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止まった心に沁みた旋律

誰だって、いじめや嫌がらせを受ける可能性はある。

学校では毎年、暴力の実態調査を行い、予防教育もしている。

けれど、不思議なことに、その数はなかなか減らない。


いじめられるのに、特別な理由なんてない。

僕がいじめられた理由も……ただ、人と違っていただけだ。


初めて差し伸べられた手。

けれど、僕はその手を避けてしまった。


ぎこちない空気の中、最初の授業が始まった。

ヘユンは本を開き、授業に集中している。

僕も何事もないふりをして授業を聞くふりをしたが、

意識はずっと彼女に向いていた。


一時間目が終わり休み時間になると、

勇気を出して声をかけようとした。

けれど……思うようにはいかなかった。

休み時間のたび、彼女の周りにはすでに友達がいて、

入り込む隙間はなかった。


このまま、僕らは離れていってしまうのだろうか――

そんな不安が胸をよぎった。


いつの間にか六時間目。

この授業が終われば家に帰る時間だ。

その前に、どうしても謝りたくて、僕は本の片隅に文字を書いた。

不器用で歪んでいるけれど、心を込めて。


ヘユナ、怒ってる?


僕の文字を見たヘユンが、ちらりと僕を見た。

そして笑いながら、その下に返事を書いた。


なんで?


僕は首をかしげながら、さらに書き足す。


怒ってるんじゃないの? 挨拶しても返してくれなかったから。


彼女は首を左右にかすかに振った。

それだけで、僕はほっと息をついた。

思わず笑みがこぼれる。


「今日も公園で会う?」

ヘユンが尋ねる。

「今日はだめ。ギター教室があって……」

僕の答えに、彼女は少し残念そうな顔をした。

その表情が、妙に可愛らしく見えた。


その日、僕らは授業が終わるまで教科書に落書きをし、

互いに質問を投げ合って遊んだ。


チャイムが鳴り、ヘユンは友達と帰っていった。

掃除当番ではなかった僕は、足早に家へ向かう。

ギターを背負い、音楽教室へ向かう道。

心が少しだけ軽くなっていた。


ギターを弾くとき、音楽を聴くときだけは、

まるで別の世界に入り込んだような気分になる。

旋律とリズムがひとつになって耳に染み込むと、

広い野原で風に身を任せ、舞い踊るような――

空の雲まで一緒に揺れているような気がする。


僕にとって音楽とは、そんなものだった。


音楽家になるつもりはない。

「趣味が仕事になった瞬間、楽しさは失われる」

父の言葉がふとよぎる。


コードを押さえるたび、指先に硬いマメができるけれど、

この時間だけは何も感じなかった。

先生は穏やかな表情で僕を見ていた。


授業が終わり、僕は新しい友達の話を持ち出した。

「先生……運命みたいな感じがするんです」

「どうしてだい、ドユナ?」

「誰かが先に僕に近づいてくれたのは、初めてなんです」


誰かと心を開いて話せる――それは幸せだった。


教室を出た僕は、もしかしてと思い、公園へ向かった。

人影のない公園。前後に揺れるブランコがひとつ。

そこにヘユンが座っていた。


今日は近づかなかった。

ただ、その場でじっと見つめていた。


運命は、大げさなものじゃない。

自分がそう信じれば、それが運命だ。

決まっていることなんて何もない。これから自分で決めていけばいい。


僕は一歩、踏み出すことにした。

もう、彼女を失いたくなかった。


月明かりの下、花びらが風に舞い、踊るように散っていく。

ヘユンはひらりと舞い降りた花びらを手に取り、ぎゅっと握った。

昔から、落ちてくる花びらをつかんで願い事をすると叶う、

そんな言い伝えがあった。


彼女は目を閉じて願い事をした。

その願いは、なんだったのだろう。


目を開けると、僕も花びらを握りしめ、目を閉じていた。


いつの日か、僕らの願いは叶うのだろうか。


「今日来られないって言ってたじゃん。塾だって。」

「終わって帰る途中……もしかしてって思って。」

僕はブランコの隣に腰を下ろした。


「今日はお父さんが迎えに来ないの?」

「うん。今日は仕事が遅くなるんだって。」

彼女は少ししょんぼりした表情を浮かべた。


「なあ……毎日、公園で遊ばない?」

「毎日?」

「うん。お互い、状況も似てるし……なんとなく。」

「いいよ。毎日遊ぼう。」


僕らは月明かりの下で小指を絡め、約束した。


それから、雨の日はカッパを着て、

晴れた暑い日には日陰に座ってアイスを食べた。

時間がゆっくりと流れているように感じた。


春が過ぎ、夏がやってきた。

厚い服は軽くなり、夏休みが近づく。


だが、その前に事件が起きた。

夏休みまで、あと二週間というある日――


「ねえ、あんた、ドユナと仲いいの?」

誰かがヘユンに尋ねた。

うつ伏せになっていた僕は、驚いてそっと耳を澄ます。


「うん、仲いいよ? なんで、ドユナがどうかした?」

彼女はむしろ堂々としていた。


僕はこれまで、自分が受けてきたことをすべて彼女に話していた。

だからこそ、彼女は僕を隠そうとはしなかった。


質問した子は、言葉に詰まって自分の友達のところへ戻っていった。


放課後、公園で僕は今日の出来事を話した。

「怖くないの? あいつら、君までいじめるかもしれないのに……」

ヘユンはふっと笑った。

「そんなの、何が問題なの? 私、気にしないよ。」

そして逆に、僕を慰めた。


「ねえ、ドユナ。今週末、予定ある?」

「特にないけど……なんで?」

「お母さんが病院に友達を連れてこいって言ってて……連れて行きたいの、あなただけなの。」

「友達、多いじゃん。」

「ううん。ただ、私が連れて行きたいのはあなただから。」


頬が熱くなった。

「……うん、行くよ。」

「その日、お父さんが迎えに来るから心配しないで。午前十一時、公園でね。」

僕は黙ってうなずいた。


そして、運命の土曜日。

今日は、ヘユンのお母さんがいる病院へ行く日だった。

今回もよろしくお願いします

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