第一章 高齢者対策室 - 25 - 妻達
第一章 高齢者対策室 - 25 - 妻達
ところが、今日になって突然一縷目の住むアパートにやってきた。
それも少女妻三人そろってだ。
その理由が何なのかは分からないが、今はそのことについて尋ねるような空気ではなかった。
ユウナが一向に離れようとしないでいると、右からリーファが、左からはセレンがやってきて両足を取られた。
一縷目は後ろに尻もちをつく形でひっくり返ってしまう。
「あいたた、ちょっちょっと待って……」
くれと言いかけたところで、一旦離れたユウナも含めてリーファとセレンが同時参戦して、深い方のキスを仕掛けてきた。
色々と聞かなければならないこともあったが、さすがに今日は疲れた。
それに、愛する妻達との再開だ。三日ぶりに過ぎないと言っても、そんな理屈が通るなんてことがありえないということは、それこそ亭主としての常識である。
ここは、素直に妻達の愛の行為に応えるべきだろう。
いや、応えなくてはならない。
それは一縷目に課せられた責任でもあり義務でもある。
本当は公務員がこういう事を考えてはだめなのだろう。
だが、一縷目はこう思っている。
婚姻届というのは所詮法的な意味を持った紙切れに過ぎないと。異世界に住まう神々と三人の妻に連なる祖先。そして、血の連なる家族と親戚一同。
そういった諸々全てに誓を立てるのが婚姻の儀式である。
一度誓を立てると、たとえ死が互いを分かつとも、けして婚姻関係が切れることはない。
離婚が可能な日本とは根本的に婚姻に対する真摯さがまるで違うのである。
異世界において婚姻と言うのは、本当の意味で人生の全てをかけなくてはいけないそういう儀式であった。
だがそれだけではない。
三人の妻が一縷目を愛するように、一縷目もまた三人の妻を愛していた。
だから今だけは、色々と抱えまくっている問題は全て忘れて、彼女らと愛し合うことにする。
それになにより、向こうに行っても色々とあって子作り行為ができていなかった。
なにせ三人を同時に相手することになるので、体力をごっそり持っていかれることになるが、今はそのことも考えるのはやめておく。
どうせ明日は大変なことになることは分かりきっている。
今だけはそのことから開放されるのだ。
「なぁ主殿。余計なことは考えずに、ここは妾と一緒に風呂でも入ってゆっくりしようぞ」
耳元でそう言ったのはリーファである。
「あっ。お風呂ならボクと一緒にはいろ。ねっ」
すぐ横にいたユウナが聞きつけてすぐに反応する。
「まったく、二人ともはしたないですこと。主さまがお困りではないですか。ここは、四人でお風呂に入り、協力して主さまのお体をお流ししましょう」
セレンが折衷案を提示すると、他の二人もそれに乗っかる。
「是非もない」
とリーファ。
「はーい、はいはいはーい」
と楽しそうにユウナ。
一縷目は三人の美少女に引っ張られてお風呂場に向かう。
狭いマンションのお風呂中に四人。果たして疲れが取れるのか極めて疑問は残るが、とても楽しい時間になることは間違いないだろう。
一縷目の長かった一日は、まだまだ終わりそうにはなかった。
< 了 >
需要不足により終了します。




