彼女が見たのは・・・
「大丈夫そうだな」
「そうね」
保健室を後にした太陽と立花は長谷川の事を話していた。
「能力の制御についても俺らが手伝えば何とかなるだろう」
「多分ね」
立花は自信なさげに言った。
「多分て・・・お前さっき慣れれば大丈夫とか言ってたじゃないか?」
「まぁ、私はすぐに使いこなせたから」
きっぱりとドヤ顔で立花は言った。
「・・・ああ、そうだな、お前はそういう奴だな」
太陽は苦笑いを浮かべて言った。
やればできてしまう天才人間。その中でもトップクラスの立花には愚問であった。
「ところでドッペルゲンガーが出現する条件だけど」
立花は突然話を切り替えてきた。
「そう言えば、長谷川がドッペルゲンガーに会った時の事気にしてたな」
「ええ、ドッペルゲンガーどのような条件で現れるのかについて考えてたの。そして、分かったわ」
「どういう条件だ?」
「分かったと言っても、私と長谷川君のデータしかないから、推測の域を出ないけど・・・ドッペルゲンガーは暗くて人気のない場所で出る可能性が高いわ」
「なるほど・・・ちなみに立花はどこで会ったんだ?」
「私は夜に家の近くの河原で会ったわ」
「なるほど」
確かに暗くて人気のない場所が出現スポットである可能性は高そうだ。
「立花が俺のドッペルゲンガーに会った時は?」
「私も詳しいことは分からないけど、ドッペルゲンガーは何も無い所から突然目の前に現れるんじゃなく、出現してから探すんじゃないかしら?目標となる人物を」
「じゃあ、立花が見たのは俺のことを探してるドッペルゲンガーという事か」
「私の推測が正しければそうなるわ」
つまり、立花の推測をつなげるとこうなる。
ドッペルゲンガーは出現したら目標となる人物を探す。そして、その人物を見つけたら、暗くて人気のない場所まで姿を見せずに、その条件がそろった場所で目の前に現れる。
「私は別に専門家ってわけじゃないから、本当にこの通りかは分からないわ」
「ああ、それは分かってる。むしろ良くここまでの推測を立てられたなと感心してるよ」
純粋に立花の発想力・想像力は素晴らしいと太陽は思った。
「でも、なんでそんなにドッペルゲンガーの出現状況が気になってるんだ?」
立花はすでにドッペルゲンガーに会っていて、能力に目覚めている。なので、ドッペルゲンガーが現れるときの事を気にする意味ははっきり言ってないはずだ。
「それは日向君がドッペルゲンガーに会わないためよ」
「え?」
自分の名前が出てきて太陽は少し驚いた。
「何でだ?」
ドッペルゲンガーに会って、能力に目覚めた立花と長谷川の二人の様子を見ても、能力がすごく恐ろしく、危険なものとは思わなかった。確かに長谷川については苦しそうではあったが、解決策はありそうだった。
なので、無理してドッペルゲンガーを避ける必要は無いと太陽は考えていたのだ。
「能力者になると日向君が大けがする可能性があるの・・・」
悲しげな表情を太陽に向け、立花は言った。
「どういう事だ?」
思わぬ言葉に眉をひそめ太陽は訊いた。
「私も能力は制御しきれてないの・・・だからたまに断片的な未来の映像が急に見えたりすんのだけど・・・」
立花は話すのをいったん止めた。
「何を見たんだ?」
太陽に急かされ、立花は次の言葉を続けた。
「日向君が大けがをして、病院のベッドで寝ているところよ」
深刻そうな顔で立花は言った。
立花の表情や声色からかなり深刻なけがだと思われる。
「それと能力が関係あるのか?」
「私の見る未来は、何もしなかった場合起こる未来なの。例えば、昨日のスパゲッティも私が何もしなかったら、日向君は妹の料理を食べることになってたでしょ?それと一緒で私が何もしなかったら確実に日向君は大けがをする。そして、さらにドッペルゲンガーが現れたことで能力者になる事も決定した・・・」
「つまり、立花が何もしないと俺は確実に能力者になり、けがもする。だから、とりあえず、一番手近にある未来から変えていこうと?」
太陽は立花の長い説明を簡潔にまとめ、立花に確認を仰いだ。
「ええ、その通りよ」
「まぁ、実際、能力には興味があったんだが、そういう事ならしょうがないな・・・分かった。出来るだけドッペルゲンガーの出現条件に合うような場所には行かないよ」
太陽の言葉を聞いて、立花はホッとした表情を浮かべた。




