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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1968/1971

演習の裏にある計画

ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。



「リク殿は、三方から迫る部隊を引き受けているように見えます。何かの作戦でしょうか?」

「いや――リクであれば全員で動こうとするはずだ。今回の演習、リク一人が多くを担う、つまりリクが一人で軍を圧倒するのは避けたそうであったからな」


 四方からりっくんへと向かった部隊のうち、東の部隊が集中的にやられて……あ、ほとんど壊滅したわね。

 ともかく、その東側の部隊以外には派手に炎が巻き上がり、よく見れば足元が凍り付いているのが見えた。

 それだけでなく、アマリエーレ王女――今はアマリーラちゃんね。


 そのアマリーラちゃんが巨大な剣が振るわれるたびに、これまで以上の兵士がこれまで以上の威力で吹き飛ばされているのがわかるは。

 あと、突然兵士が動かなくなる現象がぽつぽつと起きているのだけど、あれは何かしら? 時折大きな影が揺らめいて見えるようだけど……。


「リク以外が、と考えると……ふむ」


 大方、りっくんを侮るような事を言った部隊かしらね? りっくん自身はあまり気にしないし、そんな性格なのは私がよく知っている――そういうところも可愛いのだけれど。

 周囲にいる皆、特に獣人の二人が黙っているわけはないわよね、私も似たような気分だし。


「壊滅したあの部隊は……」

「アータレイヌ男爵家の部隊ですな。亡くなった子爵家の領地などを受け継がせた者です」

「あぁ、新たに叙爵した男爵か」


 アータレイヌ男爵、バルテルの凶行が原因でいなくなった貴族を補うように叙爵したのを覚えている。

 非常に有能で文官気質だからか、現実的過ぎるところがあり、噂に惑わされず自分の目で見たものを信じるような男だったはず。

 長所でもあるけど、この場合は短所になったわね。

 文官気質なせいもあるのでしょうけど、軍の指揮などは問題ないと思われているのに、りっくんに対しては懐疑的だったのかもしれないわ。


 りっくんの事はおそらく、誇張された噂にでも思っていたのでしょうね。

 まぁ、減点ね。

 これだけ国の全体、特に王都やりっくんと救われた街などが多くあるのに。

 とはいえこの減点で貴族としてとか領地に対して私が何かやるって事はない。


 後で私から嫌味の一つでも言ってやるくらいかしら。

 新興の貴族家だし、立場が悪くならない程度にだけど――はぁ、本当面倒ね。


「む、あっとういうまに、アークレイヌ男爵が討ち取られたようだな」

「リク殿は後方で攻撃に参加しておりませんでしたが、あっという間でしたな。子爵家から受け継いでまだ上手く軍を運用できていないのもあるのでしょう」

「だろうな。おそらく兵としての練度は平均的だろうが、叙爵されて日が短い。子爵家だった頃の軍を掌握、運用となると期間が足りなかったのだろう」


 こればっかりは、男爵を責められないだろう。

 むしろ、叙爵されて半年と経っていないのに、軍をまとめて面目を保てる程の数を派兵、男爵自ら率いているのは評価されるべき点であり、加点してもいい。

 ただ噂などを信じていないというくらいで、公にりっくんを非難したわけでもないから、減点は少なめだからそれを差し引いて――ちょっとマイナスってところね。


 もしりっくんを馬鹿にでもしていたら大減点、爵位を剥奪とかそんな事はしないけど、ちょっと一個人として立ち直れないくらいにやり込めてやったのだけど。

 っと、いけないわね、りっくんの事になるとついつい熱くなっちゃう。

 気を取り直して、演習の全体の様子は――。


「冒険者の離脱者は少ないが、軍の離脱者は多い。特に貴族軍は敗北条件の半数近くが既に討ち取られているか」

「そのようですな。不甲斐ない、と言うべきかもしれませんが、リク殿やユノ殿達の活躍を差し引いても、冒険者を褒めるべきと思われます」

「うむ」


 全体を見つつ、ちらりと離脱者が集まるようにしている場所を見ると、そこでは意気消沈した様子の兵士が大量にあふれていた。

 他方では、離脱した少数の冒険者はまだ意気高揚しており、近い立場になってもその違いがはっきりとわかる。

 国軍はワイバーンの鎧があるおかげか、怪我なども含めて離脱者は少ないのだけど、エルサちゃんやユノちゃん達がそれぞれ派手にやって、かなり押されているうえに本来の動きができていない。


 りっくんを抑えにヴェンツェルが直接動いたのもまずかったかしらね、総大将という役割上、最前線に出るべきではないのだけど、りっくんに対して向かっていた間に結構な数がやられていた。

