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Last episode ****

誰が、そんなこと、わかっただろう。


未来のことなんて、想像すらつけないのに。











______私は、夢を見ていた。


「ママ、このパソコンを買いたいんだけど」


自分にどこか似た女の子が、パソコンの画面に映った最新型ノートパソコンを指差して、私に向かって言った。


私はというと、私のことをママと呼んでる時点で違和感を感じてて、


どう反応すればいいかわからないまま、なぜか知らないけどこんな言葉が口から溢れた。


「パパに聞いて、いいっていうならいいよ」


私がそういうと、その子はスマホで『パパ』に電話をかけ始めた。


「あ、パパ?買っていい?…え、だから、パソコンだよ!


…あ、うん、わかった」


電話を切ったその子は、私に笑顔で「ママ、いいって言ってた!」とか言った。


…そして、その子のスマホの通話履歴が見えた。


なぜか私はそこに書いてある相手が誰だかわかっていた。


でも、それが本当なんて、どこか信じたくなかったんだと思う。


「あのさ、パパって、龍也って名前?」


「?何言ってるの?


そうだよ、沢渡龍也って名前じゃん」


そんな言葉を聞いたことを確認した後、


リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!


「…あれ、私…」


いつも登録してる目覚ましで目が覚めた。









「あれ、北川、今日すっげー不機嫌じゃね?」


「うるさいわ、ふじもん」


今朝見た夢に、どうして今好きなふじもんが出てこなかったのか。


何で、友達になって間もない沢渡さんが?


「悪夢だ…」


沢渡さんが夢に出るなんて、正直、いい夢とは言い難いと思うんだよね。


確かにイケメンだし、友達だし、人としては好きだよ?


でもさ、そういうのと違うじゃん。


そんな踏み込んだ仲になりたくないのにさ。


…夢って、深層心理が出るっていうじゃん?


そんなの、嘘でしょ。


「はぁ…」


「北川、幸せ逃げるぞ」


「ため息くらい出していいでしょぉ?」


ふじもんが心配そうに私の顔を覗き込む。


ちょっと可愛い。


…よし!ちょっと元気出たかも。


好きな人の顔を見ると元気になれるよね、わかる。


「あれ、昼の時間にいるなんて珍しいね」


げ。


今、一番会いたくない人の声が聞こえるんだけど。


「沢渡さんこそ、どうしているんですか…」


「今日はちょっと珍しくここの部長に頼まれごとしてて」


本当に珍しいな。


何で、こんな時に限ってこうやって会うことになるかな、普通!?!?


「元気なさそうだけど、大丈夫?」


あなたのせいです!!!


