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お狐さまのかえる場所  作者: 杉並よしひと
第四章 お狐様と帰る場所
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39

 ホクトはにやり、と笑うと、葛葉さんの拳をぐい、と押し戻すた。葛葉さんは不意をつかれたせいか、よろり、とよろけると、二、三歩後ずさった。

「そこの男に声を掛けられたから、頑張ってここまで来たんだ」

「え? 鳥居くぐれたの?」

「細かい話は後だ。今はあの犬神をどうにかしなければ」

 ホクトは鋭い目で葛葉さんを睨みつけた。凛々しい横顔に僕は問いかけた。

「ねえホクト。アメノヒは?」

「後からいらっしゃる。アメ様は戦いが好きじゃない。アメ様の到着する前に片付けるぞ。手伝え」

「解った」

 僕は霊力と言うものがなんなのかよく解らない。一応、人ならざる者である狐や犬神や、そう言った者たちが持っている不思議な『力』くらいにしか理解してない。

 でも、今のホクトが霊力に満ちている、と言うのはよく解った。むわり、と密度の大きい空気がホクトの周りを取り囲んでいるようだ。

「狐が何の用だ!」

 葛葉さんが叫ぶ。ホクトは少し嫌そうな顔をしたが、にやり、とまたさっきの表情を浮かべた。

「私たちの神社を乗っ取っておいて、何の用だは無いだろう。取り返しに来たんだ、ここを」

 葛葉さんは信じられない、と言う風に目を見開くと、

「狐なのでしょ? 結界に入り込めるはずが……」

「入れたんだ。仕方ないだろ」

 静かにそう言い放つと、ホクトは跳躍した。いつもの楽な格好から覗く腿の筋肉が、しなやかに踊った。

 静かに石畳に着地すると、もう葛葉さんの目の前だ。

「アメ様が来る前に終わらせなければならないんだ」

 そのまま、ホクトは腕を振って、無感情な拳を葛葉さんに叩き付けた。「うっ」と短いうめき声を上げて、葛葉さんが倒れ込む。ホクトは倒れ込んだ葛葉さんの服を引っ張って持ち上げると、もう一度今度は違う所を打った。声にもならない葛葉さんのうめきがこだまし、瞬間の後、ざっ、と乾いた音がする。

 圧倒的だった。さっきまであれだけ僕や篠田を痛めつけていた葛葉さんが、ボロぞうきんみたいに殴られては倒れ込んでいる。

 何度殴っただろうか、ホクトは葛葉さんを持ち上げ、だらり、と腕に力が入ってないのを確かめると、つまらなそうにそのまま地面に叩き付けた。まるで人間の体じゃないみたいに、葛葉さんの体はバウンドした。

 勝負は決した。


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