第81話 混乱するテストプレイヤー
テストプレイヤーのおじさんたち……いや、アラサーくらい? 高校生も一人いるか? 年齢が本当にまちまちだ。 全員ジム通いしているくらい鍛えている様にみえるな……大分現代のオジサン体形と違うなぁ
【なるほど……カタシの中ではアラサーの男性の体系はこんな感じなのですね】
まぁ、運動不足な世界だからね……普通はお腹が出て全体的に脂肪がついているのが普通かな。
【文明が発達して豊かになるとこうなるのですね】
……参考にしておいて……今後のために。
リーダーらしき盾持ちおじさんが警戒しながら武器をもって前に進み出る。ひげ面で強面だが……話し合ってはくれそうだな……まぁ、どう見てもいつでも戦闘準備OKな状態だけど……
「……ん? 嬢ちゃんは……なんだ、新規プレイヤーと組むことにしたのか?」
「……マジかよ」
「着てるものもこの世界の……鬼人族のものになってますね」
「追放したのって、ついさっきって話だろ?」
「ちょっと待って! うしろに鬼人族がいるよ!」
高校生らしき人物が後ろに控えていたウィンディードさんに気が付いた様だった。
「一緒に行動……まじか」
「……敵対勢力って話じゃなかったのか??」
「仲良さそうだよな?」
女性テストプレイヤーがウィンディードさんを凝視しながらリーダーの方に近づく。
「……考えられることですがぁ……既に鬼人族と通じていたのではぁ?」
「既にって……」
「ああ、可能性は無くはないけど……分身の術でも使ってない限り無理だろ、色々と歩きまわされてるわけだし」
「……まぁ、そうだな」
「仁島じゃないんだから、忍者みたいなスキルが使える職業じゃないだろ」
「え~そうかなぁ?」
通じている……と言っていた女性が凄い不満そうな表情をしているな……話には聞いていたけどリョウコを追い出したい系の人間……だったんだろうな。言葉遣いの割にはいい年に見えるんだけど……社会人なりたてくらいか?
「カタシくん、どうするの?」
「今なら穏便にいけそうなのだけれども……」
後ろから「ぶりっこ」の「ぶ」の字も無い女性二人にせっつかれてる感じだな……お前がやれって感じか。
仕方がない……前に出るか……いざとなったら『固定』の盾作れば大丈夫だ……だよね?
【いきなり空間に現れるスキルが無い限りは……大丈夫でしょう】
なにそれ、いきなり空間に現れるスキルって……そうか、盾を超えた先にスキル発動させれば……プレイヤー同士だと厳しいか……魔獣相手には自信持ってきたんだけどな……
「えっと、テストプレイヤーのみなさん、おげんきですか?」
「……なんだそりゃ?」
「テストプレイヤー??」
「え? 俺たちテストだったのか?」
あ、あれ? テストプレイヤーって言っては駄目だったか?
【……彼らは自分たちが「プレイヤー」だと思っておりますので。リョウコが柔軟な思考を持っていると考えた方が良いです】
あ、そうか、俺たちも新規プレイヤーとか言われてなんだそりゃって思ったもんな。リョウコも頭の回転は速かったもんなぁ……話が早いし。
「新規プレイヤーのカタシです。えっと、「人参娘」さんから話は聞いているのですが……」
「ちょっと待ってくれ! その嬢ちゃんの話は殆ど外れてるぞ!」
「待ってください。大枠では当たっているのです!」
「何を言っているのよ! 外れまくって無駄足ばかりじゃない!」
「だから、バタフライエフェクト現象でずれまくるって話になったじゃない?」
「それじゃやっぱり当てにならないじゃない! 付き合わされる身にもなって!」
「……」
……なんか相手も一枚岩……じゃないか。そりゃそうだよな。賞金目的に集まった烏合の集だもんなぁ……割とまともな思考な人もいるっぽいな。
盾持ちオジサンがやれやれと言った表情でこちらに向き直る。
「ちょっと、その前に……えっと、かたし君? その、あなた達新規プレイヤーは、鬼人族となぜ一緒に?」
「鬼人族は敵対勢力でミッションの対象なんだよねぇ……」
「敵と一緒にいる時点でヤバいわ」
なるほど……やっぱり敵と思って交流取ってない系か。
「ああ、それでしたら、傷ついてた鬼人族を助けたところ、感謝されまして、そこから交流が始まり今に至っています。現在は……助けた以上に助けられてる感じです」
俺の発言にテストプレイヤー達はきょとんとした表情になり仲間内で顔を見合わせる。
「……」
「まじか」
「会話できるから仲間になりそうなフラグだと思ったんだよね」
「鬼人族と組んで妖魔と魔獣やった方がいいじゃん? 板挟みきついっしょ」
「あ、でも、人間と鬼人族の全面戦争が始まるんだろ?」
「敵対勢力と仲間になるって王道展開じゃない?」
彼らの言葉はウィンディードさんも理解できるんだよな……俺は思わず彼女の方を見る。真剣なまなざしでテストプレイヤー達を見ていたが俺の視線に気が付き軽く微笑んでくれる。うん……かわいいなぁ……じゃなかった。思ったよりは平常心みたいだな。大丈夫か。
【……オス的思考だとそうなるのですね……】
え? あ、思考読まないでよ……可愛いもんはかわいいんだ……ってか、エロい妄想とかも読んじゃうの???
【……黙秘します】
……まじか……ちょっと……えー……この世界に来てからの……あれもこれも……気が多いわけじゃないんだ、ただまわりに美人が多すぎるんだ!
