第92話 対飛竜、初の空中戦
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俺の視線の先には飛竜が飛んでいた。飛んでるんだよ?
スゴイよな、軽トラくらいのサイズの生物が飛んでるなんて!! この前見たやつより一回り大きいな。物理法則を無視してる感あるけど、やっぱりエーテルのおかげか?
【何を悠長な。あの速度だとあっという間に到達しますよ】
あ、そうだった。
「それじゃ、フウタさん、ウキヨさん。カイトさんをお願いします」
「任された! って、俺らの方に来ないかな?」
「大丈夫です。俺が直接取り付きますから」
フウタさんは一瞬変な顔をしたが、なんか納得した様だった。
「取り付く? スキルか!? それじゃよろしく!」
「すぐに救援頼むからな! それまで耐えろよ!」
「今度はスカイダイビング??? 嫌、いやぁ!!」
「ちゃんと浮いてよ!!」
「静かに! 飛竜が襲ってくるよ?」
「わ、わかった……きゃぁああああ!!!!」
フウタさんとカイトさんがウキヨさんに抱きつきながら『固定』ヒコーキから飛び降りる。彼等のスキルを合わせればかすり傷すら負わないだろう。とは思うけど……ウキヨさん大丈夫かな?
【飛竜が彼らの方に行ってますが、大丈夫ですか?】
あら? ウキヨさんの悲鳴につられたか……こっちには来ないか。それじゃっと……
俺は『固定』ヒコーキを解除し、足の下に『固定』スノーボードの様なものを出す。落ちながらだけど滑空できるはずだ……って、それでも……すごい落ちる感覚が……怖いな……ってそんな場合じゃない。両手がフリーになったからやりたい放題だ……滑空してるけど落ちてるな……怖え……
四次元収納ポーチから槍を何本か取り出し、飛竜目掛けて投げる。空中なら投げなくても動いてくれるな……よし、飛竜に突き刺さりは……何発かは当たってるな。スゴイな空中であんな動きが出来るのか! 避けてる! もう少し投げて警戒を分散させないとなっと……
ほいほいほほいっと。
スキルレベルが上がっていたので、出来るだけ投げまくってみる。
と言うより出したものを飛竜のいろんなところをターゲットにひたすら『自動追尾』させてみる……成長したなぁ……まるで雨あられのように槍を連射できるし。
完全に足止め出来てはいるな……
さてっと……ここからが本番だ。
リョウコからもらったテストプレイヤーの武器、『貫きの槍+10』を取り出し右手に持つ。左手に『ジンパチさん特製、魔法金属の槍』を持つ。恐らく二本だったらスキルの重量制限を超えて行けるはずだ!
両手に槍を掴んだまま飛竜の背中に『自動追尾』発動! スキルレベルもかなり上がったし、これで俺も一緒に移動できるはずだ!
……うおおお、飛んでいく!!! ってか引っ張られる!! ま、まじか……こ、怖い!
槍に体が持っていかれる……行けるな!! って、速度上がりすぎなんだけど!! 速い!! 怖い! これ死ぬ!! 死ぬやつだ!! なんか時間がゆっくりに感じるぞ!
『固定』解除、 ヤバい!! 身体に『弾力』発動!
ドゴン!!!
「ギェエアヤ!!!!!」
槍に引っ張られ、飛竜の背中に着地……と言うより体当たりになってるな。『弾力』が無かったら……大怪我してたな……俺、たぶん一瞬ぺちゃんこになってた……
って、いい感じで二つの槍が半分突き刺さってる!
ってか、すごい暴れるな……って当たり前か!! 背中に槍が刺さってんだもんな……
くそっ、身動きが……ステータスが上がってなかったら振り落とされてるな! くっ、片手を使いたいけど……両手じゃないと振り落とされる……こんなに暴れるの?? 『固定』で体を動かない様に……くそっ!! うごきづらい!
ってか、落ちて無いか! 飛竜さん!??? ちゃんと飛ぼうよ!!
【当たり所がかなり良かったみたいですね。飛行能力をかなり奪ったみたいです】
……え? 落ちるの??
【羽ばたけない鳥は落ちるだけ……では?】
……マジか?
