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20/20

第20話 その途中

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

会社と家の間を、ただ行ったり来たりしていただけのような日々でした。


大きな出来事が起きるわけでもなく、

誰かが劇的に変わるわけでもなく、

それでも少しずつ、何かが動いていた気がします。


第20話、

最後まで、よろしくお願いします

牛乳を買って帰ると、リビングではテレビが流れていた。


妻はソファに座って、マグカップを持っている。

悠人は風呂上がりなのか、髪が少し濡れていた。


「買ってきた」


「あ、ありがとう」


キッチンへ牛乳を置く。


冷蔵庫を閉める音が、静かに響いた。


「ご飯、温める?」


「ああ」


上着を脱いで、椅子に掛ける。


電子レンジの音が小さく鳴る。

テレビでは、知らない芸人が大声を出していた。


悠人が冷蔵庫を開ける。


「それ、明日のやつ」


妻がすぐに言う。


「あ」


牛乳パックを戻す。


そのやり取りを見ながら、少し笑う。


「何」


悠人がこっちを見る。


「いや、別に」


そう返して、席につく。


一人で食べる夕飯だった。


それでも、リビングにはテレビの音があって、ソファには妻がいる。


味噌汁を飲む。


湯気が少しだけ眼鏡に当たった。


「説明会、来週だっけ」


妻がマグカップを持ったまま言う。


「ああ」


「早いね」


悠人は、もう半分眠そうな顔でテレビを見ている。


「ちゃんと乾かしなさいよ」


「はいはい」


そんなやり取りが続く。


食事を終える。


食器を流しへ運ぶ。

水を流す。


リビングへ戻ると、悠人は「先寝る」と言って立ち上がった。


「ああ」


「おやすみ」


妻の声が続く。


悠人が部屋へ戻っていく。

足音が遠ざかる。


テレビの音だけが少し残る。


妻がソファでマグカップを持ち直す。


「疲れた?」


「んー、ちょっと」


そう言って、小さく笑う。


時計を見る。


いつもの時間だった。


立ち上がる。


上着を取る。


「歩いてくる?」


妻がそう聞く。


「ああ」


短く返す。


玄関へ向かう。


靴を履こうとしたところで、後ろから声がした。


「……私も行こうかな」


振り返る。


妻は少しだけ迷ったような顔をしていた。


「ちょっと涼しいぞ」


「知ってる」


小さく笑いながら、上着を取る。


そのまま二人で外へ出る。


夜の空気は少し冷たかった。


駅前の灯り。

遅い時間の車の音。

遠くで光る再開発の白い灯り。


並んで歩く。


特に会話はない。


それでも、不思議と気まずくはなかった。


コンビニの前で、妻が立ち止まる。


「甘いの食べたい」


「プリンだっけ」


「違う、シュークリーム」


小さく笑いながら、店の中へ入っていく。


その背中を見ながら、自分も後を追う。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

最初は、会社と家の間を行き来するだけの、小さな話を書くつもりでした。


けれど書き続けるうちに、変わらないように見える毎日の中にも、少しずつ揺れているものがあるのだと、自分自身感じるようになりました。


読んでくださった時間に、心から感謝しています。


今後、この20話を全4話に再構成・加筆修正した「完全版」を、noteへ掲載しました。

もしよろしければ、そちらでも『会社と家と、その途中』を読んでいただけたら嬉しいです。


最後まで、本当にありがとうございました。

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