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それぞれの思惑

王城の執務室に差し込む夕陽が、重厚な机の上で開かれた一通の手紙を柔らかく照らしていた。


「どうしたんだい?メルフィーナ?」


フェーター王は、親しみを込めた声で女王に声をかけた。執務机に向かい、手紙を読みながらため息をつくメルフィーナ女王の表情には、普段の凛とした佇まいからは想像もつかない疲れが滲んでいた。


「勇者ジャスティン...いえ、今は冒険者ダーウィンと名乗っているのですが」メルフィーナは手紙から視線を上げ、「彼と定期的に連絡を取り合っているのですが、やはり神聖国からの刺客は後を絶たないようです」


フェーターは眉をひそめた。「となると、やはり古文書の記述は正しかったということか。女神の勇者召喚は、同時に一人しか存在できない...」


その言葉の重みは、部屋の空気を一層重くした。つまりは、現勇者であるダーウィンが命を落とせば、神聖国はまた新たな勇者を召喚し、その力を掌握できるということ。それは何としても避けねばならない事態だった。


「彼をどうにか匿うことはできないのだろうか?」フェーターは机に置かれた地図に目を走らせながら提案した。


メルフィーナは首を横に振った。「難しいですね」彼女は立ち上がり、窓際へと歩みながら続けた。「何より、彼自身の自由意志も尊重したい。それに...」彼女は一瞬言葉を切り、「下手に匿えば『勇者を監禁している』という口実で『聖戦』を仕掛けてくる可能性も否めません」


フェーターは無言で頷いた。どちらの選択肢も理想的とは言えない。勇者を守れなければ新たな勇者が召喚され、再び女神の意のままに動く強大な力として立ちはだかることになる。かといって、強引な保護は別の形での戦争を引き起こしかねない。


「ただ、このまま手をこまねいているわけにもいきません」メルフィーナは決意を秘めた表情で振り返った。「私たちにできる限りの支援は必要です。まずは、影ながらの護衛を増やすことから始めましょう」


「ああ、それには同意だ」フェーターは立ち上がり、メルフィーナの隣に立った。「私からも精鋭を派遣しよう。表立っては冒険者ギルドのメンバーとして動いてもらう」


二人の視線は、夕暮れに染まる王都の景色へと向けられた。どこかで自由を求めて戦い続ける元勇者の身を案じながら、彼らは静かに夕陽を見つめ続けた。



――妖精王国フィーンライヒ


エルフの宮殿内にある玉座の間。緑色の結晶で装飾された広間に、銀髪のエルフの王が座していた。その傍らには、黒衣をまとった宰相が控えている。


「竜の国と女神の国か...実に度し難いものだな」

王は深いため息をつきながら、水晶球に映る二つの国の様子を見つめた。その瞳には数千年の歳月を経た者特有の深い叡智が宿っている。


「数千年前、竜が支配していた時代を知らぬ者たちからすれば、仕方のないことなのかもしれませんが」

宰相が補足するように言葉を継ぐ。その表情には僅かな軽蔑の色が浮かんでいた。


「ドラゴンロード、あの化け物が目覚めたということは、今代の守護竜に適性があるということなのでしょうか」

宰相の声には明確な警戒心が滲んでいた。


王は氷のような青い瞳で遠くを見つめながら答えた。

「ドラゴ・エクス・マキナか。小癪にも機械仕掛けの守護竜とはな」

その声には古代種族としての誇りと、新興勢力への複雑な感情が混ざっていた。


「我らアルフ族の科学力からすれば、未だ原始的な段階に過ぎんが...その発展スピードは尋常ではない。やがては我らにとっても脅威となるやもしれん」


宰相は一歩前に出て、低い声で進言した。

「早急に叩いておきますか?」


しかし王は首を横に振る。

「今手を出せばドラゴンロードを刺激することになりかねん。それに...」

王は思案げに言葉を選びながら続けた。

「マキナが使用する空間魔術、あれは我らが何世紀もかけて研究してきても到達できなかった重力魔法だ。可能ならその理論を手に入れたい」


宰相は優雅に一礼し、「かしこまりました、我が王よ」と応じた。その瞳の奥には、新たな知識を得ようとする古代種族特有の強い探究心が光っていた。


部屋の中に静寂が広がる。水晶でできた巨大な窓からは、妖精王国(フィーンライヒ)の美しい街並みが一望できた。そこには高度な魔法科学文明を築き上げた古代種族の威厳と、新興勢力への複雑な感情が漂っていた。


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(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク

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