俺は慌てて飛竜からジャンプし、空中に『固定』床を出して着地する。空中に止まって冷静になって初めて理解できたど……飛竜は……かなりの速度で落ちてるな。スゴイバタバタして……追加で妖魔の槍でも『自動追尾』させておくか。ポーチから十本束の妖魔の槍を取り出し雑に投げて『自動追尾』をしてみる。
あ、持ち直した。あ~でも落ちそうだな……あ、槍を避けようとして木に激突した……よけようとしても全弾直撃してるな……って、落下方向が良くないような……あっちは拠点方向だけど……みんな大丈夫かな……滑空して追いかけるか……怖いけど。
ドォオン!!! ドォオン!!! ドォン! バラバラバラ……
なんかすごい音と共に飛竜が巨大な槍に貫かれ……あ、落ちた。拠点兵器の攻撃かな?? なんか小さい線みたいのがたくさん見えたけど……新兵器か? 飛竜が森の中に消えていく……
たぶん……あれなら死んだよな……あ、討伐のログが出てきた。よかった……
『カタシ!!!』
「え?」
振り返ると遠くの方から音も無く小型の飛竜が飛んでくる。背中にはアスティナさん……だよな? かなり重武装になっているが……和洋折衷の竜騎士って感じだな。姫騎士とかそんな感じに見えるな。
『なんで空中に浮いてるの?? それがスキル?? 飛竜と戦ってた様に見えたけど??』
「……ごめん、なんて言ってるかわからない……」
飛竜が空中でホバリングをしてゆっくりと俺の周りを旋回する。
『ツウジの『通訳』のスキルのが欲しいわね……ウィンディに頼めば大丈夫か……』
「……ウィンディの単語しかわからないな……」
「カタシ、オリル、アナタ、イエ」
アスティナさんは拠点方向を指さす。
うちらに用事があった……って感じだな。
「カタシ……ノル?」
ん? ああ、飛竜の鞍が一つ空いてる……二人乗りなのか?
「ノル」
固定床を少し広げて助走をつけてジャンプする。アスティナさんの目が見開かれて面白いけど、飛竜もなんかマジ? みたいな目をしてるんだけど? かなり知能が高いのかな?
『そ、それじゃ行くわね……プレイヤーはみんな空を歩けるの??? 聞いていた話は全部本当だった? ウィンディの何時もの妄想とか誇張表現じゃなかったのか……』
「ごめん……鬼人族語……全然わからないんだ……ウィンディが日本語覚えちゃってね……」
『……『通訳』スキル持ちを連れてくればよかったわね……」
俺はアスティナさんの操作する飛竜に乗って拠点へと舞い降りていく。
既にフウタさん達もたどり着いている。どうやら無事だったみたいだな。拠点にいた仲間も落下した飛竜の周りに集まっていた。
「ちょっと! また飛竜が!!」
「大丈夫だ!! カタシが乗ってる!!」
「あれ? もしかしてアスティナ? やっほー!」
飛竜が風を纏って着地をする。かなりのエーテルを感じるから……やっぱり風の魔法みたいのを使っているんだろうな。『貫きの槍』と『魔法金属製の槍』を回収しないとか。試しに靴を『自動追尾』貫きの槍……バランスを取るのが難しいな……
ドン!!
うん、着地は出来るけど……『弾力』無いと……痛いな……練習が必要だな。
「すげぇな、空中移動できるように……」
「なんか動きがおかしくなかったか?」
「放物線じゃなくて……直線的だった様な……」
傍から見ても動きがおかしいか……紐でひっぱられる……映画のワイヤーアクションみたいだもんなぁ。
「靴に『自動追尾』かけてみたんだよね。上手く入った……けどコントロールが……」
「……何でもありだな」
「俺もスキルの使用方法……考え直した方が良さそうだな」
貫きの槍を飛竜から抜く。死ぬとエーテルを纏わなくなるから難なく抜ける。エーテルが体に入ると固くなるのか? なんかそんな感じだな。
『ウィンディ! 通訳を! 聞いているとは思うけど貿易港を守るために、ここのメンバーの遠距離攻撃兵器を借りたいの! あれ? ウィンディは?』
ウィンディードさんを探してる感じだな。周囲を見回すが……彼女はいないな。探索組はここにはいないようだな。この感じだともう少ししないと帰ってこないか。
って事は、拠点組だけで飛竜を撃ち落としたのか……すごいもんだな。
【ほとんどカタシが何とかしたようにも見えましたが……】
あーでも、ほら、大型の槍とか、散弾槍……みたいのも作ってたみたいだよ? 色々と貫通したりして凄い事になってる。
【ほんとですね……動きを止めさえすれば……素晴らしいですね】
アスティナさんが困ってキョロキョロしていると、リンカさんが彼女に近づき、片言の『鬼人族語』で話しかける。
『ウィンディ、今、狩り行った。戻る。夕方』
『あ、ありがとう。言葉上手なのね……ウィンディに来た事を知らせないとね……『万能なるエーテルよ、わが言葉を我思う命に伝えよ。風の言伝』『ウィンディ、カタシたちの拠点に到着したわ。通訳をお願い。なるべく急いで』』
アスティナさんの手にエーテルが集まったと思うと風の何かが空へと飛んでいく。魔法……なんだろうなぁ……
『アスティナ、何する? ココクル?』
『ああ、えーっと、大きな弓を借りたいのだけれども』
『弓……借り……少し待つ』
四次元収納ポーチから『鬼人族語辞典』を取り出していた。そういえば、鬼人族とのコミュニケーションは彼女がやっているから、彼女に貸しっぱなしだったんだった。
『すごい!! 聞いてはいたけど、本当に辞典があるなんて……半分は私に読める……って事は本物なのね……不思議な文字だけどどこかで見た文字ね』
『言葉、早い、わからない』
『ごめんなさい。えっと……』
何やら二人だけ……じゃなくて、普段ウィンディードさんに積極的にコミュニケーションをとっている男性陣が身振り手振りで意思疎通を図り始めたな。まぁ……辞書もあるし何とかなるか。ってか男性陣の顔が若干でれついてるな……まぁ、すごい美人の外国人が来た感じだもんな……ちょっとは気持ちがわかるな。
俺はメインの槍を引き抜き、まだ使えそうな妖魔の槍を選別して引き抜き始める。一部の槍は針金のように曲がっていた……さすがにこれは修理して使わない方が良いか。どんだけの威力になってるんだろ……スキルレベル……16か。80くらいになれば音速を超えれそうな勢いだな。レベルのカンストってあるんだろうか?
