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第3話 学校生活

 今日も目覚まし時計のベルでオレは目が覚めた。ミネルバはもう居なかった。緊張して眠れなかった割に、いつの間にか寝てしまった。

 布団から這い出し、朝のお勤めを始める。朝食、歯磨き、洗顔。学生(せんとう)服を着て出撃準備完了。あれ?そう言えばミネルバは何処に行った?朝から逢っていないぞ。

 そう思いつつ、玄関に向う。オレは固まってしまった。

 また、また、知らない女の子が立っていた。いや知っているけど。おれが声を掛けようとするより先に・・・・・・。

「私も一緒に学校へ行きます!」

 声はミネルバだった。高らかに宣言している。オレもここまで来たらもう、驚かなねえぜ。彼女はまた器、フィギュアを変えていた。だが、どうしても突っ込まずには居られないところがあった。

「ミネルバ、その器はまずいんじゃないのかい?」

「どうして?制服はちゃんと着ているわ」

「制服はいい。そこじゃないよ」

「鞄も持っているし、お弁当も作ったわ!」

「それもいい。違う所だ」

「じゃあ、聞くけど、何処?」

 オレは大きく深呼吸をした。そして大きな間違いポイントを指摘する。

「あのね、日本人でそのピンク色の髪の毛はありえないでしょ!」

 今回ミネルバが使ったフィギュアは美少女ゲームのヒロインだ。そのヒロインはピンク色のロングヘアーが特徴的だった。ルックスは抜群で十人が十人、『可愛い』と思うであろう。だが、ピンクの髪の毛は違和感ありありだった。

「個性的でいいでしょ?」

 ミネルバは前向きだった。


 二人並んで歩いている。天気もいい。

 女の子と一緒に登校なんて、夢見たいな事だな。このシュチュエーションはどれだけ憧れた事か・・・・・・・・。

 でも、その格好でオレの横にいると、なんだかゲームの中で、そのヒロインと結ばれる男から、人の恋人を略奪したような気分なってしまう。罪悪感が出てきた。

「彼女はミネルバ・・・・・・彼女はミネルバ・・・・・・」

 念仏のように唱える。天地に早いとこ、オリジナルフィギュア作って貰わないと。

 オレの正直な気持ちとしては、正直、こんな美人と一緒に居るのは嬉しくて、にやけるの必死に抑えた。そして彼女の顔を見る。ミネルバさん。もじもじしているように見えるのだが・・・・・・。

「どうかした?もしかして緊張している?」

 いくら女神でも人間の学校へ行くのは初めてだろう。

「あの・・・・・・」

 心なしかミネルバの顔が赤い。

「どうした具合悪いのかい?大丈夫?」

「大丈夫・・・・・・ちょっと・・・・・・胸が重いだけ・・」

 胸が重い?オレはミネルバの胸を凝視してしまった。彼女はその視線を感じ取ったようだ。

「えっち」

「な!」

 そのキャラクターは高校生とは思えないような大きな胸を誇っていた。なんちゅう設定だ。それが現実となったら・・・・・・注目の的になるのは確実だ、

「し、仕方ないだろ!そう言う胸の設定なんだから」

 そんな嬉はずかし会話をしているうちに学校へ到着した。校門で所持品検査なんてしてないだろうな。内心ビクビクだった。昨晩、悪魔の襲撃あったから用心して、オレの鞄にはベレッタM92Fを入れてある。

 悪魔の使い魔には六ミリBB弾が有効とわかったからだ。でもこんなもん学校にもちこんだら、大騒ぎだし、オレはミリヲタ変人扱いとなってしまう。ミリヲタだけどよ!。でも、オレの命も掛かっているんだぜ。信じて貰えないけど。

 でも今の所、一番頼りになるのは、隣に居るミネルバだけだ。そう考えると本当に女神に見えくる。

 正直、なんでこんなに狙われるのかわからん。金縛りどころじゃない。間違いなく俺を殺そうとしている。悪魔に命を狙われるようなことしてないぜ。

 ミネルバには聞きづらいしな。どうしたもんか?


