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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
7章 鬼姫の涙と真の勝者

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第156話 決戦


 §  §  §  §


「座標転移」で前線の見晴らしのいい場所に移動すると同時に、凄まじい暴風が周囲を包む。

 思わず『固定』を周囲に展開し様子を見守っていると、「神の神殿」入口が氷漬けになっていた。


 アスティの広域氷結魔法か!!

 すごいけど、足場がつるつるなんじゃないのアレ?


『リョウコ!! カタシっ! お願いっ!』


 えっ?? 守れってことかっ??


「『獄炎焼滅塵爆裂破』!!!」

「『固定・城壁』!」


 カッ!  ドオオオーーーーーーーーーーーーーーーン!!!


 リョウコの凄まじいエーテルの魔法が発動すると、神殿の入り口周辺が爆発魔法で激しく炸裂していた。アスティの記憶よりもだいぶ小規模……って当たり前か、この距離であれを撃ったらこの神殿ごと吹き飛ぶか?


 今のでもすごいんだけど……大丈夫なのか? 神殿は?


【時が歪んでいる様に見えますので大丈夫でしょう】

 ……なにそれ? 時が止まった素材とかそういうの?

【ですね。神の守護というやつです。あなた達の持つ武器にもあるでしょう?】


 ……あ、あの壊れない武器たちの事か。

 ……さすがファンタジーな世界だ。



「すごいですねっ!!」

『何と言う威力じゃ!!!』

『使徒の力はオババ様以上なのですねっ!!』


 ……神殿のシルエットが変わってない……氷だけが吹き飛んで……

 神殿の石は時が止まってる……って情報は正しいみたいだな。ひび一つ入っていない感じだ。


「カタシさんっ! ログにすごい討伐の情報が流れてます!」

「え?」


「……すごいな……ざっと見ても五十人……今の魔法で消えたのか」

「ステータスもすごい上がってますね……相当な強さだったんですね……プレイヤーも聞いたことのない種族名も……」


 ……アーゼさん、これって、相手プレイヤーのステータスも上がってるよね?


【ええ、そうなります。相対的にプレイヤーのみが強化される感じですね。お気をつけてください】


 倒したからってこちらの優位性は上がらないか。


『乗り込むわっ!! みんな続いて! 作戦通りに入口脇で待機!!』

「移動を!! カタシさん! 作戦通りお願い!」



 俺は巨人が通れるかとも思える大きさの神殿の入り口に、薄い『固定』の壁を作成し、仲間と共に入口に堂々と立つ。

 するとすさまじい轟音と共に『固定』の壁の向こうが光と煙、それとよくわからない何かで一瞬に埋め尽くされる。


 煙や何やらで全く目の前が見えなかったが、『思念共有』した先から相手の居る場所が手に取るようにわかった。バラバラに展開し、各々がスキルや魔法を使ってきた感じだ。


 先日の作戦会議の予想通りじゃないか! これは……行ける!!!



 §  §  §  §


 ……時をさかのぼり、作戦会議にて……


「え? 相手がまとまっていなかったら俺たちの勝ち?」

「ええ、そうよ」


「ちょっと待ってください。普通固まってたら範囲魔法でまとめて吹き飛ばされちゃいますよ? 恰好の餌食ですよ?」


 リョウコの意見に同意だな……まとまるより散開して被害を減らす……だよな?

 範囲で攻撃できる色々なスキルや魔法、爆弾みたいなのもあるのになんで?


「散開している場合は……全体を守るべきスキルが無い。個人技だよりと言う事になるわ」


 リキさんが組んでいた腕をほどいて手を上げて発言する。

「それと、仲間のスキルの重ねがけを知らない……もしくはできない状況ってことか?」


「ええ、そうよ。相手が固まって行動、数人が組んで行動している時は、いったん引きます。相手がばらけていれば攻撃を開始」


「……普通に相手も協力してスキルを使ってくるんじゃないのか?」


「お互いを信頼していない場合は、肌を触れさせさえしないでしょうね。スキルが危険……嫌でも知っているでしょうから」


「なるほど……」

「信頼し合ってないとそんなもんか」

「ライバルですもんねぇ……」


 ……そういえばなんか……みんな普通に触れ合って色々やってるよなぁ……協力するのが当たり前みたいな雰囲気だし。


 まぁ……『思念共有』だけはやると怒る人がいるけど。


【それはそうでしょうね……デリカシーが無い時がありますからね。あなたは】


 ……え?

