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ダブルデートへ行こう。

「なあ、ヴァイスはエレナが好きなのかい?」

「なんだよ、いきなり……あ、お前そこはだめだって!!」


 授業も終わり部屋でチェスをしているとハロルドがいきなりぶっこんできた。こいつリア充になったからって恋愛脳になってない? のたれ死ねばいいのに。

 ちなみにティアとハロルドが付き合い始めたことはもはや周知の事実だ。リーザが悲しそうな顔をしていたのが目に入ったがこればかりは仕方ない。おそらく今頃メリルやエリザベスが慰めているだろう。



「どうなんだろうなー、可愛いし一緒にいたら楽しいし、付き合えたら嬉しいだろうなとは思うな」

「なんとも煮え切らない返事だねぇ。そんなんだからゾンビみたいに死んだ目って言われるんだよ。君のあだ名知ってるかい『デットマン』とか呼ばれてるらしいよ。はい、これで僕の勝ち」



 ハロルドいう通りチェックメイトだ。勝てねえな。てかなんで変なあだ名ついてんだよ。ドラゴン倒したり成績優秀だったりしてんのにひどくない? ちなみにリチャードは「ドラゴンスレイヤー」とか呼ばれている。倒したのシオンなのにな。まあ、そんなことはどうでもいい。



「で、慣れない恋バナを振った意図を教えてもらおうか? どうせ、ティアとのデートが冒険者ギルドのクエストばっかりとかそんなオチだろ」

「そうなんだよぉぉぉ、なんかおしゃれなところに行きたいのに全然興味持ってくれないんだ。だからダブルデートで君たちをくっつけるって言う口実でデートできないかなと……」

「なんか色々たいへんだな……」



ハロルドが情けない顔をして俺に泣きついてきた。まあ、そうだよな。ラブコメとは違って恋愛って付き合ってからが本番だもんな。俺は経験ないから詳しくはわからないが。しかし、応援した手前仕方ないから力を貸してやるとするか。決して俺もエレナとデートしたいなぁとか思ったわけではない。

 俺がうなづくと、ハロルドは待ってましたとばかりにティアの部屋に向かっていた。青春しているねぇー、うらやましい限りだ。ドラゴンになった転生者も現れないし、俺も青春に付き合うとしよう。




「ごめーん待った?」

「むっちゃ待ったわ。ボケ!!」

「うう……すまない……あとで事情を話すよ」

「まあまあ、ヴァイスも落ち着いてください。せっかくの休日何ですから楽しみましょう」



 冒険者ギルドの前で遅れてきた二人に俺は文句を言った。いや、一時間も待たされてみろよ。スマホとかはないので、相手がいつ来るかわからないというのは不安になるものだ。まあ、エレナと一緒なのは嬉しかったけどな。



「しかし、待ち合わせ場所がここかよ……」

「へへー、わかりやすいでしょ」



 俺のぼやきにティアはどや顔で返事をした。今日ってダブルデートだよな? クエスト行くわけじゃないんだよな? ハロルドの苦労が少しわかった気がした。彼の方をみると俺の気持ちを察したのか悲しい目をしながら苦笑していた。

 気を取り直して街で人気のカフェへと向かった。店のセレクトはハロルドだ、多分部屋に会ったデートスポットの本を参考にしたのだろう。カフェの前はかなりの人がいたが予約していたためあっさりと入ることができた。やるじゃんハロルド。好感度が1上がった。なんてな。

 内装はまるで貴族の家で使われているかのような豪華な飾りのついた家具でまとまっている。上品な制服に身にまとった店員も教育がしっかりしているようで、俺達を席までエスコートしてくれた。

 店内の客のほとんどはカップルである。うげ、シオンもいやがる。赤髪のメインヒロインと一緒に談笑してやがる。そういえばゲームでもあったな。店を出てもう少しデートした後酔っ払いに絡まれるが、見事に倒しなんか盛り上がってキスをするのだ。CG回収をしたから覚えている。くっそ、後をつけて魔法を撃ってやりてぇ。



