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異世界救世譚―差し伸べるは救いの手―  作者: 明月
シア、異世界に立てり
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報酬と約束

 帰り道がてら、俺はついぞ聞けなかった強個体について質問してみた。その種族の中で特に秀でているものが強個体だとは聞いたが、それ以外の情報が無いことで後々困るかも知れないしな。

 そう、これから先またどこかで出会うかもしれない。その時のためにも情報は必要だろう。


――例の如く聞いた話を端的に纏める。


 どうやら対象に知性、もしくはそれに近しいものがあった場合は強個体の判断材料になる、と。他には一般の個体と比べ身体的特徴が異なって発達しているなど“目に見えて分かるもの“でも判断するらしい。今回の判断材料は「体色が赤」という事と「不意打ちを防いだ上、即反撃してきた」ことだ。


 ……そもそも通常個体なら不意打ちの時点で十中八九倒せるらしい。


 もし駄目だったとしても、シュタルク曰く二撃目は確実に当たる。だが、奴が即反撃してきた時点で普通ではないと判断した。それに体色は茶色や人肌に近い色が普通らしく赤色の肌はそれだけで強個体の判別材料になるとのことだ。



 ――門番に挨拶しつつ、入国チェックを済ませた俺たちは真っ先にギルドへと向かう。


 扉を開きシュタルクとともに受付へと歩いて行くと、相も変わらず女性の受付が対応してくれた。やることは二つあるがまず先にゴブリンの討伐報告からだな。


「――いらっしゃいませ。ご用件をどうぞ」

「依頼の達成報告を頼む。これが用紙で……シア、魔玉を出してもらっていいか?」

「わかった」


 言われた通りにバッグから魔玉を取り出してシュタルクに渡す。バッグの性質を説明した時についでに魔玉も入れてくれと言われたから、俺のバッグには数十個のゴブリンの魔玉が入っているというわけだ。これから先同じようなことが度々あるだろうな。



 ――結局のところ報酬としては半銀貨一枚となった。


 パーティーでの受注のため銅貨五枚を各々が受け取る。一応それを考えてか半銀貨一枚ではなく銅貨十枚を受付嬢が差し出してくれたためスムーズに事は進んだ。

 ……問題は次だ。強個体の報告をするのだが、どのような手順で行うのかということもその報告の重要性も知らない。――これはシュタルクに一任して俺は後ろで黙っているしか無いな。


「――他にご用件はありますか?」

「あぁ、強個体が発生した。討伐は既に完了しているがな」

「――! 強個体の報告ですね、畏まりました。討伐は終了したとのことなので、その討伐した強個体の種類と討伐した場所を報告して下さい」

「討伐した場所は"黒森"で個体種は――オーガだ」

「オーガ?!――っと失礼しました。……それは確かですか?」

「あぁ、何なら現物を出すことも出来るぞ」



――不意の出来事で思わず声が大きくなってしまったのであろう。


 その声を聞いた周りのギルド員たちがそこかしこで「オーガだって?」とか「二人しかいねぇよな」みたいなことを言っているのが耳に入って仕方がない。目立つのはあまり嬉しくないなぁ……

 そんなことをひそかに思っていると、心なしか申し訳なさそうな顔をした受付嬢が話を再開する――


「……大変失礼をいたしました。しかし、現物を出せるというのはどういう?」

「あぁ、さっきの魔玉を出したバッグがあるだろ? あれの中に入ってる」

「しかしあの大きさでは到底入りそうには――! もしや魔道具の類ですか?」

「だろうな。――まぁ本人もよく知らないらしいが」



 ……結局のところ「ここで出しても意味が無いですね」と一蹴され、ギルドに付属している魔獣や猛獣の安置施設に置くことになった。


 この場所……安置施設という所は「外で狩ってきたがまだ解体、加工していない猛獣」の類や、いろいろな種の強個体を「研究」のために置く場所らしい。そこの職員にオーガを見せると――


 ――強個体で間違いないと太鼓判を押された上に大層喜ばれた。オーガの強個体はそもそもの個体数が少なく研究が頓挫していたらしい。



 それを含めてか、オーガを討伐したことに対する礼金として俺達は銀貨ニ枚を受け取ることになった。勿論二人に分けるから取り分は銀貨一枚だな。

 その銀貨を受け取る時に、もしあのオーガが森の奥から出てきてしまい、この国近辺をうろつくようになったらそれこそ被害が出てしまうところだったと感謝された。


 奴に出会ったのはそもそも俺が原因だ。だが間接的に人を救うことになったかもしれないと思うと、本当に良かったと思う。一人の犠牲も出ずに済んだのだから万々歳だ。……まぁ、その報酬だとしても、一日で結構な額を手に入れた気がする。


 が、別に金は手に入れて困るものでもないし此方としては有り難い限りだ。帰りに飯でも買って帰ろうか!



「――さて、報告も終わったしシュタルクはこれからどうするんだ?」

「流石に疲れたしさっさと帰ってゆっくりするさ。それにリーベとラインを安心させねぇとな、また俺が怪我しねぇかと心配してたし」

「そうか、だったら俺も帰るかな。それと――」

「ん? まだ何かあるのか」


 俺はシュタルクに言わねばならない事がある。確かに奴を倒したあとお互い様だということに成った訳だが……まだ俺は納得できていないんだ。


「今日は本当にすまなかった。いつか埋め合わせをしたいんだが……」

「まだ言ってんのかよ……よしわかった。じゃあ俺からの願いを二つほど聞いてくれ」

「あぁ……でも俺の出来る範囲で頼むよ」

「簡単なことだ――これから先も俺たち家族と仲良くしてくれ。そうだなぁ……それと気が向いた時にラインと遊んでやってくれないか?」

「あぁ、お安い御用だ!」




 ――その後シュタルクと別れた俺はまた串焼きを買って帰路につく。


 まだ少しだけ手に残っている、命を奪う感覚をこれから先も忘れまい。……そう思いながらも、疲れを孕んだ足取りで家へ向かうのであった。


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