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第9話「天空の城ラピュタ」

プレゼンの日からLINEでのやり取りが頻繁になり、それぞれの役割分担を決めていった。

まず、昭和初期の戯曲である『アップルパイの午後』を少し現代風に、そして、映画用に書き換える作業をどうするか?つまり、映画で言えば“誰が脚本を書くのか?”という事だ。これはすんなりと決まった。言い出しっぺの加藤さんが脚本を担当することになった。LINEでのやり取りでわかったのだけれど、加藤さんはかなりの読書家で沢山本を読んでいるらしい。沢山本を読んでいるって事は文章も書けるであろうという単純な発想から加藤さんは脚本担当となる。

次に監督を誰がするか?これもすんなり決まった。僕だ。将来の夢が映画監督という事になっているからだ。

「監督はお前に任せた」

と悟に言われた時はドキリとしたけど、なんだか嬉しかった。

余った悟は映像の編集をしてもらう事にした。悟の家には立派なパソコンがある。撮影した動画をちゃんとした映画に仕上げてもらう為に編集する役目だ。

カメラはそれぞれのiPhoneがあるから合計で3台ある事になる。

1番悩んだのが、配役だった。『アップルパイの午後』の登場人物は兄、妹、そして兄の友人松村の3名。妹はもちろん加藤さんで決まりの訳だけど、兄と松村の配役をどうするかで悩んだ。

この物語はほとんどのシーンが兄と妹の会話で、松村は最後の方に少し出てくるだけ。なので、兄の方が圧倒的に出演シーンが多く、当然セリフも多い。なので、監督をする僕が出番の少ない松村役を演じる事になった。何より、悟の方が兄のイメージに合っているというのが一番大きな理由だった。

衣装は学生服でいいのでは?となった。僕らが通う学校の制服は男子は昔ながらの学ラン。女子はブレザーだ。白シャツの首元に細くて赤いリボンが付く。スカートは紺。チェックなどというシャレた模様はない。この田舎臭い感じが『アップルパイの午後』の世界観に合ってる気がして満場一致で決まった。

それぞれの担当も決まり、次はいよいよ撮影を開始することになる訳だけど、最も高いハードルはここからだった。

まずは場所。どこで撮影するか?これなかなり悩ましかった。

そして、いつ撮影するか?というのも悩ましい。

おそらく撮影自体は1日あれば出来るだろう。それ程長い物語ではないから。しかし、セリフがやたら多い。これを覚えるのはかなり大変だ。僕のセリフは他の2人と比べたら少ないが、その代わり監督として絵コンテを描かなければいけなかった。絵コンテというのは映画の設計図のようなもので、カット割りや時間の配分なんかを漫画みたいに描いたものだ。

それぞれの準備期間なんかを考えて撮影は夏休みに入ってからスタートすることになった。

夏休みまでは1ヶ月ほどあったが、それまでに絵コンテを完成させなければならない。もちろん、今まで生きてきて絵コンテなんか描いた事がない僕は何か参考になりそうな本があればいいな、と思い本屋へ行くことこにした。近所の本屋にはあまり参考になりそうな本がなかったから、電車に乗って大きな本屋がある街まで出る事にした。さすがに大きな本屋には映画関連の本が沢山ある。映画の作り方的な本もあったが、そういう本はあまり読む気がしなかった。しかし、凄い本を見つけた!それが、ジブリ作品の絵コンテ集!『風の谷のナウシカ』や『千と千尋の神隠し』それに僕がジブリ作品で最も好きな『天空の城ラピュタ』もある。見たい、中を見たい!しかし、どれもビニールに包まれていて見ることができない!!値段を見ると3000円近くする!!自慢ではないが、僕は今まで生きてきた中で3000円もする本を買ったことなんてない!!そもそも、今手持ちが1500円くらいだから買えないんだけど。仕方ない、諦めよう。

家に帰り、ネットでジブリの絵コンテを探してみたりした。ちょこちょこと画像は出てくるものの断片的過ぎてあまり参考にはならない。

その流れでラピュタの解説をしている動画をYouTubeで見つけた。岡田斗司夫って人が解説している動画だった。これがなかなか面白い。見始めると止まらなくなってしまう。

しかし、岡田斗司夫って名前、どっかで聞いたことがあるような?

そうだ、この前のプレゼン大会の日に悟がDVDを貸してくれた『アオイホノオ』というドラマの中に出てくる人だ!実在する人だったんだ。調べてみると、ドラマの登場人物のほとんどは実在の人物だった!アニメに詳しくない僕は今まで『新世紀エヴァンゲリオン』も見たことがなかった。『アオイホノオ』には後にエヴァの監督になる庵野秀明も出てくるのだけれど、僕は全然ピンとこなかったのだ。

その、岡田斗司夫の動画が面白くて絵コンテの勉強ほったらかしで、しばらくの間他の動画を見まくってしまった。

まぁ、夏休みまで1ヶ月以上ある。そう、焦る必要もあるまい。


って、僕は焔燃(ホノオモユル=アオイホノオの主人公)か!


(つづく)

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