106話 伏魔迷宮~決戦~
召喚術で呼び出された数多の魔獣が絶え間なく挑戦者へと襲い掛かる魔塔「伏魔迷宮」
低級の雑魚から食物連鎖の上位に位置する強敵、これまで様々な種類の魔獣が両チームに大自然の猛威を振るってきたが……それら全てを統べる者、この迷宮の主と呼ぶべき強大な魔獣が、この第四階層に存在する。
チーム「奇なりし絆縁」の目的は、初めから迷宮の最奥部――この大扉の先に座するであろう迷宮の王の討伐であった。
その魔獣を倒して得られる点数は、なんと2000点。僅かな数しか配置されていない高得点の魔獣でも最大で100点やそこらしか無い事を踏まえると、破格の点数である。
単純な討伐効率で勝てないなら、一発逆転の大量得点を狙うしかない。いくら相手のチームが魔獣狩りを専門としている者達でも、制限時間内にこれだけの点数を稼ぐのはほぼ不可能だ。
「ごめんなさい。私が調べた限りでは、過去十年以内に行われた『伏魔迷宮』で、最上階を完全攻略sしたチームの記録はなかったわ。だから……」
「どんな敵が待ち受けているか分からない、って訳ね。上等よ」
長い「若き魔道士の祭典」の歴史を振り返っても、最上階の迷宮の王が倒されたのは、僅か数回。特に近年はぱたりと記録が途絶えてしまっており、それだけの点数が与えられるのも納得だ。
わざわざ「獣狩リノ導師」の元に魔獣を擦り付けたのは、こちらの狙いを読んだ彼らが先に第四階層に辿り着いて迷宮の王に挑戦するという、万が一の可能性を排除するためだった。この大扉は一度入ったら最後、全滅するか部屋の主が倒されるまで開かない仕組みになっているからだ。
だが、これらは全て、これから挑む迷宮の王の討伐に成功するのを前提にした作戦。結局、最後に道を切り拓くのは、自分達が培ってきた力だけなのだ。
道中、無茶な強行軍を敢行した上に、第三階層の骨が折れる魔獣ともそれなりに戦ってきた。彼らも少なからず消耗している。
此処が勝負の分かれ目にして、正念場だ。
「先ずは、慎重に敵の能力を測りつつ仕掛ける……行くぞ」
そう言って、先頭のアクトは剣を構え、万全の戦闘態勢をとりながら扉にそっと触れた。
ごごごごごごごご……直後。アクトの接触に反応して何らかの魔法が発動し、重厚な大扉が軋みを上げて徐々に開いていく。
怪物が描かれた模様が縦へ二つに割れ、小規模の地響きを伴って大扉が開き切った先は……吸い込まれるような闇が広がっていた。
入口周りは広間の照明があって辛うじて視認出来るが、その奥には光が一切無い。どれ程の広さなのか、何が潜んでいるのかも分からない、無限の暗闇がどこまでも続いている。
「——突入ッ!!」
アクトの号令を皮切りに、チーム「奇なりし絆縁」は迷宮最奥部へと足を踏み入れた。
もう後ろを気にする必要は無い。迷宮を突破する際に組んでいた直線的な陣形を解き、今は前衛をアクトとアイリス、後衛をコロナ、リネア、ローレンとシンプルな陣形だ。
何も見えない最奥部の中へ駆け込むこと約20メトリア。彼らがある程度の距離を進むと、開き切っていた大扉が独りでに動き出し、数秒で再び閉じてしまった。
これで外部との通路は完全に遮断された。踏み込む直前、リネアが光学系魔法の《灯光球》で作った球場の照明弾が彼らを照らすように浮遊しているが、それを差し引いても内部はほぼ真っ暗闇となった。
撤退は許されない。次にあの扉が開くのは、全滅した時か、あるいは……
「「「……」」」
静寂と暗闇が支配する空間で、彼らは油断なく周囲を警戒していた……しかし、しばらく待っていても、何か変化が起こることはなかった。
十秒……二十秒……三十秒……日常ではあっという間に過ぎ去っていく僅かな時間も、今は一秒一秒がまるで無限に感じられる。暗闇が生み出す見えない重圧が、あらゆる方向から押し潰してくるようだ。
真綿で首を絞めつけられるように、何もしていないにも関わらず、泥のように緩慢で酷く息苦しい時間が彼らの神経をじわじわと擦り減らしていく。
(……居るな)
(何かが、近くに……)
だが、まったく油断は出来ない。前衛のアクトとアイリスは強く感じ取っていたのだ。
内部へ突入した瞬間に激流の如く押し寄せてきた、室温が氷点下を振り切ったのではと思わせる程の強烈な怖気を。
