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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
7章 鬼姫の涙と真の勝者

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第157話 乱入者

 大きな特徴が無い、平均的な日本人らしい顔をしていた。


 彼以外は、誰もが「動けない」状態で一人だけ悠々と動いていた。

 営業スマイルの様な、顔に焼け付く笑顔をしている様に見えた。


「いやー素晴らしい!! よくぞ皆さんここまでたどり着いてくれました!! 実に素晴らしいショーだった!!」


 ちょっと待て……完全に動けない……アーゼさん! コレは何だ!??


【……どうなっているのですか?? 神の力……管理権限は使っていない……スキルだとでもいうのでしょうか?】


 ……スキル……


 これがスキル??


 目は動く……身体は……少しはぶれる……けど何かに当たる……

 身体が入れ物に入ったみたいだ。喋ろうとしても口は動くけど音が出ない?


「あ、ごめんごめん。念のためだけど「音」も消しちゃったからねぇ、せっかく盛り上がるところで、セリフを無くしたら……それは面白くとも何ともないね! 頭だけは動けるようにしてあげよう! どうやらエーテルを使った魔法も発動できないみたいだしね!!」


『案内人』は大げさな身振り手振りで舞う様にビシバシっと所作を決めて行く……

 うざい動きだな……

 ってか、そんな場合じゃない……


「なにが起きてるのっ??」

「ちょっと、全然動けない!」

「スキルも発動しない!」

「誰か動けないのかっ!」

「魔法もダメです!! エーテルの動きが無くなりましたっ!」


『……神の力か……』

『カタシの『固定』の様ね……』


 スキル……イメージしても出てこない……


 どうなってんだこれは??

 エーテルは感じられるのに発動しない??


【……くっ……】



 ピンチになっていた敵側はわかりやすいくらいの歓喜の表情に……

 優勢だった仲間達は絶望の表情へと変わっていった……



「主よ……感謝します! やられるところでした」


「助かった! ヤバかった! もう少し早く助けに来てくれよ!」

「あのー、動けないんですけど? さっさと動けるようにしなさいよっ!」


『案内人』は騒ぎ出す敵側プレイヤーの女性の肩に手を置く。貼り付けたような笑顔のままで。


「え? ちょ、ちょっと!! 何か吸われてる?? ねぇ! なに……を……」



 女性プレイヤーは慌てた表情のまま、エーテルの塵へと変わっていく……


『案内人』はエーテルの塵に手をかざす。

 エーテルの粒子が手に吸い込まれるように飲み込まれていく。


「「えっ?」」

『なっ???』



「……殺したのか?」


「仲間割れ?」


 何が起きたか、敵味方の誰も理解していないようだった……

 明らかに……『吸収』系のスキルを使ったかのように見える。


【……部屋全体のエーテルの流れが……彼に集中をしています……おかしい……】



「主よ!! 何をしているのです!! 彼女は友好的な協力者だったのに!!」


 ヨウカさんの『浄化』を食らって魔法族の姿になっている内藤が本気で驚き、叫びをあげる。


「ああ、実験……成功ってやつだな……ははっ。ここまでうまく行くとは思っていなかった……作戦通り……ってやつだな。はっははは! なるほど、なるほど……これは愉快だな……懐かしい……感情も戻っている……楽しい感情ってこんな感じだったね!!」



 あ、だめなやつだ……


 会話出来そうにない。


 このままじゃ……ちょっと待て……これじゃ一方的にやられ……


 くそっ!!

 動けっ!! くそっ!!!


 視線の先に仲間達が目に入るが、誰もが何もできない状態の様だった……

 ワールド座標でのスキルも使えない!?


 ヤバい、やばい!!


【なんてこと……これは管理者権限……では無いのですね……】


 えっ? ……これがスキルなのか??

 スキル封じ?? 動けないのも関係あるのかっ?? 


 どう考えてもこのプレイヤーの力じゃないだろ?

 チートなんてレベルじゃないんじゃないのか??



「ん? 違うよ。これは「管理者権限」を使っていない。ただの「スキル」さ」


『案内人』は俺じゃなく、サチさんの方に振り返り疑問に答える。


「ああ、そうさ。これは君達と同じ力……スキルなんだよね。これだったらこの世界に持ってこれるし、それに、このひ弱な「人」を模した身体でも使いたい放題さ!」


 サチさんは何も話していない……あれは……最初にこの世界に来る前の状態と似ている……思考を読んでいる? 『思念共有』をしているのか?


『案内人』が大げさにクルっと回転して俺を指さす。


「正解!! 「思念共有」をこの部屋全体にかけてるからね。君のスキルを使わせてもらってるよ!! とはいえ、これはもともと違うプレイヤーに渡してたスキルだったと思うけどね! ただ、僕だけが一方的に『思念共有』してるだけだけどねっ!」


 あれ? 『思念共有』って一方的に思考を読めたのか??