…なんて、言えるわけでもないし、


こうやって近づかれると余計に動揺するから来ないでくれないかな。


「大丈夫ですから用事済ましてきたらどうですか?」


「あ、そうだね」


そう言って、沢渡さんはさっさと私の元から去っていった。


去るのをふじもんも隣で見ていて、


「…北川、沢渡さんと何かあったのか?」


そんなことを言われるくらい、態度がバレバレだったって知って、私は自分の席に戻った後に1人で顔を赤くしていた。




____________



_______



_



「…ってさ、そんなことがあったのを思い出してね」


「あら、その時から旦那さんのこと好きだったんじゃないの?」


「今思うとそうなのかもしれないけど…」


私の息子、文哉を寝かしつけた後、桃菜と2人で桃菜宅でのんびり昔話で盛り上がっていた。


「でもさ、当時はクズモンが好きだったわけだし?」


「そういえばそうだったね。私とみおりんでかなり反対したの、今でも覚えてるわ」


「あの時は本当に見る目がなかったというか…」


あの時、クズモンがずっと好きって思ってなくて本当に良かったと思う。


「そういや桃菜のところももう少ししたら生まれるんだよね?」


「そうだよ、後期研修医終わって専門医取るタイミングで第一子計画立ててたから、ちょうどいい感じに産休に入れるってわけ」


桃菜って何でも計画的だな、昔っから。


「男の子?女の子?」


「女の子なの〜!もう、私の好きな服を着せまくって親バカになる予定だから〜」


女の子なんだ、いいなぁ…


「そういえば私が昔夢に出てきた子は娘だったんだよねぇ…


あの夢、正夢かと思っていたのに生まれた子は男の子で結構ショックだったんだよね〜」


そりゃ男の子でも可愛いよ?と付け足して、私は文哉の顔を思い浮かべる。


「まあさ、夢なんて深層心理のようなもんだし。


正夢とか、科学的に証明された物でもあるまいし。


なーにが『予知夢』よ!?そんなことあるかっつーの!」


医学を学んでる桃菜からしたら、そんなの信用にも値しないことだってのはわかってるけどさぁ、


「でもさ、予知夢とか、ロマンがあって良いじゃん」


「…なっつんは理系のくせに結構ロマンチストだよね」


うるさいわ!!!!


…と、そんなことを言っているうちに、チャットに連絡が入る。


「誰?」


「んー、パパからだね」


「旦那さん、マメだねぇ」


「そんなことないよ。今日の食事担当が龍也さんなだけで」


最近、文哉の前では龍也さんのことを『パパ』って呼ぶ習慣があるから、ついついパパ呼びしちゃってる。


私も文也の前では『ママ』って呼ばれてるからか、


お互いが『男女』として、というより『母親と父親』として、にしか見えてないんじゃないか、とかこっそり心配してたりする。


「じゃあ、夕飯前に帰る感じでおけ?」


「うん、あと1時間くらいで帰るわ」


今時計の針が指している時間は4時。


桃菜の住んでる所から私の家まで大体1時間だから、逆算してそれくらいで良いでしょ。


「まだ1時間あるし、おやつでも食べながら続き話そ!


私、妊婦だからジュースとかお茶しか出せないけど」


「うん、ありがとう」


私はそう返して、その後も話が盛り上がった。








「ただいま〜…」


時刻は6時半。


事故が起きてたところがあったから、渋滞に遭って、疲れた…


文哉も途中で起きるし、なだめるのにどんだけ苦労したか。


「おかえり、文哉、ママ。今日は文哉の好きなリゾットだぞ〜」


龍也さんがエプロン姿で私たちを迎えてくれるのが、また…


「萌える…」


「?なんか言った?」


文哉を抱いた龍也さんは完全に『パパ』の顔だった。


桃菜と最後に話した内容を思い出す。


『最近、旦那さんに前よりムラァ…とかしない?


出産して1年くらいすると、ホルモンのバランス的にね、産んだ直後の賢者モードが終わるんだよね。


本当にならないの?』


うう…


正直、今めっちゃムラムラしてる。


何あの可愛いエプロンは!?


一緒にお揃いで買ったとはいえ、龍也さんが着ると最高に素敵なんだけど。


っていうか、妊娠前にホルモンバランスが戻ったってことでしょ?


妊娠前って、こんなに欲情してたっけ。


…いや、そんなことないでしょ。


それに!今頑張ってパパを頑張ってる龍也さんに対してこんなこと思ってるのは失礼!!!


「ママも手をきちんと洗って、一緒にご飯食べよう」


「…うん、ありがとう」


そうよ、どこの猿だよ私!?