 そうだったのか……


「アーぜさんはなんて?」

「デリカシーがないから……って言われたんだけど?」


 なんかみんな笑ってる……

 まぁ、いいか、緊張がほぐれたみたいだし。



 §  §  §  §



 手の空いている仲間プレイヤーが「四次元収納ポーチ」から妖魔の槍の束を大量に取り出す。

 俺は両手を仲間につないでいるから……自分のは取れないんだよね……沢山あるのに。


「準備いいぞっ!!」

「3,2,1……行きます!!」


 練習通りに投げ入れる場所の『固定』の壁を開け、そこから槍の束をまとめてステータスの上がった体で塊ごとポイっと投げ入れる。

 空中でバラバラになった槍に、仲間のスキルの大量の重ねがけを行った『自動追尾』と『加速』をかけ続け、マシンガンの様に槍の雨を相手の「エーテル反応」目掛けて撃ち続ける。


 ボボボボボボ……


 マシンガンの火薬による発射音が無いとこんな音になるんだな……

 空気を引き裂くだけの音に……


【聞いたことのない不思議な音ですね……一撃、一撃が「英雄クラス」の威力のはずなのですが……】


 ガガガガッ!! バァン!!! ドスッ! ドスッ!! ドスッ!! ガァン!!!


 着弾音がうるさい。ってか、音でしか判別できないんだけど??

 当たってるよな??


「な、なんだ」

「ぶへっ!!」

「ぎゃっ!!」


『思念共有』から相手のエーテルの座標と場所が逐一送られてくる……サーモグラフィに向かってスキルを放ってる気分だ。


「反応減ってます!!」

「そのまま続けてっ!!」


 相手も反応しているのは数人いるが……ほとんどはそのまま食らってくれてるようだ。

 直接目で見ていないから心理的負担も無いな……

 ……ログが凄いけど……見ない事に……


「移動開始! 陣を移動させます! 神殿の広間の入り口に『固定』のトーチカを!!」


 相手からの反撃が終わると同時に、指示が飛ぶ。

 迷わず神殿の中の部屋……体育館よりも広いサイズの拝殿の入り口に『固定』のトーチカを築く。

 仲間のスキルの共有のおかげで神殿内の様子が手に取るようにわかる。

 相手も隠れる場所は大きな支柱と、長椅子、隣の部屋……それと「黒結晶」の裏……思ったよりあるな……


『固定』のトーチカに移動すると同時に、また魔法やスキル、物理的な射撃、おそらく爆弾と思われるものが乱れ飛んでくる。

(内部にも攻撃があります! 大丈夫ですよっ! 余裕で間に合ってます!!)

(おっけ、残ったエーテルは吸収しておく!)


 ツクヨミ君の『還元』のおかげで内側の防御は完璧……

 たまに魔法金属製じゃないなにかが歪みかかる気もするが……

 少しくらいだったらナオエさんが『治す』をしてくれるから大丈夫だろう。


 行けそうな感じだ!!


(安心するのは早いわっ!! 大きな反応がたくさん残ってる!!)