【……説明書にはそう書いてあったはずですが……】

 ……読み飛ばしてました。すみません。便利だったんで……



『案内人』はさらに回転して、リキさんの方を振り向き、両手で大げさに指をさす。


「大正解!!! そうさ!! 今、私はこの部屋全体のスキルを使用できる!!! スキルの名前は!! 「スキルリンク」!!! 君たちの大好きな「マンガ」にあったやつさ! 他人のスキルを自由自在に「レンタル」できる能力だ!!」



『案内人』はゆっくりと歩きながらナオエさんの顔をのぞきこむ。


「んーおしい、ちょっと違うかな……レンタルなんだけど、強制的に私のスキルになっているんだ……使えるのは私だけ。そりゃそうでしょ? 貸してるんだから。貸したら手元になくなるでしょ?」


『案内人』はリョウコの方に振り向き、大げさに頭を抱えるふりをする。

 ピエロのような、大げさな演技だ。まっとうな性格じゃないな。


「強奪? ああ、それも考えたんだけどさ……潰されちゃってね……強すぎるって。このスキルも監視の目を潜り抜けるように最後に仕様をちょっと変えさせてもらっただけさ。スキルリンクできる数の制限をとっぱらってね!!」


 ……冗談だろ……って事は……今の『案内人』はこの部屋にいるプレイヤー全員のスキルを好き放題使えるって事じゃないか!


「いいねぇ……みんな理解した様で……プレイヤーだけは。だけどね……」


 沈黙がその場を包み込む。

 敵側までもが状況を飲み込めていないようだった。



『わ、我らが主よ! 我々まで動けなくさせたのは何故ですか? 今がチャンスだと思うのですが?』


 困惑した表情の、明らかな「悪魔」っぽい種族がへつらったような笑みを浮かべる。

『案内人』は突然、発言した「悪魔」を持っていた槍の柄で殴りつける。


『……がっ!! な、なにを??』


「うん……命ある種族であり、最強種族の魔族でもある君も、まったく動けないし、打撃も通る。魔法も使えない……素晴らしい状態だ……よっと!!」


『案内人』は槍の穂先で魔族の肩口を突き刺した後、ぐりぐりとねじりこんでいく。


『ぐぉっ!!! な、なに、ぐあっ!!』


 痛みで魔族が悶絶している。

 見てるコッチが痛々しい……拷問じゃないか……


『案内人』が槍を引き抜くと、血がドバドバと吹き出てくる……傷口を触って何やら確認をしている様だ。


『グ、ぐがっ!!』


「……うん。君たち特有のバカみたいな治癒能力も停止させられてるみたいだな……エーテルを残らず吸収しているから……魔法に似通った力は全部使えない……っと。僥倖、僥倖」


『主よ!! 一体なにを……ぐっ……』


「え? 何でこんな事するのかって? ……君達が我が種族……幻魔獣族にやってきた事をやってるだけだよ? 何が悪いんだい?」


 ……幻魔獣族??


【千年以上前に『地底』の住人で迫害されていた種族になります……恨みを残したままだったのですね……管理者の人選を間違えていますね。この星の責任者を恨みたくなってきました……】



『主よ!! 何を言っておられるのです?? 幻魔獣族は滅びたはずでは??』


「……ああ……すごいな。肉体を得る事によって……怒り……そうだな。これは怒りだ。千年ぶりに感じる「怒り」だ……はははっ!!! 滅びるわけがないだろう!? あちら側に封印されちゃったからね!!」


『なんてことだ……』

『悪魔のような所業をしてきた種族……だろ?』


 あ……駄目だこれ……私怨ってやつだ……

 相手陣営も絶望の表情に変わっちゃってるし……


 管理者がチートして好き放題してる……反撃できる何かがあれば……


『四次元収納ポーチ』にすら手を入れられないし……

 リンカさんの方を見る……彼女も全く動けていない……スキルも使えないって事は……戻れない状態か……だけど彼女はあきらめた目はしていない……



 ツクヨミ君は? 彼なら戻せるよな??


「ああ、無理だよ。これ以上は戻せない……戻ったとしても恐らく、不完全にもどるだろうねぇ……」


『案内人』がツクヨミ君の脇に突然出現し、彼の顔をつかみやさしく撫でまわす。

 ツクヨミ君はキレた感じで睨み返しているが……


 見えなかった……

『座標移動』……『瞬身』……移動系のスキルか……本当に全部使ってる感じだ。


「……いい目だね。そのまなざしは好きだなぁ……だけど……事実を知ったらどうなるかな?」


『……なにがですかっ!』


「君は何となく気が付いているんだろ? やり直すたびに『瘴気』。この島全体に黒い靄が増えていることに……」


 ツクヨミ君が怪訝な顔をした後、「黒結晶」を見つめる。


「そうさ、君がやり直しを願い実行するたびに「母なる大結晶」が力を使って『瘴気』に侵されていく……その結果がこれだ!! すばらしいだろう? 一人の人間の願いをかなえるために島全体が沈むことになるんだからねっ!!」


