やはり立花の推測は間違っていない
授業終了後、太陽と立花は保健室に向かっていた。
「どうして長谷川にドッペルゲンガーが関わってるって分かったんだ?」
「長谷川君が何て叫んだか聞いてた?」
立花に訊かれて、太陽はその時の状況を思い出す。
「いや、『あああああああああ』としか聞こえなかった気がする」
「いいえ、それと『やめろ、静かにしてくれ』とも言ってたわ」
突如あの状況になったはずなのに、冷静に叫んだ内容まで覚えているところが、さすが天才としか言えない。
「『静かにしろ』?静かだったよな?授業中だし」
「ええ、だから能力によって、聞こえるはずのない声が聞こえたりした可能性があるって考えたの」
「なるほど、確かにその可能性はあるな・・・だが、そんなのドッペルゲンガーって頻繁に現れるのか?立花はもうドッペルゲンガーにより能力者だし、俺のドッペルゲンガーは立花が見てる。そんでもって長谷川にも?」
一クラスに三人もドッペルゲンガーが現れる。こんなこと本当にあり得るのだろうか。
「確かにそれは引っかかるけど、逆に何もない状況で叫んだのなら、精神的な病気と判断して、病院に行かせるわ」
そんな会話をしていたら保健室の前までやって来た。
「長谷川~」
「長谷川君、大丈夫?」
太陽と立花は保健室に入り、すぐにベッドに横になっている長谷川の元に近寄った。
「ん?ああ・・・って何だ?この組み合わせ?」
起きてすぐ、長谷川が気になったのは太陽と立花と言う組み合わせのようだ。
「まあ、色々あってな」
「そんなことより、長谷川君はどうしたの?」
立花にとっては長谷川の疑問より、長谷川自身の事の方が気になるらしい。
「いや・・・本当に体調が悪かっただけだよ」
長谷川はそう言っているが、その様子は何かを隠しているようだ。
「本当?」
立花はジ~っと半眼の疑いの目で長谷川の顔を見て言った。
「ほ、本当だよ」
長谷川は顔を逸らして言った。
「昨日学校から帰った後か今日の朝、お前の身に何か起こったんじゃないのか?」
このままじゃ埒が明かないと考えた太陽は本題に入って行った。
それを聞いた長谷川はピクッと反応した。
「別に・・・話すようなことじゃないだろ」
「話すようなことじゃなくて、話せないことなんじゃないの?」
立花はまるで犯人を追いつめる刑事のようにじわりじわりと問い詰めていく。
「な、なんで?」
「人に言えないこと何て色々あるわ。犯罪をするとか。見ちゃいけないものを見てしまったとか・・・」
ここで立花は間を置いて続けた。
「・・・ありえない現象を目の当たりにしたとか」
これを聞いて、再び長谷川はビクッと反応を示した。
やはり、立花の推測は正しかった。
太陽は長谷川の反応を見て、そう思った。
「ははは、なんだよ・・・ありえない現象って?」
強がったように笑って長谷川は訊いたが、その笑みは完全に作られた笑みで、すごく硬かった。
「そうね・・・例えば、『ドッペルゲンガー』とか」
ついに立花は言った。長谷川を苦しませた事象の原因となったと考えられる犯人の名を。
そして、長谷川は「ドッペルゲンガー」のワードを聞いて、今までで一番の反応を示した。
「な、何なんだよ?お前ら・・・」
長谷川は何が何だかわからないと言った様子で、訊いた。
「実は私たちもドッペルゲンガーの被害にあってるの」
「厳密にいうと俺はまだ被害にあってはないが、立花はもうドッペルゲンガーに遭遇しているし、俺のドッペルゲンガーも発見されてる」
立花と太陽は簡単に自分たちは長谷川の味方であることを伝えた。
「じゃあ、遭遇した立花さんも身体になんか起こってるのか?」
「ええ、でもその前にどういう状況でドッペルゲンガーに会ったか聞かせてもらえるかしら?」
立花は訊いた。
ドッペルゲンガーがどういう状況でどういう場所に現れるかを気にしているようだ。
「えっと・・・今日の朝だったかな・・・」




