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「善太朗さん、最近はみなさん色んな服を着ておられると思っていましたが……。こんなに色々な服があったんですね」
アメノヒはカーテンの端を握ったままそう言うと、しゃっ、とカーテンをしめた。シャッとshutしたって言うくだらないだじゃれが思い浮かんだけど、誰が面白がるんだ、これ。
閉められてしまったカーテンへ、僕は応えた。
「うん、そうだね」
十二単って、そんなにたくさん持てないもんね。
隣では花園さんが、軽い頭痛を覚えたのか、細い指で額を抑えていた。
「まさかワンピースもブラウスも知らないなんて……」
「そう言う子だから、少しは、ね? 大目に見てよ」
「まあね……。十二単を来てる様な子だもの。っていうか、どこで買ったのよあれ」
「うーん、呉服屋……だったかな? 覚えてないや」
「呉服屋ってああ言う服も扱ってる物なのね」
初耳だ、と言う顔で花園さんが頷く。ごめん、花園さん! 僕は今、息をする様に嘘を言った!
ごそごそと衣擦れの音が続く。続く。続く……、十二単って脱ぐのに時間かかるのかな?
篠田は僕の真後ろで、「楽しみで仕方が無い」と言う風に、固唾をのんでカーテンを見つめていた。
今アメノヒが着ようとしているのは花園さんが見立てた物だ。それが気に食わないのか、ホクトは未だに恐ろしい速さで何着もの服を捲って、アメノヒの服を見立てようとしている。
二人が打ち解けるのに、そんなに時間はかからないんだろうなあ。
ややあって、カーテンの向こうから控えめな声が聴こえた。
「あの……、着終わったんですが……。開けても大丈夫でしょうか?」
「うん、大丈夫だよ」
僕の応えに呼応するように、そろりそろりと開いて行くカーテン。
あのねえ。
カーテンの向こうは、桃源郷だったよ。




