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(第二章は削除しました)無自覚ハイスペックくん、女優学生に拾われる。  作者: 柏木悠斗
1st. あなたは自分の大切な…。
23/32

PART.19 母の彼氏

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読者様への感謝!

ありがとう!


学校も忙しくなってまいりました。投稿ペースは3日に1話ペースでお送り致します。

ブックマークも評価もありがとうございます。

さ、これからもよろしくお願いしますッ!

 岸本裕二。

 彼は俺の母親の再婚相手だった男だ。高身長で高学歴、そしてイケメンという噂の二十代後半らしい。しかし、俺の母親に対して強い恋愛感情を抱いていたということと、母親自身が彼を気に入っていたことからトントン拍子に話が進み、母の再婚が決まったという話だ。


 しかし、俺の母親は彼が俺に対して向ける感情によって自身に向けられる愛情が減ると考え、俺を殺そうとしたというのが現在捜査で判明している。彼も理由が理由のために罪に問われる可能性があったが、まさかの自分勝手な俺の母親は…和美が独断でやったことだと言い切ったらしい。しかも、『ここで手を切らないと会社に損害が出る』と食い下がろうとした彼を無理矢理押し切ったらしい。その一連の流れは裕二の知人の小説家が短編小説にしてとあるサイトに上げたところ盛大にバズっているらしい。


 今日、俺は裕二さんと会うことになっている。勿論、相手は俺を殺そうとした人間の元カレということもあり、一人では危ないと言った友里さんとそのマネージャーと行くことになった。マネージャーさんとは今日初めて会ったのだが、フットワークの軽い人間で、しかし突然に滅茶苦茶真剣なことを言ってくる掴みにくい人という印象だ。

 彼との待ち合わせ場所は友里さんの家から数駅離れた場所にある有名な喫茶店だった。まあ、闇討ち的なモノをされるよりは随分立ち回りやすい場所だろうし、流石に乱闘騒ぎにはならないだろう。

 マネージャーさんは友里さんと何か耳打ちしていたが、俺には聞かれたくないことだという話らしいので、俺はパソコンを開き、バイト先の要件の資料を纏めていた。


(ん?この案件、三行目のここ、このままいけば会社の損害になるんじゃないか?ちょっと問い合わせてみるか。)


 遠山社長には個人的に恩がある。友里さんと過ごすようになってからも色々と反感や問題はあったはずなのに、今でも変わりなく重要な案件を持ってきてくれている。

 彼にはもう少し恩返しをしないといけない。仕事ぶりで返せるなら簡単だが、それだけでは足りないかもしれない。よし、確か社長は一人で晩酌をするという話を聞いた。赤ワインが好きだという話をどっかで聞いたこともあるし、アルバイトのお金も溜まってきたし、友里さんに頼んで少しお高めのワインとそれに合うおつまみを郵送で送ってもらおう。会おうにも、社長にはなかなか会えないし。



 パソコンに向かいあって数分。仕事があらかた片付き、問題点の洗い出しとスライドの簡潔さについてよくよくチェックしてまとめて会社のパソコンの仕事用ファイルに転送した。そこには社長と個人でしか開くことが出来ない書類の受け渡しができるようなシステムが出来ている。

 …これ作ったの、社長が直接スカウトしたプログラマーって話だからな。ちょっと頭のネジ数本吹き飛んでると思う。


 顔を上げると目の前には茶に染まった紙と少し赤みがかった瞳を持ったイケメンが立っていた。


「やぁ。影山健也君かい?」

「…そうと言えば、何というつもりですか?」

「いや、敵対するつもりはないよ。僕はただ、君と仲良くなりたいだけだからね。ぶっちゃけ、警戒されるのは当然だしそんな事実は受け入れられるけど、流石に大人気女優とマネージャー様に居られたら少しだけやりづらいこともあるさ。」

「…友里さん。」

「うん。ちょっと離れてるね。柏田さん、ちょっと席を空けておくね。」

「分かりました。(…後で事務所に問い合わせて給料上げてもらおうかしら?)」


 マネージャーさん…基柏田さんは俺の後ろの席についていて、友里さんは少し席を外した。


「まさか、そこまで仲良くなっていたとはね。完全に目と目で会話してたじゃないか!」

「まあ、友里さんには恩を感じていますし…。」

「最近、それ以外の感情も生まれたとは思うけどね。」

「ッ!?ゴホッゴホッ!?」


 いきなり発せられた言葉が意外過ぎて思わずコーヒーを噴きだしてしまいそうになり、慌てて飲み込んだら気管に入り、むせる。


「おや、図星かい。」

「いくら何でも本人がいない場所でそういうのは不味いかと。マネージャーさんもいらっしゃるわけですし。」

「いえ、私のことはお気になさらず。…まあ、私も冴島さんにいろいろと質問だの相談だのされますし。」

「おや、彼の件ですか?」

「まあ、そうと言っておきましょう。」

「そうですかそうですか。」

「…。」


 何だろう…。この二人意気投合して俺をからかってきているんだが。本当にやりづらい…。


「で、良い感じに緊張は解けたはずだし、情報交換とでも行こうか。あ、柏田さん?も聞いておいて。一応、僕は当事者だからね。一応、ここであったことは録音してくれても構わないよ。」

