら間違いなくカッツェさんが弱っていく。
「解った」
「では……!」
カッツェさんの表情に安堵が広がったけれど、あたしはそれを制するように首を振った。
「民はちゃんと助けるよ。頼まれた以上はやり遂げないと。でも、このままやりたい放題させるわけじゃない。
あたしは取り敢えず神様なんでしょ?ならば、神として力を誇示して彼らに恐怖を埋め込む事にするよ」
本当はやりたくないけど、やらないとこの先も襲われるし、いや、それよりもあたしが気になっている事が他にある。
それは、この集落が恵んで貰った物で生活をし続けていたという事だ。
長い間、施しを受けていた人間は自分の力で生活する術を失う。
だけど、今の状態ではまともに話し合う事も出来ない。
ならば、最初のうちはあたしに逆らえば恐ろしい思いをする事を心に刻ませる事も必要だ。
恐怖は理性のない人間であればあるほど、そう獣のような本能で生きる者ほど効果が期待出来る。
嫌われるかもしれない。憎まれるかもしれない。
だけど、その力も活力となって自立出来るという事を知れば、この集落は変わるはずだ。
あたしは、そう判断して憎まれ者になる事に決めた。