「ああ、あれはシオンさんとアイギスさんですね。お二人はやっぱり付き合ってるんでしょうか?」


 俺の視線に気づいたのかエレナが二人をみながら言った。好奇心が顔からあふれ出ているのは恋バナだからだろうか? 女性は恋バナが好きだな。


「あれ? エレナは二人と知り合いなのか?」

「はい、アイギスさんとは女子寮で結構話すんです、時々部屋でお茶とかもしますよ」

「あー、あんた達はシオン達の事を避けてるもんね、シオンはわからないけどあの子は結構いい子よ。他の国の冒険譚の話とかもしてくれるし」

「まあ、僕らは色々あったしねぇ……」



 入学式で喧嘩したし、これからあいつらに絡んで退学されるからな。正直関わりたくないというのが本音である。

 まあ、あいつらの話はどうでもいい。俺は注文してきた紅茶に口をつけた。多分よくわからんけどいいお茶を使っているのかな。



「で、ヴァイスとエレナ、あんたたち実際どうなのよ。付き合わないの? しょっちゅう二人で出かけてるじゃない?」

「ティア!? 君は何を言って……あついぃぃぃぃ!!」



 ティアの言葉で俺は紅茶を吹き出してしまった。とっさに正面のエレナではなく隣のハロルドの方を向いた自分を褒めてやりたい。エレナも顔を真っ赤にしてむせていた。さすが女子というところか俺のように吹き出したりはしなかったもののノーリアクションとはいかなかったようだ。



「いきなりなんなんだよ、お前は!! 俺達は単に孤児院にいっているだけだ」

「そうですよ、ヴァイスはいい友達ですよ!!」

「なんだ、つまらないわね」



 ぐはっ、エレナの一言は俺に致命傷を負わせる。あれ、時々いい雰囲気になったりしてなかったような気もしていたがきのせいだったようだ。エレナをみるとさっと目をそらされた。そうだな、俺達はいい友達だよな。



「ハロルドちょっと話がある。一緒にトイレに来い」

「ああ、そうだねぇ……わかっているよ」



 顔を真っ赤にしているエレナと、なにやらニヤニヤしているティアに断りをいれて、俺達は席を立ちトイレへと向かった。



「お前ティアにどう話をしたんだよ!!」

「君に言ったとおりだよ。二人がいい感じだからもうちょっと意識させたいねって……まさかあんな真っ向から聞いてくるとはねぇ……」

「どうするんだよ、エレナとむっちゃきまずいじゃん。あいつ戦闘も脳筋だけど恋愛も脳筋なのかよ」



 苦笑しているハロルドを俺はにらみつけた。だがこいつは相変わらず笑ったままだ。ティアといい、ハロルドといい完全に楽しんでない?



「まあ、でも効果はあった気がするよ。風よ」

『で、実際のところどうなのよ? まんざらでもないんでしょ?』

『それはまあ……普段は頼りないですがいざというときかっこいいですし、意外と優しいんですよね。でもあっちがどう思っているかわかりませんし……』

「え……これって可能性あるのか……? ってお前その魔法って……」



 出たー盗聴魔法!! エレナ達の声が聞こえる。でもこの話俺が聞いちゃまずいやつでは? でも魔法の腕前ハロルドの方が上だしなー、止められないなー。実際はハロルドをぶん殴ればなんとかなるけど、おしゃれなカフェで暴力沙汰はまずいからな。決して続きが聞きたいわけではない。

 続きを聞こう耳をすましたが急に魔法が途切れた。ハロルドも驚いた顔をしていた。何がおきたか考えている俺たちに店員の一人が近寄ってきた。



「お客様、当店では魔法の使用は禁止されております」

「あ、すいません」



 そりゃあそうだよな、店内で魔法なんて使えたらパニックおきるよな。わりかし貴族も出入りしているようだしそういうのに対する防衛もあるのだろう、てかどんな魔法使ったかばれてないよな。俺達は店員に謝り席に戻ることにした。んっ? なにやら服を引っ張られる。あれ、まさか罰金かな?



