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第8話

昨日、初評価を頂きました。

誠にありがとうございます!

ーーああ、何て気持ちが良いんだ。心が清々しさで満たされていく!


 心を込めて雑巾がけをする。俺が掃除をした場所は、まるでワックスをかけたかのようにピカピカだ。


 自分で磨いた床や柱がたまらなく愛おしい。思わず頬擦りしたくなる。というか実際に頬擦りしている。


 整理整頓スキルを授かった俺は、掃除が生き甲斐の一つになった。


 丁寧に、繰り返し丁寧に床を拭く。すると、世間の垢で汚れてしまった自分自身まで清められる気がしてくる。


 魔法儀から六ヶ月後、俺はナホーティアの屋敷に移り住んでいた。


 リハイヘヴン家に仕える貴族の次期当主は、十五歳から屋敷に住み込むことになっている。


 リハイヘヴン家の次期当主にお仕えすることで、主従の結束を強める習わしである。


 俺やリミュ、リーフェの父親も、十五歳から数年間住み込みでテングレス様にお仕えしていたそうだ。そのせいか、この四人は今でも仲が良い。


 ちなみに、リミュ、リーフェも既にリハイヘヴン家の屋敷に住んでいる。


「流石はお坊っちゃま! 私が教えたお掃除の技術を完璧にマスターされておられます!」


 雑巾がけの体勢からふと見上げると、メイド服に身を包んだおっぱいがしゃべっている。


 じゃなかったキャロンだ。この角度からだと、顔が爆乳に隠れて見えない。


 言い忘れていたが、なぜかキャロンも俺と一緒についてきた。キャロンの強い要望らしい。どういうわけか昔から、俺の父親はキャロンに頭が上がらないのだ。


「キャロンのお陰だな。もうナホーティアの調理は終わったのか?」


「いえ、まだ続いているようです。ナホーティア様直々に料理を振る舞って下さるなんて、感激ですね!」


 ナホーティアは使用人に対しても分け隔てなく親切に接している。貴族には大変珍しいことだ。


 召使の子供が風邪を引いてしまい、徹夜で看病をしたこともあるそうだ。


 また、領地が洪水の被害に見舞われた時は、自ら炊き出しの料理を作り農民に振る舞ったこともある。


 抜群の可愛さと相まって、リハイヘヴン家中の人がナホーティアのことを愛しており、皆から天使様と呼ばれているのだ。農民達からは生き神様扱いをされている。


「じゃあ、俺もナホーティアを手伝ってこよう」


 キッチンへ行くと、ナホーティアは一人で調理を続けている。どうやら、野菜や魔物の肉を切っているようだ。


「ごめんね、ごめんね」


 小さく、何かに謝る声が繰り返し聞こえてくる。


 覗き込んでみると、野菜や魔物の身体に包丁を入れる度に「ごめんね」と言っているようだ。そしてしばしば祈りを捧げている。大方、感謝のお祈りでもしているのだろう。


ーーあの聖女っぷりに反して、罪深いナイスバディ。やっぱりナホーティアたんは最高ですな。


 聖女の身体つきのギャップにハァハァしていると、ナホーティアがこちらに気づいたようだ。


「あ、ケイブくんだ! お掃除いつもお疲れさまっ! お料理もう少しで出来るから待っててね」


「いやいや、そんなに急がなくていいよ。料理は楽しみにしてるけどね」


 ナホーティアはまた「ごめんね」を繰り返しながら調理を続けていく。


 すると程なくして突然「あ!」と叫んだ。


「しまった、オークさんの耳を忘れちゃったぁ。ミミガーを作ろうと思ったのに」


ーーオークのミミガー。あまり食べたいとは思わないな……


 表情には努めて出さないように心がける。


「どうした? 材料が足りないのか?」


「うん。メインディッシュなの。どうしよう~」


ーーしかもメインディッシュかい。


 しかし、他ならぬナホーティアの頼みである。命だって捧げても惜しくはない。


「よし、俺がいっちょ狩ってきてやるよ」


「ええ? でもオークさんって、中堅の冒険者さんでも戦うのに苦労するんだよ?」


「だーいじょうぶ。俺のスキルに任せなさい」


「ケイブくんのスキルって……」


 ナホーティアが何か言いたげだが、返事は聞かずに外へ出る。たまには良いところも見せたいしな!


ーーーーーー


 リハイヘヴン家の敷地で、オークのナワバリになっているところがある。人を襲うので定期的に駆除しているのだが、繁殖力が強く根絶が出来ていない。


 一度、自分のスキルを全開で試してみたかったので丁度良かった。


 魔法儀から半年の間、俺はキャロン、リミュ、リーフェとともに魔法とスキルの特訓を続けた。


 整理整頓スキルによる想念の集中は、魔法の上達に絶大なる効果をもたらしていた。


 魔法は使用者のイメージ力が全てである。整理整頓スキルは雑念を一切排除し、魔法の使用に最適なイメージを誘導してくれるのだ。


 その結果、魔法の威力は達人レベルになっているらしい。キャロンが素で驚いていたのが印象的だ。


 ただ、その分燃費が悪いのが課題である。魔力量は並レベルなので、大技を連発すると直ぐにエンストしてしまうのだ。


 普段はキャロンから無理は禁物と言われている。しかし、一度は誰の目も気にすることなく自分の実力を試してみたいと思っていた。


 オークの集落に到着すると、早くも五体の群れを見つけた。


 豚の頭部に人型の身体。手には棍棒や木材等の武器を持っている。人の女性を見つけるとさらって犯す習性があるので、かなり危険な魔物である。


ーー先手必勝!


 魔法粒子を身体に纏わせるイメージを持ちながら群れに突っ込んでいく。


 オーク達も、俺の存在に気づいたようだ。掌を向け、雷魔法を発射する。


「雷撃!!」


 轟音と共に、掌から青い稲妻が発射された。到達速度が早く、オーク達は何も出来ずに消し炭になった。


 オーク達だけでなく、周囲の木々も消滅している。残った残骸には火がつきメラメラと燃えている。


 雷撃は俺が開発した雷魔法だ。射程は五メートル程。およそ六十度の角度の敵を攻撃する。


「しまった。加減を間違えたな。今度は頭が残るようにしないと」


 すると、雷撃の音に気づいたのか、奥からオークの群れが現れ突進してくる。


 すかさず迎撃体勢を取る。次は遠距離攻撃だ。


「雷光!!」


 直径十五センチ程の青い稲光が飛んでいく。射程は約三十メートルだ。範囲を狭めている代わりに飛距離が抜群に伸びている。


 先ほどから中二病っぽく技名を連呼しているが、魔法とはイメージの世界。はっきりと口に出して詠唱をした方が想像力が深まり、威力も増すのだ。


 オークの群れに対して、連続して雷光を飛ばす。あまりの高火力に、オーク達は何も出来ずに次々と蒸発していく。


 オークの群れが殲滅出来た頃には、俺の前方三十メートルには何物も残らなかった。


 キャロンいわく、ここまでのレベルに至るには才能の有る者でも数十年はかかるそうだ。


「さすがに、少しくたびれたな」


 肩で息をしながら、オークの頭部が残っていないか確認しに行こうとすると……


 なんと、前方からさらに数百体のオーク達が突進して来たのだった。

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