 とはいえ、一時的にでもりっくんを留めたのは評価されるべきだし、ヴェンツェルが向かわずただ自由にさせていたらもっと被害は大きかった可能性もある。


 やはり戦場は生き物、という事かしら。

 実際の戦争なんて前世から考えても初めてだし、難しいわね。


「爺、離脱者は気が抜けている者が多いようだ。立て直すように伝えておけ」

「畏まりました」


 演習の趨勢はほぼ冒険者側に傾いていると言っていい。

 だからか、離脱した兵士達の多くは全てが終わりと俯いている者がほとんどだ。

 一部、これから起こる事を考え、士気を上げようと動いている貴族である大将もいるが、全体的には微々たるものだ。


 これは、喝を入れねばならんな。

 ただの演習ではないのだから――。


「陛下!」

「……ハーロルトか」


 完全に士気が戻ったわけではないけど、私からの喝、もとい伝令などによってある程度気を取り直した離脱兵士達。

 多少隊列を組み直すなどの準備が整い始めたところで、この場に駆け込んできたのはハーロルト。

 手を振って合図を送り、遠見の魔法を使っていた者に効果を解除させ、ハーロルトへと顔を向ける。


 ハーロルトの情報部隊は多くがこの演習には参加せず、事前の情報をもとに独自に動いていた。

 それは、今回の演習をただの演習として終わらせず、掴んでいた情報をもとにこちらからの仕掛けのため。


「首尾の方はどうか?」

「はっ、お伝えいたします! 各地に散らばっていた不穏分子が一つとなり、こちらを目指しております。全てではありませんが、ほとんどと言っていい数となっております」

「そうか……」


 全てではない、と言ったハーロルトから悔しそうな様子が滲み出ていたけど、ほとんどであれば問題ない。

 というより、多少残ってもそれくらいであれば大きな事もできず、あとはただ落ち着いてからゆっくりと対処すればいいだけのはずだから。


「ハーロルト殿、不穏分子の目標はそなたが想定した通りか?」

「はっ、宰相様。我々情報部隊の者達は便宜上、反抗勢力と呼称しておりますが、その者達は広く布陣している国軍、正規軍ではなくそして冒険者軍でもなく。東から真っ直ぐにここを目指しております」

「まぁ、我がいるからだろうな」


 反抗勢力――反乱分子とか不穏分子とか、色々と呼び方はあるけど、用は帝国がアテトリア王国内に潜ませていた者達の残りなのよね。

 ハーロルトを始めとした情報部隊によって、それらは探し出され、さらにユノちゃんやロジーナちゃん、それからレッタからの情報提供などもあって全ての拠点を割り出した。

 拠点を持っていないような者達にも、接触できるよう探し当てたのは、ハーロルト達の功績と言えるわ。


「陛下自らが囮など、私は賛成できませんでしたが……ここに至っては仕方ありますまい」

「強行させたからな。今からでも、安全な場所――そうだな、冒険者達の方へ向かっても良いのだぞ?」


 溜め息混じりの爺にそう言うが、すぐに首を振った。


「ご冗談を。作戦としては想定を越えられなければ、ここ程安全な場所はありません。それは理解しております。だからこそ、強硬に反対はしなかったのですからな」

「まぁ、そうだろうな」


 爺が反対していた大きな理由は、私が囮としてこの場に来る事だったのだろうから、離れる気はないでしょうね。

 女王自ら囮になる、と言えば美談になるのかもしれないけど、宰相としてはどれだけ安全でも賛成できなかった気持ちはわかるわ。

 フィリーナによる結界は、りっくんやエルサちゃんのものより劣るとは言っても、通常で考えればとんでもなく強固なもの。

 それに守られながら、前もって近衛隊はこちらに待機させている。

 近衛隊は私直属であり、国軍を統括するヴェンツェルとは別系統であり、王国内で精鋭中の精鋭。


 よくりっくん達が冒険者のランクに強さを例えるけど、近衛隊の全員がBランクであり、Aランクに届くと言われるような者も幾人かいる。

 冒険者のパーティとは違い、百人と数も多いため私を守るだけでなく、それなりの規模の作戦を遂行する事もできるはず。

 それこそ、演習の方で冒険者に当てればりっくん達のような一部例外を除けば、冒険者軍の総大将近くまでは届くでしょうね……討ち取れるかはともかくとして。

 結界と精鋭の近衛、軍、冒険者共に打ち合わせ済みであり、りっくん達も来てくれる手筈になっている、となれば実質的に私のいるこの場所が王国内で一番安全とも言えるはずだからこそ、作戦が実行されたわけね。