 朝のホームルーム開始。てっきり、ミネルバが転校生として紹介されるかと思っていたけど違った。既にクラスメートになっていた。彼女の席もある。違和感なし。もう何でもアリだな、女神よ。

 クラスのみんなは初めからミネルバがここに居るような対応をしている。

 授業中も至って普通。先生だっていつもの対応だ。昼休みまではつつがなく進行した。

 昼休み。

 オレとミネルバは向かい合わせで座って弁当を食べていた。なんと弁当はミネルバが作ってくれた。こいつ学校へ行く気満々だったのか。

「魔力で私が、みんなと一緒に入学して初めからこのクラスに居ると言う認識を刷り込みました。」

 笑顔で教えてくれた。

「全く、何でもありですか。便利だね」

 ミネルバがなおも付け加えた。

「私のキャラ設定も刷り込みました。」

「どんな設定だよ」

「私と浩太郎君は血の繋がらない姉弟で、ひとつ屋根の下で暮らしていて、両親は居ないと・・・・・・」

 おい!ちょっと待て。凄まじく誤解を招くような設定にしてくれたな。どこでそんな設定を仕入れて来たんだよ。脚色やりすぎ。

「あのねえ・・・」

 色々と小言を言ってやろうかと思ったその時、ミネルバの所にクラスメートの女子二人がやってきた。

「ねえ涼子」

 涼子とはミネルバの偽名。この学校にいる間は《御影涼子》と名乗っていた。

 やってきたのは『瀧澤 悠理』と『大日向 美咲』だった。

「明日の放課後、クラブ見学に行こうよ?」

 女の子三人で話出した。当然オレは蚊帳の外。

「クラブ見学ですか?」

「そうそう。涼ちゃん、吹奏楽やってみない」

「吹奏楽?」

 瀧澤と大日向が目を輝かせながら、ミネルバを誘っている。この三人は【仲良し三人組】の設定かい?

「吹奏楽部はクラリネット担当の三年生四人が卒業しちゃうと、今の二年生一人しか残らないんだって。演奏の曲目が確保出来ないんだって」

 大日向の説明を瀧澤が引き継ぐ。ミネルバはふんふんと頷いている。

「今部員募集中だって。楽器の経験なくてもいいんだってさ」

「どう、涼ちゃん明日の放課後」

 瀧澤の問いかけの後、ミネルバはオレを見た。オレに許可を求めているのか?

 別に行ってもいいよ。

 オレはミネルバを拘束するつもりないし、保護者じゃないし。

 オレはぐっと親指を立てた。

「涼子のダンナもいいって言ってるし。行こうよ」

 おい!そのダンナって言うのも設定か?

「うん。行くよ。明日ね」

 ミネルバは行く決心したようだ。瀧澤と大日向も喜んでいる。三人はまた別の話題で盛り上がっている。女の子ってよく喋るな。結局仲良し三人組は昼休みが終わるまで喋っていた。


 そんなこんなで一日目が終了。オレとミネルバは学校から家に向かって歩いていた。

 途中二人で夕食の材料をスーパーで買う。おいおい。本当の夫婦のようだぞ。制服着てなけりゃ。

 スーパーからの帰り道。

「驚きました。大日向さんと瀧澤さんが話しかけてくるなんて」

 ミネルバが思い出したように話す。

「そうかい?仲良し三人組みの設定でも刷り込んだんじゃなのかい?」

「いいえ・・・私はただのクラスメートです。それ以上の関係は作っていませんでした」

 そうか、向こうは親しい友達と思っているようだが。

「でも、嬉かった・・・・・・友達っていいですね」

 ミネルバはニコニコしながら、話す。オレも良かったと思う。

「転入初日で、友達が出来る事はいいことだよ。仲良くしてくれ」

「そうですね。明日、学校へ行くのが楽しみ。また、色々とお喋りしたいな」

 正直、ミネルバが学校へ行く事は、抵抗があったんだけど、上手くやって行けそうで安心した。あのまま家に篭っていたら、可哀想だよな・・・・・・。

「ミネルバ、神界に友達はいるの?」

 オレはミネルバの神界の友達がどんな人か気になった。男の友達とかいるのかな・・

「友達はいますよ。今度、人間界にも友達が出来たと自慢します。それと、浩太郎君が思っているような、男性の友達はいませんので、ご安心を」

「うっ!」

 オレは思わず、変な声が出た。オレの心が読めるのか?ミネルバは侮れないくらい鋭い。



 家に着いてからはいつものパターン。メシ、風呂、テレビ。そのテレビを見ようした時、ミネルバから、大事な話があると。そうだろう、オレも聞きたいぞ。

「夜間は悪魔も女神も力が強くなります。昼よりも行動しやすいのです」

 だから金縛りとかは夜寝ている時になるのか?