【カンスト……なるほど、限界値の事ですね。エーテルの総量以上にはならないかと思いますが】
エーテル量……なるほど、この島全体のスキルレベルの総合値は決まってるって事ね。
【そうなりますね。星全体で考えていただければ……】
……そこまで凄いエネルギー扱えるのか……恐ろしいな。
ジンパチさんとカンジさんが飛竜の鱗をコンコンしたりして色々と確かめ始めていた。
「これって……いい素材になりますかね?」
「そうですね、空を飛ぶので軽量化された上に固い……そんな感じですね」
「あの飛竜が恐れて距離を取っていいるようにみえるから……なんかあるのかな?」
「上位種……だと恐れたりするからでしょうね。においだけでなく、骨格なんかも……見分けられるんでしょうかね?」
「骨を『固定』ヒコーキの素材にしたら魔物に襲われないとかないか?」
「それも考えてみると良いかもしれませんね。被膜に関してもいい素材になりそうですね」
「皮膜で普通にグライダー作れそうだな」
何か二人の顔が……と言うより明らかに目が輝いている。この間の飛竜よりでかいから上位種みたいなもんなんだろうか?
『魔獣スカイドラゴン・ケツァルコアトルスを討伐』って出てるから、前回と違う種族扱いになってるな。見た目はそこまで……いや、違うか。
「飛行テストはばっちりだったので、時間の猶予が出来るかとは思いますが」
「あとは飛行中の安全対策ですね。……防具もしっかりと作りますか、あとは銃弾を弾けるくらいの固さだと良いのですが。ショウコさんの守りも万全にしたいですし」
「カタシの槍の速度、さらに上がってるし、槍の方がはるかに質量が高いですからね……参考にはならないような……って、引き抜けない……」
「あ、抜きますよ」
あれ? 簡単に引き抜けるんだけど……そりゃ、力は込めたけど。
「……ステータスの差がかなり出てるみたいですね」
「そうみたいだな……」
「あ~なんか昨日、ボーナス的に、ダンジョン崩落に巻き添えになった妖魔のエーテルだまりとか、妖魔の王とかを討伐した扱いになって……大量のエーテルもらえましたね」
「なるほど……それで『自動追尾』がバリスタ並みの威力になってたんですね」
「ここまでくると人間兵器だな……」
「……あれ? そんなんですか?」
「妖魔の槍の方ですが、かなりひしゃげてますよね。力のかかりすぎで鱗に当たった時に変形している感じです。以前は弾かれてただけだったと思いますが」
「なるほど……」
「射程はどれくらいなんだ?」
「測ってないので……あ、これくらいです」
俺は収納ポーチから取り出したこぶし大の石を適当な射程距離だと思われる木に向かって『自動追尾』させてみる。
コーン!!
石が大木に当たった甲高い音が聞こえる。
「すごいな」
「三百メートルを超えましたね……最初に聞いていたのと3倍近い感じですね」
「速度も野球選手くらい……とか言ってたけど、倍はありそうだな」
「時速三百キロといったところでしょうか……直線運動しているのが恐ろしいですが」
「物理法則を無視してるな」
「射程が三百メートルだと……」
「銃よりはレンジが長いから打ち放題ではあるが……」
「マスケット銃の有効射程が200メートルって言われていますが」
「ギリギリ流れ弾が痛いかもな。カタシにも銃対策鎧が必要そうだ」
……ってことは海賊……じゃなかった、人間の王国……ヴェネトア王国だったな。
三百メートル離れたところギリギリ射程から『自動追尾』連射しながら『固定』壁を出しつつ相手の動き見ながら後退……ってやれれば一方的にやれるのか。
あれ? 俺に鎧必要か?
まぁ……何か皆楽しそうだし。お任せするか。




