Vol.1 夢のはじまり
真岡が昏睡状態に陥ったという知らせを聞いたのは、
翌日になってからだった。
その日の朝、廉はいつも通り公園の前で真岡を待っていた。
たいてい7時くらいになると来るのだが、今日はなかなか来ない。
フェンスに寄りかかって彼女の家のある方を見ていると,
しばらくして一人の中年の女性が走って来た。
「廉くん!ああ良かった、まだいてくれたのね」
その女性は息を切らしながら言った。
真岡の母親だ。真っ青な顔をしている。
「おばさん?! どうして………真岡は?」
そう尋ねると、おばさんは泣きそうな顔になった。
彼女に何かあったのだろうか。廉は嫌な予感がした。
「そ、それが……… 今意識がないの。
なかなか起きてこないから、部屋に様子を見に行って、
それで………… さ、さっき救急車を呼んだんだけど」
おばさんが震える声で言った。
次の瞬間、廉は走り出していた。
今までのどの時よりも速く走った。
真岡の家に着くと、既に救急車が到着していた。
数人の救急隊員が家の中からタンカを運び出している。
真岡だ。廉は傍に駆け寄って叫んだ。
「真岡!! おい、どうしたんだよ!! 返事しろ!!」
だが真岡は固く口を閉ざし、どんな呼びかけにも
応じない。本当に意識がないようだ。
だらりと垂れ下がった彼女の手が、それを物語っていた。
救急隊員たちはタンカを車内に運び入れると、
バタバタと慌ただしく車に乗り込んで、発車した。
けたたましいサイレンの音を響かせながら、車は
廉を残して走り去った。
あのね、笑わないでね?
………………最近、変な夢を見るの。
唐突に真岡の言っていた言葉を思い出す。
彼女が目を覚まさなくなったことと、
何か関係があるのだろうか?
廉はただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
その様子を、遠くから一人の男が見ていた。
「次は」
男はにやりと笑って、小さく呟いた。
「君の番だよ………………空木廉くん」




