1人居たら30人居るもの
森川視点☆
「つかささんとはどうだ?」
部活の練習試合は野々宮の学校だった。試合後、俺は野々宮に話しかけた。
話題は俺の彼女の叔母で、野々宮の恋人でもある上平つかささんのことだ。
「・・・・・一つ星レストランに連れて行ってもらった。予約が三ヶ月は詰まっているようなところ。
シェフが出てきて『上平様、今日はようこそいらっしゃいました』って言ってた」
バリバリのキャリアウーマンは食事一つとっても一般人とは違うな。
野々宮が落ち込んでいるのは・・・生活レベルがあまりにも違うからか?
確か野々宮の父親は外食がキライで、母親は料理上手だったはずだ。
生活水準は平均より上だとは思うが、有名レストランに行く機会なんて今まで無かっただろう。
「良かったじゃないか」
「うん。美味しかったよ。他にも『時価』って書いてあるお寿司とか、看板が出ていない隠れ家的レストランとか、個室で中華料理とか食べさせてもらった」
普通にうらやましいが・・・野々宮からいくと「ここは俺が奢ります」という台詞が言えずに落ち込んでいるのか?
「順調にデートしているじゃないか」
「うん。1年間、俺がアクションかけなきゃメールも電話もしてくれなかったのに、今じゃつかささんから進んで、デートのお誘いとかがある。・・・夢みたいだ」
「・・・・・・・・よかったな」
「森川・・・。つかささんってモテるんだよ」
「そうなのか?」
失礼ながら、お前のほうがモテるんじゃないのか?
「あの一つ星レストランのシェフ!明らかにつかささん狙いだった。俺を見て『ご親戚の方ですか?』って言ったんだよ!?
つかささんは『どうみえます?』って切り返していたけど・・・。俺が成人してたら『恋人です』って堂々と言えるのに!」
つかささんの立場では高校生(去年まで中学生)の男を恋人と堂々と紹介は出来ないだろうな。
「それは仕方ないだろ。つかささんと付き合うからには、そういうことも納得しなきゃな」
「いや、それはいいんだって。二人だけの秘密って、なんか嬉しいし」
「・・・・・・・」
「俺がハラ立つのは、つかささんは俺のなのに、おっさん達が色目を使うことなんだよね」
レストランのシェフに~、寿司屋の下っ端。アナリスト仲間のケンシロウとかいう奴、スタバの店長・・・。
野々宮は指を折り曲げて数え「1人居たら30人居るっていうし・・・4×30で120人!?」と叫んでいる。
「それはゴキブリの話だろう」
「つかささんに色目を使う男はゴキブリと一緒だよ」
「・・・・・・」
片思いでも両思いでも面倒なヤツだな・・・とプリプリ怒る野々宮を眺めつつスポドリを飲む。
「今日はつかささんと逢う予定なんだ♪」
メール着てるかも~と野々宮は携帯を操り・・・固まった。
「どうした?」
「森川。都内にあるチェーン店で女性が好む店を探してくれ」
「・・・・・・」
「つかささんから『春都君のオススメのチェーン店に行こう?』ってメールがあった!
あとその店の売れ筋ランキング20品目と、一番雰囲気がいい支店。接客態度も重要だ」
何で俺が。
と言いたいが「だって森川のほうがそういうの詳しいじゃん☆」で済まされるに違いない。
「一緒に行くのはつかささんだろ? 彼女はかなめにこう言ったことがあるらしい。『メイド喫茶行きたいな~』・・・と。
お前の初仕切りだから気合を入れたいところだろうが、彼女のニーズに答えるなら、メイド喫茶を勧める」
「メイド喫茶?」
「そうだ。どうする?」
「そりゃ、つかささんが行きたいっていうなら行くよ。
森川、いいとこ探してよ」
野々宮は同世代の男子には俺様。