 その今回の作戦、反抗勢力が向かってくるのは最初から分かっていた事で、むしろこちらからそうなるよう仕向けた。

 帝国が潜ませた者達、多くがりっくんの活躍で捕縛なりなんなりしたけれど、それでもまだ生き残りはいる。

 ハーロルトによると、それらはほとんどが身動きが取れない状況で、放っておいても害になる可能性は低かったようだけどもね。

 でも、ほんの少しでも害になる可能性があるのなら排除しておくべき――それが、りっくんが宣言した帝国に対して圧倒的な勝利へと繋がるはず。


 そのため、情報部隊の者達に接触させて決起するように仕向けて、一網打尽にするというのが今回の計画。

 帝国が国境を閉じて、潜入した者達が返れなくなったというのも、作戦実行の決め手になったわね。

 そしてそのために、各所に散らばる不穏分子達を扇動し、反抗勢力として一つにまとめ上げるようにした。


 最終的に、一網打尽にするための作戦をどうするか悩んだけど、今回の演習はちょうど良かったわ。

 軍や冒険者が集まるという場であっても、一つになり、決死で私に向かって行けばある程度成果を上げられる、と考えるよう仕向けられたのだから。


「演習の離脱者達の状況は?」


 今日のための作戦を頭で反芻しつつ、すぐ近くの近衛隊長に投げかける。


「はっ! 一部、リク様達の活躍に消沈している者もいたようですが、全員作戦は理解しておりますので、動けるよう隊列が整いつつあります」

「遅れはないのだな?」

「はっ。想定より怪我をしている者は少なく、士気も維持できております」

「リク達の手加減が上手く行っているようだな」


 消沈している、というのはりっくんの圧倒的な力によってだろうけど、それによるこの先想定していた戦いへ向けての問題はないようね。

 演習において、国軍と貴族軍は北、冒険者は南に布陣し、向かい合う二つの軍の中間から東に私達がいる。

 その私達から北東に国軍と貴族軍、南東に冒険者の離脱者達を集めて演習に影響しないようにしている、というのもあるけど、私達へ迫る反抗勢力に対して挟撃するための布陣でもある。

 まぁ、そのために反抗勢力が攻めて来る方角なんかもこちらが仕向けた事なんだけど、これは――というより今回の作戦の多くはハーロルトとその部下である情報部隊の手腕によるところが大きいわね。


「冒険者の離脱者は?」

「そちらは想定より数が少ないようですが、彼らは身軽です。怪我をしている者はいるようですがいずれも軽傷。いつでも動き出せるようです。作戦へと移行すれば、後詰めで冒険者総大将とその周囲の者達も合流するでしょう」

「うむ。――ハーロルト、反抗勢力の数は?」

「魔物二百、それらを追い立てる者達が三百、計五百と言ったところでしょうか」


 まだ近くまで迫っていないので、細かな数字はわからないようだけど、それでも五百というのは想定を超えていない。

 さらに、接触して扇動する際に確認していたけれど、獣王国でりっくんが遭遇したマギシュヴァンピーレや爆発するような処置をされている者もいなくて、国境を閉ざした帝国との接触もなし、と。

 

「全軍へ、これより帝国が仕向けた潜入者達の殲滅作戦を開始する。ただちに演習を休止、通達していた作戦へ移行せよ!」

「「「はっ!!」」」


 ハーロルトを始めとした幾人かが、私の命令を受けて各地へと散らばり、通達に向かう。


「それから、冒険者にも協力願いを」


 あくまで冒険者は協力者という立ち位置であるため、兵士達と同じような命令の出し方とは少し違う。

 とはいえ、今回の作戦は知っているのでお願いというより報せるだけで動いてくれるだろうけど。

 一応、女王の強権というか、強く命令する事もできなくはないけど、それをしたら冒険者ギルドがうるさいし、これまで築いてきた協力関係という信頼が揺らぐ事にも繋がるから、あくまでお願いって事。


「リク殿達にはどういたしますかな?」

「こちらから報せなくとも気付いて動いてくれるだろうが、そちらにも伝令を向かわせろ」

「畏まりました」


 りっくんなら、空にいるエルサちゃんや軍の動きから反抗勢力の動きを察知して動いてくれるだろうけど、一応ね。

 モニカちゃんとかがいてくれるから大丈夫だと思うけど、りっくんって昔からちょっとだけ抜けている所があるから。

 もしかしたら、気付かないなんて事もあるかもしれないしね。

 もちろん、りっくんが動かなくても反抗勢力を一網打尽にできるのだけど、まぁそれはそれとしてね。


「さぁ、これまでやられっぱなしだったが、これからはこちらから仕掛ける番だ! 各自、今までの鬱憤を存分に晴らせ!!」

「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」


 今までは、対症療法的に帝国が仕掛けてきたのをなんとかするという事が多かったけど、今回からはようやく我々王国側が帝国に対して先制を打てる。

 反抗勢力自体は、既に帝国から見捨てられた者達のようなものではあっても、ここから帝国に対していくという一つ目の一手。

 帝国の想定を大きく外し、りっくん達のおかげでこれまではかなり被害が抑えられてい吐いたけどゼロじゃない。

 だからこそ、いざ帝国に対するとなれば士気が高い近衛隊、そして伝令が届き始めた各場所で上がる鬨の声を聴きつつ、再び、今度は東に向かって遠見の魔法を発動させた――。



演習が行われている方角ではなく、自分を狙う集団が来るはずの方角へ目を向け、女王様は観戦をする気満々のようです。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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