 アスティからの思念が伝わってくると同時に、全員で円陣を組み手をつなぐ……

『思念共有』とスキルの共有を行い、敵の位置情報、強さに対して誰が対処するかを決めて行く……


 各々が自分の役割を理解し決意の意思が瞳に宿った感じがする。


 みんなの準備は良いみたいだな。


「ああ! もちろん!」

「まかせとけ!」

「やりましょう!」

「正念場ね!」

『これが最後ねっ!』

『気合い入れていきましょう!!』


 前衛達が相手側に向き直り『固定』の壁の解除を待つ。

 壁の向こう側は『煙幕』が張りめぐらされ、何も見えないが相手の位置は把握できていた。


「行きますッ!!」

「任せたわよっ!!」

「応っ!!」


『固定』の壁を解除すると同時に、雨の様な槍を敵側に連射する。それと同時に勇士たちが各々のターゲットに対して高速で移動を開始し、戦闘の音が鳴り響き始める。


 一気に相手の数も減らせた……目の片隅にログが凄い速度で流れて行く。


 リキさんが相手の魔族と切り結び、完全に圧倒していた。

 ナオエさんが神殿をあり得ない動きで飛び回り、仲間の援護にまわっていた。

 キョウヤ君がとんでもない速度で相手を「狩って」いた。仲間で良かった……相手にいたら仲間がやられてたな……

 獣人の勇士達も、相手を完全に翻弄している。


 アスティはお兄様とか……武藤とリョウコ……なんか言い合いしながらだな……

 後は手はず通りに同じくらいの強さの相手と戦いながら……援護をチクチクと……ってか気が付いたら、数もこっちが勝ってるのか??


【完全にこちらが優勢ですね……あの者の姿が見えないのが気になりますが……】


(気配の様なものは感じられないわ……)

(エーテル反応も無いようじゃが……)


 俺たち後衛支援組は周囲を探知し、『固定』の壁を移動させながら「黒結晶」の方へとにじり寄っていく。

 もちろん仲間達の様子を見て……援護をしながら。


 ウィンディには特に注意を……

 ってか、ウィンディがアッシュさんと並んで大活躍してるんだけど……簡単に相手を切り伏せてるし?? 


 あれ? 死にやすいとか何処行った??


【もともとウィンディードは達人クラスですよ。相手と状況が悪いだけでしたので……】


 ……運がないタイプだったのね。


 ヨウカさんがログを確認しながら叫ぶ。


「カタシさん! 討伐ログに「セイナ」さんのハンドルネームがありましたっ!」

「え? いつの間に?」

「これで大規模魔法での反撃は無いわね!」


 懸念していたテストプレイヤーの、敵のプレイヤーもろともの、自爆覚悟の無差別爆撃は無くなったようだ。これでさらにやりやすくなった。



 光の鎧に包まれたリョウコが武藤を圧倒し始めていた。


 リキさんが相手プレイヤーをエーテルの塵へと変えていった。


 森人族の魔法が相手の魔法を防ぎ、迎撃していた。


 仲間のプレイヤー達が相手プレイヤー達を封殺し、壁際に追い込んでいた。


 オババ様が雷の魔法で相手の動きを封じ込め、命を奪っていった。


 ウィンディとアッシュさんのコンビネーションが相手を切り崩し袈裟切りにしていた。


 アスティが完全にお兄様の攻撃をいなし、封じ込めていた。


 獣人の勇士達が相手の将を討ち取り、仲間の援護に向かっていた。




 勝てる!



 これはいける!



 サチさんが周囲にスキルを全開で探知を行う……情報が思念を通して伝わってくる。

 敵のプレイヤー、敵種族がどんどん減っていく……



 ふと、視線の片隅で不自然な動きをしている仲間に目が留まる。


 キョウヤ君が相手プレイヤーを理不尽に討ち取り、ある一点を見つめていた。


「あ」


 隣にいたリンカさんがつぶやくと同時に……




 すべての動きが止まっていた。



 突然、戦闘音が鳴りやんだ。


 空中で移動したまま止まっているナオエさんがいた。

 彼女の表情も驚きに包まれていた。


 相手に止めを刺そうとしているリキさんの大剣が空中で止まっていた。


 獣人族達が相手の首をはねている瞬間、ストップモーションのように止まっている……


 リョウコが勢いをつけて武藤に切りかかろうとしていたが、その姿勢のまま止まり、纏っていた光の鎧が消えてしまった。




 えっ?



 何が起きてる??


 俺は周囲を見渡そうと、首を振ろうとするが……まるで金縛りにあったかのように動けない……目だけか動く……


 何が起きてるんだ????


 口は動く……だが声が出ない……音がしないのか???

 体中が壁に包まれたようだ……見えない壁……



『固定』みたいだ……



「あっはははっは!! 良いね!! 実にイイネ!!!!」



 黒結晶の祭壇の脇にあった扉から一人の男性が拍手をしながら入ってきた。



 あれは……


【まさかここで……あり得ない……神の力は感じられないのに!!】



 あの時、潜入しに来た時に見た『案内人』だった。


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