「見たところお互いいい関係だと思われます。あとは勇気を振り絞って一押しですよ」



 うわ、絶対さっきの話聞かれてたじゃん。くっそはずいわ。俺達はあわてて席へと戻った。



「おかえりなさい、ずいぶん長かったですね」

「まあ、色々あってな……」



 心なしかエレナの顔が赤い気がする。え、やっぱり俺の事意識しているのか……いや、勘違いかもしれない。前世を思い出せ、くっそゲームばかりしててろくに女の子と絡んでなかった。役に立たないな前世。



「追加の品でございます。当店の名物でお客様には特におすすめでございますよ」



 うお、さっきの店員じゃねえか。俺もハロルドも追加注文なんてしてないぞ……テーブルに置かれるものを見て俺は絶句した。大きいハート型のコップに海のような済んだ水色の液体が入っておりストローが刺さっている。なぜか二つも……これってカップルが飲むやつじゃ……店員をみるとニヤッと笑い去っていた。え、まじどうすんだよ、これ。二つ置いてったって事はティアとハロルドと俺とエレナの分か……これ俺が一個全部飲んじゃだめかな。



「ああ、僕が頼んだんだよ、なんかおいしそうだったしね。じゃあ、僕たちはいただこうか……」

「はっ、あんた何言ってんのよ……あー、でも残すのも申し訳ないわよね」


 ハロルドが空気を読んでドリンクに口をつけた。ティアも顔を真っ赤にしつつストローに口をつけ始める。なんだこれ、なんだこれ。俺にどうしろってんだよぉぉぉぉぉぉ。



「その……もったいないですし私たちも飲みましょうか……もちろんヴァイスが嫌じゃなければですが……」


 ドリンクを呆然とした顔でみていたエレナがうつむきながら言った。え? 俺の聞き間違いじゃないよな。


「え、ごめんよく聞こえなかった」

「わざといってませんか? 一緒に飲むのか飲まないのか答えてください」



 今度は少し声を荒げながら言う。恨めしそうにこちらをみていのるが可愛い。俺とエレナも飲み物に口をつけた。別に一緒に飲まなくてもよくない。順番に飲めよ。なんて野暮なこというやつは誰もいなかった。そしてなんか不思議な雰囲気のまま俺達は店を出た。会計の時に普段は少ししか払わないチップを多めに払ったのには特に意味はないがあえてこう言おう「店員さんありがとう」





「晩御飯は私が選んだわ!!」

「お前まじか、この流れでお前まじか!!」


 どや顔をするティアに俺はつっこみをいれた。がやがやうるさい店内。客層のほとんどはあらくれものといった感じのおっさん、所々で響く怒声。世紀末かな? そうティアが大好きな冒険者ギルドである。さっきまでのいい雰囲気が台無しだよ!! なんか夜景がきれいな店とかにしろよ!! てか食ってばっかりじゃねーか!!



「なんでよぉ、ここ料理も美味しいじゃない、あっ、それください」


 不満そうにするティアに俺達三人は溜息をついた。ハロルドの気持ちが本当にわかる一日だった。


「まあ、ここ料理はおいしいですしいただきましょうか……なんかこういうほうが私たちって感じがしますしね」

「そうだねぇ……これが僕たちだね」


 確かにな、こういうのが俺達だな。ちょっと恋愛の雰囲気にやられて過ぎていた気がする。気を取り直して注文をしようとすると扉が荒々しく開かれた。

 店中の視線が集まる先に現れたのは血まみれの冒険者だ。



「大変だ……街の近くにオークが……、まだ仲間がいるんだ……誰か助けてくれ、金なら払う……」



 静寂につつまれた店内に傷だらけの冒険者のとぎれとぎれの声が不思議なほど響いた。


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ラブコメはこれで終わりで、次回から話が進みます。


この作品せっかくなんで第1回スターダストノベル大賞に応募してみました。賞をとれるとは思いませんがこれをきっかけにいろんな人にみてもらえたら嬉しいですね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ついに主人公にも春が...なんだか寂しいなぁ。 主人公にはいちゃいちゃする二人を見守りながらずっと独身でいてほしかtt((殴 殴るのおせーよ。 いやーにしてもハロルドがもうかわいそうでかわ…
2019/12/20 17:51 名無しのハテナ
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