そんなことを思いながら、私は洗面所へと走った。








「文哉〜、良い夢見るんだよ〜」


ふぅ…


文哉の頭を手で撫でながら、小声でそう呟いた。


さっきまでパパと遊んで楽しかったからか、興奮して寝てくれなくて。


8時前くらいには寝つかせようとしてたのに、知らぬ間に9時半。


本当、子供って大変。


こっそり部屋から出て、キッチンでホットミルクを作る。


「文哉、もう寝た?」


後ろから龍也さんが私に言う。


「うん。やっとって感じかな?パパと遊んでもらえたこととか、桃菜の家に行ったことで興奮してたからね」


そう言ってるうちに、レンジで温めていたミルクが温まる。


「疲れた?」


「まぁ…それなりに?」


疲れてるはずだけど、出産して2ヶ月くらいして仕事に復帰した私からしたら、そんなに大変ではなかった。


出産直後の地獄に比べたら、まだ可愛いもんよ。


それに、パジャマ姿で、いつもはかけない眼鏡姿で後ろに立ってることを考えると、またムラァ…としてるのも事実で。


正直、疲れとかそういう次元の問題じゃないよね。


ホットミルクを飲みながら、龍也さんの身体を舐め回すように見る。


「…何?」


「あ、えっと、パパも疲れたでしょ。


私は久しぶりに休暇取って、桃菜に文哉を見せる意味もあって連れて行ったし、楽しかったから良いんだけど、」


「今の俺も『パパ』呼び?」


「あ…えっと」


私の顔に近づいてくる。


「…龍也さん」


「文哉がいないんだから、名前で呼んでよ」


「…うん」


こうやってゆっくり話せたのはいつぶりだろう。


私が毎日のように会社に行って、仕事をバリバリ進めて。


龍也さんも、部署は違うけど同じように仕事をしてる。


家族揃ってご飯も食べるし、一緒に寝てるけど、こんな風に落ち着いていられる時間はなかったような気がする。


飲み終わったマグカップを洗う。


洗い終わったのを見計らうかのようなタイミングで、いや実際に見計らってたんだろうけど、私の腰に腕を回される。


「今日も奥さんが可愛いから困るな」


「何、いきなり言うの…」


知らぬ間に体の方向を変えられてて、龍也さんと向かい合う形になる。


「キスして良い?」


「…いっつも、ベッドで無断でキスするくせに」


私の言葉なんて、聞いちゃいないんだから。


黙ってキスして、そのまま抱っこされる。


「ちょ…」


「続き、しよっか」


そのまま一緒に寝ているベッドに向かう。


正直、ムラムラしてたし最高にタイミングがいいのはわかってる、


わかってるけど!!!


求めてるものが違うと思うの!!!


「…龍也さん、今日はゴムなしで、ダメ?」


今、ベッドに寝かせられた私とは対比的にゴムを出そうとしてる龍也さんに対して、私はそう言った。


「…え?」


「…これ以上何か言っても、何も言わないからね!」


女の子が欲しいな。


そんなことも、恥ずかしくて言えないけど、


とにかく龍也さんは私の言いたかった意味を汲み取ってくれて、そのまま私たちは暗闇の中で、


久しぶりに、直接体温を感じ合った。








「ママ、起きて。もう朝だよ。


…夏美、起きて」


………ん、


…確かに、目を開けると、もう外は少し明るくなっていた。


知らぬ間に着ていたパジャマを見ながら、回転が遅くなってる頭を無理やり働かせる。


…あ。


「パパ!?今何時!?」


「7時半だよ。今日は会議だっけ?


保育園は俺が行くから安心して」


「…うん、ありがとう」


そういえば今日の10時から会議じゃん。


いつも家を出るのは8時半だけど、今日は流石に8時には出たいところ。


急いでいつもの化粧をする。


「夏美」


玄関前でパンプスを履いている時、後ろから龍也さんの声が聞こえる。


「何?」


「今日も、する?」


こっそり私に耳打ちする龍也さんなんて…


「反則なんだから…!」


そんなこと言ってる場合じゃない!


間に合わない!


そんなことを思いながら、歳にも似合わず小走りどころか全速力で走る準備をした。








この後の未来なんて予想できない。


私たちの“家族”としての生活は、これからも楽しく過ごしていくのかもしれない。


これ以上の物語は、私たちの秘密ということで。





fin.

完結しました!

ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。

このらの影響で時間ができたので、新作を余分に書くかもしれません。よろしくお願いします!

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