「分かりました。」


 そこから、裕二さんの眼に少しだけ歪みが生まれたように見えた。涙なのかもしれない。しかし、それを今言うのは野暮だろう。彼の話に、俺は耳を澄ませ、聞き逃さないようにした。


「で、まずは僕と和美があった時のことだね。まあ、単純にこっちが和美に惚れてプロポーズしたってだけなんだけどね。」

「大分端折った感じがしますね。」

「これが事実だからね。…で、和美はプロポーズを受けてくれたわけだけど条件があったんだ。彼女には一人息子が、…健也君がいた。僕としては君とも仲良くしたかったから彼女の提案を受け入れ、健也君とも家族になるということを受け入れたんだ。」


 裕二さんは明るい表情を保ったまま、どこか遠くを見るような目をして俺を見る。

 その眼は、俺の心情を読み取ろうとしているのか少しだけ鋭く見えたし、大きくも見えた。力強く見えたのかもしれない。けれど、それの意味を知ることは出来なかった。


 …本当は、意味なんてなかったのかもしれない。


「…では、冴島さんから伺っていた、健也君を殺そうとしたという話は?」

「あれについては僕も事件があってから知ったんだ。当時の僕はあろうことか、被害者の健也君よりも取り乱してしまっていただろうし、事実、慌てふためいていたし健也君の安否が心配で仕事にも身が入らなくて相対したんだ。で、和美から電話がかかってくるわけだ。…話を聞いてみると、『あなたに求められているのは私のはず。健也は要らない…。』なんて言葉が聞こえてきた。…それを聞かないふりをして僕が話しかけると、『私は自宅やその近くに火を点けて回った。ただの重罪人よ。…出来れば、すぐに結婚の話はなかったことにして。まだ、イベントなんかについては話が付いていないし、今からなら損はないはず。』ってね…。」

「「…。」」


 俺の母親…和美は最後は俺に対して強い嫉妬心を持っていたのか。けれど、ただの火事に見せかけようとしたにしては辺りに火を点けまわっているという事実はどうにも矛盾を孕んでいる。


「結局、食い下がったものの彼女は会社にも被害が出るかもしれないと言ってすぐに電話を切ってしまったんだ。その後に届いたメールには分かれることに関して書いてあった。…失恋は前もしたことはあったけど、まさかこんなことになるとはね?…はは、誰も思わないでしょ…。流石にここまで酷いのかって笑っちゃったよ。」


 そんな空元気で浮かべた笑いはもう俺らのことを見ていない、遠くの誰かに向けたものだった。和美へのメッセージがあるのかもしれない。


「…その感情について、自分から何か言えることはありません。実際、失恋だとかそう言った感情とは無縁の生活を送ってきたので。」

「結構、言うねぇ…。容赦の欠片もないのかな?」

「いえ。絶賛片思い中の相手はいますし、恋愛の辛さは知ってはいるつもりです。…ひとまずこの話は置いておきましょう。で、和美は結局は自分が起こした火事の責任を他の人に飛び火するのを防ごうとしたようですね。」

「そうなるね。…実の母親を呼び捨てとか初めて見たよ。それで元マザコンなのかい?」

「マザコンの定義は正直不明ですが、当時は確かに仲が良かったことは認めます。…今は否定したいですけどね。」

「まあ、命狙われたわけだしね。…じゃあ、次は健也君。君からも色々聞こうかな!」

「ええ。捜査で教えてもらった証言と一致していますし、自分は必要以上に貴方を警戒してしまっていたらしいです。ごめんなさい。」

「いや、普通警戒しない方がおかしいからさ。まあ、銃を持った強盗を素手でどうにかできる人に喧嘩売ろうなんて気にはならないし。何だかんだで君が投げ飛ばした荒川元記者、あれでも柔道や空手の有段者だからね?それ一方的にフルボッコにできるって君どんなスペックしてんの?チート?」

「チートツールは使ってないですね。いじめっ子殲滅しようとして陰で筋トレと体幹トレーニングと瞬発力を鍛えまくっていたせいでしょうか?」

「…いや、そもそも人外染みた動き出来るの普通におかしいから。今度生放送で聞いてみたら?『僕は人外ですか』って。」

「それ酷くないですか?さりげなく俺を貶してません?」

「さりげなくじゃないから。大真面目にだから。」

「…ちょっと殴っていいですか?」

「ハハハ。テレビ越しにでも失神する視聴者がいるの分かるわ。…めっちゃ怖い。」

「うわぁ!?ってか、笑ったまま眼だけ死んでるように生気無くすのってどうやるんですか?」


 こいつら…マジでマイペース過ぎないか?クラスメイトの男子を思い出すぞ。



 結局、この話は友里さんが戻ってきたことで終わった。裕二さんはこの後も連絡を取り合うことがあるだろうからと連絡先を教えてくれた。ありがたく使わせてもらおう。その内、いろいろと相談することもあるだろうし。


 裕二さんは帰る直前、多くの女性に声をかけられていた。それを見ていたら友里さんが少しふて腐れていた。


「…。」


 ここでの解が分からない。でも、多分…。


 俺は手を伸ばして友里さんの手を掴んだ。離さないように軽く力をこめ、駅まで歩いていく。


 いつの間にか、友里さんの機嫌は良くなっていた。正解だったみたいだ。

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