「だけどミネルバは昼起きてフツーに生活しているよな」

「器に入ると昼でも行動可能となるようです。逆に夜は眠くなりますが。なんか、器に入ると私の力が、魔力が相対的に強くなるようです」

 人間と同じ体内時計だな。

「今晩も悪魔の夜襲を受ける可能性があります。それに備えます」

 どうするの。オレはこれから何が起きるか興味津々。

 ミネルバはパンと両手を胸の前で合わせた。まさに何かを拝むように。

 そして何かつぶやいている。何語かわからない。

 つぶやき終えると、ゆっくり手を開いた。手の中から小さな光の玉が出てきた。

 そして光の玉から翼が生えた。光の玉はゆっくり舞い上がり、ミネルバの周りをくるくる旋回している。

「私が持っている妖精です。浩太郎君には光の玉にしか見えないと思うけど」

「ああ。光の玉に羽が生えている。まるでフクロウのような大きな翼」

「妖精は私ほどの能力は持っていませんが、使えます」

 ミネルバが妖精を見ながら喋る。

「この妖精に周囲を監視させます。外に飛ばし、この家の上空で。半径一キロ以内に接近する悪魔を見つける事が出来ます。」

 A―WACS 早期警戒機みたいなものか。

「悪魔が近づいてきたらわかるのか?」

「うん。妖精から私に連絡が来ます。女神リンクと呼ばれる通信システムです」

 そうか、まあ、テレビとブルーレイレコーダーがリンクする時代だから、女神と妖精がリンクしてもおかしくないか・・・・・・待てよ、ミネルバは最初光の玉だった。それが、フィギュアに入ると人間になる。しかも、さっき、器に入ると魔力が増すと言っていたな。そして、この妖精は早期警戒機なんだよな・・・・・・うーん。ぽくぽくぽくちーん。小坊主の真似をしてみた。

 そうだ!オレは閃いた。

「ミネルバ、その妖精の能力が上がるかもしれないぜ!」

「え?どういうこと?」

「その妖精も器に入いる事ができないか?」

 そう言うが早いか、オレは2階の自分の部屋へ駆け上がっていった。目指すはシステムラック。

「ラックの中にあいつが居たはずだ!」

 ミネルバは、一階のリビングで浩太郎を待っていた。妖精と話していた。

「浩太郎君は何をする気なのかしら?」

 妖精が喋った。

「私に任せて下さい。この家に近づく悪魔は一匹たりとも見逃がしません」

 妖精は渋い男の声だった。

 オレは二階からダッシュで降りて来た。そして手に持っていたものをミネルバへ差し出した。

「何?これ」

 ミネルバは不思議な物を見るような眼差しだった。オレは胸を張って答える。

「一四四分の一スケール、ボーイングE‐3セントリーだよ」

 ミネルバはきょとんとしている。

「飛行機にポリバケツの蓋がくっついてる・・・・・・」

「そうだ、ごめんな。オレが何をしたいかまず説明するよ」

 オレはE‐3のプラモデルをテーブルの上に置き、おれのアイデアを説明する。

「その妖精をこのプラモデル、とういうか、器に入れて、実体化させるのさ。そうすれば悪魔の探知能力が上がるんじゃないかと。この飛行機は敵を探す能力があるのさ」

 ミネルバが「ポリバケツの蓋」と言ったのは、レーダーアンテナ。ロートドームと呼ばれている。機体背面に装備されている。探査中はゆっくりとグルグル回るんだよ。

「やって見ましょうか。駄目もとで。少しでも探知能力が上がれば有利だから」

 但し、と彼女は付け加えた。

「さっきも言ったように、妖精は私ほど魔力をもっていません。大体百分の一程度です。妖精の魔力だけでは本物と同じになるような実体化は無理だと思います。本物になるには別途魔道具か必要となりますが・・・・・・」