【思考が脱線しています。目の前の事に集中をしてください】
あ、そうだった。
気が付くとテストプレイヤー達はウィンディードさんの方を見ていた。男性陣は好奇の眼差しになってるな。俺が見てたからか。
「……変化前は美形なんだな……」
「ぶち切れると本当に、「鬼」になるもんなぁ……」
「俺、見たこと無いんだけど……こんなかわいい人が化け物みたいになるのか?」
「この前の砦のミッション行かなかっただろ? そん時凄かったんだ……四本腕もいたし。おかげで失敗したしさ……」
女性プレイヤーが一人だけイライラし始めている様に見える。
「……ねぇ、あなたたち……話が反れているわ……」
「……って、どうすればいいんだ?」
「おい、仁島? 逃げるなよ?」
リーダーらしき盾持ちの男性が奥に引っ込んで様子をうかがって……いや、どちらかというと逃げる準備をしていた男性の方を見る。一人だけエーテル反応が……あれ弱まってる? 最初は強かったはずなのに?
「くっ……」
不思議な人だな……エーテル反応が増えたり減ったりしている……どうなってんだ?
両手に刀らしきものを持った高校生くらいの男性が、諦めた感じで仲間に促されて前に進み出てくる。
「あ~どうすりゃいんだ? こういうのは苦手なんだ……あーっと、リョ……あ、いや「人参ちゃん」の選択は「鬼人族」と組む……でいいのか?」
「……正確には「新規プレイヤーのカタシさん」達と組む……ですね。カタシさんのグループは鬼人族と仲が良いのでそうなりますね」
「なるほど……それで、最後の壊滅的なルートを回避すると……」
「その予定です……ってか、ずるいですねぇ……」
「まぁ、だから言ったじゃないか、正直にやっちゃダメだって……俺もそっちいこっかな……」
「ダメに決まってるんだろ?」
「君、主力だろ?」
「武藤さんにいいつけるわよ?」
「はぁ……そうなんだよなぁ……くそっ、あいつどこいっちゃったんだろ……最近行動が変なんだよなぁ……」
「ガチ勢もかなりいなくなっちまったしなぁ……」
「ねぇ、それ、今はなす内容ぉ?? 情報バラしてる感じじゃない? ライバルに伝わったらどうするのぉ?」
「んだな。ここで考えてもしょうがないだろ? 今日のタスクが終わらないじゃないか? すぐ終わるからってここに来たのに」
「そうだった……」
リーダーらしき盾持ちの男性がUIを表示し、何やら確認をしている。
「えっと、カタシさん、そういうわけで我々はここから離れるわ……出来るなら敵対しないでくれるととうれしいんだが……」
「そうですね。なるべくなら鬼人族をターゲットとしないようにしてください。場合によっては我々も手を出さないとだめになりますので」
「……善処するよ。あ、フレンド登録を……」
? なんだそれ? フレンド登録? そんな機能あったっけ?
【ないですね】
お早い反応ありがとう……
「え? なんですかそれ? メールが使えるとか??」
「……もしかしてゲームの仕様が違う? 一日一通、一人に対して書置きみたいのを渡せるんだけど……160文字だけどね」
「……どこのSNSですかそれ……一人一日一回か……」
「そうそう、ものすごく不便だけど無いより良い感じだな。まぁ、人参娘さん経由で連絡すればいいか。よろしくね「馬に人参娘」さん、仕様の説明もしておいてね」
「わかりました。場合によっては返信しない場合がありますが……その時は了承したと考えてください」
「おっけ。その辺はギルドルールと同じだな。それじゃ」
「みんな集まって。テレポート発動、如月の祠!!!」
盾持ちのリーダーが懐から光り輝く石をとり出すと、彼らの周りに青白い光が包み込み空に向かって消えていった。
「俺たちも「帰還のカード」を使うとああなるのか?」
「だと思うのだけれども……一度試しに使ってみる必要がありそうね」
「あ、それなら私の「テレポート・ホームポイント」を拠点に設定してありますので、帰りおごりますよ、そろそろ再使用時間が終わりますので」
「……おごるって……」
「あ、一日、一人一回なんですよ。だからパーティを組まないと行って戻れませんし、移動したことのある祠までしか自由にテレポートできませんからね」
「なるほど、そういう仕様か……」
「祠……なんてあったかしら?」
「割と目立つんですけどね、地図のUIに表示されるんですが……ほらこれです」
「割りと多いのね」
「地図を半分くらい攻略してるのか?」
「……これに関しては引き継げなかったので、こんなもんですね」
……島中攻略してたって感じか……さすがゲーマー。
「あ、レアモンスター倒さないで……って伝え忘れたな」
「……そうか、テストプレイヤーに今日分のメッセージで伝えておきます……レアモンスターは殺すなって……」
「……大丈夫なのか?」
「信頼できる人間は何人かいますので。160字か……武藤さんが良かったんだけど別行動してるのか……」
「よく考えないと駄目ですね」
「レアモンスターが拠点の周りに出現したらやばいわね……」
「そうだなぁ、テストプレイヤー達がこぞって探しに来るのか」
「それよりもリョウコさん、テストプレイヤー達の人間関係……目的などを知りたいわ。恐らくこれからかなりの頻度で出会う事になりそうだから……」
「そうですね。用事も済みましたし、帰ったらまとめて話します。二十人はいるので……」
「結構いるのな」
「はい。ただ、ライバルギルドも含めると……百人くらいはいるんじゃないでしょうか?」
「……それもまた……」
「俺達新規プレイヤーは千人くらいだから、少ない……のか?」
「千人……先輩たちみたいのが千人……これは連絡……しない方が良いですね……あ、妖魔の砦のマークが……やります?」
「オーブの反応も近いわね……」
「退治と回収やってから戻ろうか」
「わかった」
「やりましょう」
俺たちは周囲に警戒しながら、ほかのテストプレイヤーと鉢合わせをしない様に妖魔の砦の方へと向かった。




