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Vol.1 夢のはじまり ーintroductionー
「ほお、これは…………すごいな」
薄暗い部屋の中で、淡く光る水晶玉を
覗き込みながら女は言った。豪華な装飾が施された
円いテーブルを挟んで、向かい側には黒いローブを
まとった男が座っている。
その二人から少し離れた所に、
また別の男が一人立っていた。
「左様………これ程の逸材は滅多におりますまい。
彼らが居ればきっと我々の悲願を遂げることが
出来ましょうぞ」
黒ローブの男が興奮を抑えきれない様子でささやいた。
女は手に持っている扇を強く握りしめ、歓喜に
顔を歪ませながら言った。
「素晴らしい…………
今すぐここに彼らを連れて来なさい」
女は扇で立っている男を指差した。
「ええっ、オレっすか?!」
男はすっとんきょうな声をあげた。
女がギロリと彼を睨み付ける。
「当然でしょう、リュード。お前にしか
できないのだから。
それとも、この私に逆らう気?」
扇をパン、パン、と手で叩きながら女が言った。
「いえいえ、滅相もない。
行きます、行きますよ………」
リュードと呼ばれた男は面倒臭そうにドアを開け、
外に出た。そして、主人の命を遂行するために
歩き出した。




