# 第八話 ## 「未来から来た俺」
# 第八話
## 「未来から来た俺」
夜。
王都の外れにある丘。
レインたちは焚き火を囲んでいた。
風が静かに草を揺らしている。
しかし。
誰も口を開かなかった。
目の前にいる男。
それは――。
未来のレインだった。
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「……本当に俺なのか?」
若いレインが尋ねる。
未来のレインは静かに頷いた。
その顔には無数の傷。
右目には深い傷跡。
そして。
かつて希望に満ちていた瞳は、
どこか悲しみに染まっていた。
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リアが震える声で言う。
「未来って……何年後なの?」
「十五年後だ」
未来のレインは答えた。
その言葉に全員が息を呑む。
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フェルが腕を組む。
「未来から来た理由は?」
未来のレインは少し黙った。
そして。
低い声で言った。
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「お前たちを救うためだ」
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空気が凍りつく。
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「救う?」
ルナが首を傾げる。
未来のレインは拳を握り締めた。
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「俺は失った」
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その一言だけで。
何か嫌な予感が走った。
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「未来で何があったの?」
リアが聞く。
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未来のレインは目を閉じた。
そして語り始める。
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「魔王は倒した」
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全員が驚く。
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「え?」
「勝ったのか?」
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未来のレインは頷く。
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「だが……その後だった」
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焚き火が揺れる。
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「魔王は死ぬ直前に禁呪を発動した」
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「禁呪?」
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「世界を滅ぼすための最後の呪いだ」
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誰も言葉を発せない。
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「俺たちは止めようとした」
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未来のレインの声が震える。
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「でも……間に合わなかった」
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そして。
彼は最初の名前を口にした。
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「リアは死んだ」
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その瞬間。
リアの顔が青くなる。
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「え……」
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「王都を守るためだった」
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未来のレインは続ける。
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「住民を避難させるため、一人で城門を支え続けた」
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「そんな……」
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リアの目に涙が浮かぶ。
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「最後まで笑っていた」
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未来のレインは俯いた。
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「みんなを頼むって言ってな」
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リアは何も言えない。
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ルナが唇を噛む。
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「フェルは……?」
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未来のレインは静かに答える。
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「フェルも死んだ」
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フェルが目を見開く。
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「俺が?」
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「俺を守ってな」
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未来のレインの拳が震える。
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「敵の将軍と相打ちだった」
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フェルは笑った。
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「そうか」
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だが。
その笑顔は少し寂しかった。
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「俺らしいな」
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未来のレインは首を振る。
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「全然らしくない」
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「え?」
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「お前は最後に泣いていた」
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フェルの表情が固まる。
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「仲間を残したくないって」
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沈黙。
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焚き火の音だけが響く。
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そして。
ルナが小さな声で聞いた。
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「私は……?」
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未来のレインは答えない。
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その沈黙が。
何よりも恐ろしかった。
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「言って」
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ルナが震える。
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未来のレインは苦しそうに言った。
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「ルナは消えた」
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「消えた?」
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「禁呪を封印するため、自分の命を代価にした」
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ルナの顔から血の気が引く。
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「そんな……」
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「誰も止められなかった」
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未来のレインは空を見上げた。
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「お前は最後に笑ってた」
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「レインなら未来を変えられるって」
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ルナの目から涙がこぼれる。
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誰も話せない。
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あまりにも重い未来。
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そして。
最後に。
リアが聞いた。
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「あなたは?」
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未来のレインは笑った。
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寂しそうに。
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「俺だけ生き残った」
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その言葉が一番重かった。
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「仲間を守れなかった」
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「違う!」
リアが叫ぶ。
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「そんなことない!」
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未来のレインは首を振る。
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「俺は弱かった」
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「だから過去へ来た」
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彼は若いレインを見る。
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真っ直ぐに。
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「聞け」
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未来のレインの瞳に光が宿る。
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「お前は俺とは違う」
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「未来は変えられる」
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「仲間を救え」
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「絶対に諦めるな」
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若いレインは拳を握る。
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胸の奥が熱い。
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怖い。
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でも。
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守りたい。
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リアも。
フェルも。
ルナも。
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誰一人失いたくない。
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レインは立ち上がった。
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そして叫ぶ。
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「未来なんかに負けるか!!」
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「俺は全員を守る!!」
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リアが笑う。
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フェルが剣を掲げる。
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ルナも涙を拭く。
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未来のレインは静かに微笑んだ。
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「そうだ」
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「その顔だ」
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その瞬間。
彼の体が光に包まれ始める。
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「時間が来たか……」
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未来のレインの姿が薄れていく。
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「待って!」
リアが叫ぶ。
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未来のレインは最後に言った。
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「世界樹の封印を急げ」
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「そこに全ての答えがある」
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そして――
光の中へ消えた。
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残された四人。
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夜空には無数の星。
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しかし。
誰も知らない。
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未来のレインが語らなかった、
さらに恐ろしい真実を。
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彼が本当に未来へ帰ったのか。
それとも――。
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## 次回
### 第九話
**「世界樹の封印」**
未来を変える鍵は世界樹に眠る。
だがその場所には、
人類最強の守護者が待ち受けていた――。