『……えっ?』


「気が付いてなかったのかい? ああ、まぁ、千年も経てばちゃんと伝わらないかぁ……それは残念だ。君の祖先たちが「願い」すぎたら島の半分以上が沈んじゃったからねぇ……当人たちは攻撃を仕掛けてきた『地底人』のせいにしていたけどね! なんで攻撃されたかは理解してなかったみたいだけどね!!」



 アスティのお兄様が絶望した表情で『案内人』を見る。


『主よ……我々に言っていたことは嘘なのですか……』


「嘘はついていないだろう? 鬼人族のやってることを止めれば、この島の崩壊はなくなるって? どこが嘘なんだい?」


『……止めるというのは……ツクヨミたちを保護し、鬼人族との戦争を止めるという話ではなかったのですか?』


「ああ、保護するのを勧めたのは確かだね。いつでも時間が戻せるように。ただ、これ以上戻されるとさ、この島沈んじゃうかもしれないんだよねぇ……戦争したら良いんじゃない? どっちにしろ憎しみ合ってるんだしさ」


『な……あ、あなたは…最初から戦争を止める気は……無かったのですね……なんてことだ……すまない、アスティ……ツクヨミ……』


 アスティのお兄様ががっくりとうなだれる。

『地底軍』側の数人も状況を理解し始め、無言になっていく……


 あっちも被害者が含まれているような……何かつぶやいてるが、言葉がわからない……



 沈黙を破りアスティ達が怒鳴りつける。

『何が目的なの! あなたはっ!』

「この島の住民に復讐をしようとしているの?」


「ああ、違うよ……正直この島はどうでもいい……君達もね……」


 何を言ってるんだ? 復讐……じゃなかったら……まさかスキルを全部集めるのが目的とかか? 


【……否定できませんね……私たちは全部の「スキル」を把握しきれていなかったようです……】


 リョウコが困惑した表情のまま、近くを悠々と歩いて通り過ぎる『案内人』に質問をする。

「……もしかしてクリア報酬が目的ですかっ?? 地球に行きたかったの??」


「それは半分正解だね!」


『案内人』は顔を手で抱えたあと、肩をゆするように笑いだす。


「フフフッッ! 私は正真正銘、本物の「神」になるんだ。君たちが集めてくれた「スキル」を全部集めてね……おかしいと思わなかったのかい? 相手のスキルを全員が奪えることに!」


「どういうことっ??」


「……ひでぇ……」

「まじかよ……」

「なんてこと……」


 あ……こいつ、プレイヤーにスキルを持ってこさせようとしてたのか!?


【最初から意図がおかしいとは思っていたのですが……】



「ハハハッ! ズルいと思わなかったのかい? ワールド座標で「スキル」を使うと、何物にも邪魔されない力が発揮されることに!」


 確かに……強すぎるスキルだとは思った……


 こいつの目的ってもしかして……


「ワールド座標で使えるスキルを集めれば……この世界を思うがままに……エーテルが無限に湧き出るこの世界で、私は神と同等の力を得ることが出来る! 神のリソース無き今、私は創造主となり、神となる! ……そう。出来る者がいないだろうと判断されて提案が通った、君たちの世界と行き来できる力を得てね!! あちらの「知識」があれば、私にかなう相手はいない!!」


【……これが狙いでしたか……】


『案内人』はゆっくりと演説しながら歩いた後、俺の目の前で足を止める。


「……良くここまで「スキル」を運んでくれたね。現在ランキングトップの……カタシくんだっけ?」



『案内人』は俺の顔を覗き込み、満面の笑顔になっていた。

 その笑顔の奥にある目は笑っているようには見えなかった。

 同じ人間なのに別の種族……機械の様に見えた。


「いやー、楽しませてもらったよ。本当にあちらの世界の文化は違うね! こちらの世界だと考えもつかないアイディアが出てくる!! アイディア次第で、全部のスキルが化けるからねぇ!! どうだい? 自分が使ってきたスキルを使われる気分は? 手も足も出ないだろう?」


 これは……なんだ、心の奥が不安になる……震えがくる……足に力が入らないようだ……


「あは! いい顔だね!!! その顔が見たかったよ!!! それが恐怖ってやつさ!!」


 ……くっ


 俺は……何もできないのか……


 思わず目をそらしたくなる。


 だが逸らすと、すべてが終わる気がした。




「ん?」


『案内人』がよそ見をしたと思った瞬間……


 ガギィイン!!!!



 閃光と共に、金属同士がぶつかる激しい衝突音が響く。

 その瞬間、突然『案内人』が目の前から吹き飛んで消え去っていた。



 目の前には、動けないはずのアスティの後ろ姿があった。



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