「このままの大きさの方がいいよ・・・・・・」

 本物と全く同じになっても扱いに困る。本物は全長四六メートル、全幅四四メートルの巨体だから。こんな場所で実体化されたら、我が家は破壊されてしまう。それに凄く近所迷惑だよ。

「その器に入って!」

 ミネルバが妖精に要請した。駄洒落を言ってみた。ミネルバは無反応だった。

 妖精が頷いたように見えた。そして、E‐3のプラモデルに入る。

 パン!と破裂音。煙の中にE‐3がいた。大きさはそのまま。一四四分の一スケールだった。

「うまくいった?」

 ミネルバの顔を覗き込みながら聞いた。彼女は難しい顔で、プラモデルを見つめている。

 ヒュイイイイイーンと高い金属音がした。

 なんと!主翼に取り付けてある四基のジェットエンジンが動き出した。そして、機体背面のロートドームも回りだした。

「こいつ!動くぞ!」

 オレは思わず叫んだ。

「うまく行ったわ」

 ミネルバは笑顔になった。「イエイ!」ぱちん!とオレとハイタッチ。

 なんと、E‐3はテーブルの上を滑走し離陸した。プウーンと蚊が飛ぶような音で。

 そして天井をぐるぐる旋回している。ラジコン飛行機みたいだ。

「ミネルバ、えーと、なんだ、あの妖精に名前はないのかい?」

「名前は・・・特にないわ。妖精は妖精だもの」

 オレはこのE‐3の中にいる妖精が凄く重要な存在に思えてきた。気に入ったよ。こいつが悪魔の襲撃に対抗する大きな武器だ。それを妖精って呼ぶのはちょっとな。

「なあ。ミネルバ、こいつに名前付けてもいいかい?」

「えっ?別にいいけど・・・」

 よし、妖精と言えば・・・・・・『フェアリー』とか『ノーム』とか『コロポックル』とか色々あるが・・・・・・カッコいい名前にしたいな・・・・・・おう、調度いい名前があった。

「ケツァルコアトルスにしょう」

「えっ、ケツァルコア・・・・・・言いにくいわ!舌噛んじゃうじゃない」

「ケツァルコアトルスって別に言いにくくないけど」

「私は早口言葉苦手よ・・・・・・」

「別に早口言葉じゃないんだけどな。ケツァルコアトルスは」

 ミネルバは嫌な顔をしている。無言の抗議でこの名前には反対のようだ。残念

「じゃあ・・・・・・ワイバーンは?」

 オレは胸を張って答えた。ミネルバは腕を組みさらに難しい顔をしている。どうしたんだ?

 しばし沈黙。

「ワイバーンって私の隣の家で飼っているペットよ・・・・・。まあ、いいけどね」

 な、なんだと?あの伝説の飛龍(ワイバーン)がペットだって?恐るべし、女神たち。

 彼女は駆け出し、ベランダの戸をあけた。

「ゆけ!」

 E‐3ワイバーンは「ヒュゴオオー」と音を上げ、ベランダから外に飛び出した。

 ベランダの戸を閉めながらミネルバは何かつぶやいている。日本語に聞こえないから、例の呪文か何かだろうな。

「浩太郎君、凄いよ。探知能力が格段に増えてるわ。やっぱり私たちは器に入ると魔力が増大する」

 どうだい!オレの閃きは。

 夜も更け俺たちは寝る事にした。ミネルバはベッド。オレは寝袋。

 同じ部屋で別々に寝る。

 部屋の照明を消す前にミネルバがオライオンから送られて来る情報を教えてくれた。

「近くに悪魔は居ません。半径三百キロ以内にも居ません。今夜、襲撃は無いでしょう」

 ミネルバの説明では器の効力で探知能力が半径五百六十キロまで広がったそうだ。

 本物の早期警戒機と同じじゃん。後さらに増えた能力として魔力のジャミング波を出してこの家の存在を隠すことが出るようになったとか。範囲は家の周辺だけど、これで安心して寝れる。

「おやすみ」

 彼女に声を掛け、蛍光灯を消す。真っ暗。

「おやすみなさい」

 返事が来た。そして・・・・・・。

「どうして今日は悪魔に狙われているか聞かないの・・・・・・」

 小さな声が聞こえた。

「別にいいよ。話せるようになったら、話してくれるだろ。それでいいよ」

 その会話を最後に二人は眠りについた。

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