「……何も起きないじゃないの。一体どうなってるのよ?」
「おいコロナ、待て――」
そして、とうとう焦れたコロナが魔法行使の構えを解き、一歩前に踏み出した――次の瞬間。
ぼぼぼぼぼぼぼぼっ!! 突如、空間を支配していた闇の帳を光が一気に晴らし、暗闇に順応しつつある彼らを眩く照らし出した。
「「「……!!」」」
どうやら円形の空間だったらしい大広間の壁際に設置された、幾つもの巨大な燭台に青白い火が次々と灯ったのだ。
『――ォオオオオオオオオ……』
そして、揺らめく炎の陰影が生み出す青白き光は、中央に鎮座していたソレの姿を露わにした。
「なっ……!?」
コロナから驚愕の声が漏れる。何故、このような"怪物”が目の前に居たのに気付かなかったのか。
全長10メトリアは超えるであろう常識外れの巨体に、筋骨隆々とした青い肌を持つ異形の巨人だ。
炎の光を反射しながらぎょろりと動く赤き双眸は、眼下で固まる矮小な者どもの存在をしっかりと捉えている。
姿形こそ二足歩行の人のそれだが、牛型の魔獣を模した顔に、頭部から逆巻きに伸びた雄々しき一対の剛角――まさに、とある伝説で語られる牛頭の巨人そのものであった。
その傍らには、自身の得物であろう見上げる程に巨大で無骨な意匠の両刃の大戦斧が床に突き立っている。人間が持つにはあまりにも規格が違い過ぎており、実質的に怪物の専用武器だ。
「ちょ――ッ!? 何、コイツ!? こんなのが自然界に居る訳無いでしょ!?」
「大方、合成魔獣か何かだろ! 神話上の怪物を再現でもしたんだろうさ!」
「皆、もっと距離をとって!」
今まで戦ってきた魔獣とは一線を画す怪物の存在に慄く「奇なりし絆縁」の面々。敵の姿を認識した牛頭の巨人はゆっくり立ち上がると、突き立った大戦斧を右腕で力任せに抜き放ち、振り払った。
たったそれだけの挙動で、身体を浮き上がらせんばかりの凄まじい風圧が大広間を吹き荒れた。
圧倒的な膂力の発露。思わず手で顔を押さえながら後退りする彼らを圧するように巨人が一歩を刻む度、地面が激しく揺れる。
『ブルォオオオオオオオオオオ――ッ!!!』
魔殿の君主――合成魔獣「ミノス・ダイダロン」は、胸を大きく膨らませ、肉体と精神を震わせる特大の咆哮を轟かせた。
別に、精神に干渉する魔法的な力が宿っている訳ではない。だが、埒外の怪物が放つ咆哮の迫力は、生物としての本能を激しく揺さぶるのに十分だった。
各自が脳内で巡らせていた戦闘思考が吹き飛ばされて白紙に戻り、全員の行動が一瞬、遅れてしまう。
「ちぃいいい……来るぞ!! 俺とアイリスで引き付ける、お前らは後ろで詠唱開始!」
「りょ、了解ッ!」
その存在感を以て機先を制された上、これだけの巨体が相手ではこの距離は未だ近接戦闘の間合い。ならば、前衛が前に出て囮となり、後衛の魔道士が魔法発動のための安全圏に離れるまで時間を稼ぐのが定石だ。
しかし、思考が麻痺して動き出しが遅れた上に、敵はあの巨体に見合わず存外、早い。牛頭巨人――「ミノス・ダイダロン」は戦斧を天井に届かんばかりに高く振りかざし、小さき侵入者達に目掛けて突進を開始した。
こんな閉鎖空間で固まっていれば良い的だ。全員が散開して回避行動をとるが――唯一、アクトだけが、今まさに振り下ろされようとしていた戦斧の間合いから逃げ遅れてしまった。
(くっ、遅い……流石に疲れが……!!)
他のメンバーは魔力放出と身体強化魔法で攻撃範囲から素早く離脱したものの、同じく駆け出したアクトはいつもの速度と俊敏性が発揮されなかった。
当然だ。チーム全員がそれぞれ消耗しているが、特にアクトは強力な魔獣がうろつく第三階層を駆け回り、魔獣を引き連れながら迷宮内を全力疾走という大立ち回りを繰り広げた。その代償は無視出来るものではなく、消耗はチームの中で最も激しい。
制限時間を気にして大した休息もとれなかったため、疲弊した身体を魔力が十分に巡らず、出力が上がらなかったのだ。
「だったら!」
回避が間に合わないのなら、せめて断頭刃の如く凄まじい速度で降り落ちてくる戦斧を受け止めんと、アクトはその場に留まって魔力を全開で放出した。
それら全てを膂力に転換し、さらには莫大な魔力を纏わせた剣を下段から両手で斬り上げ――激突。
「ぐ、ぐぅうううううううううううう――ッ!!?」
衝撃波が広間を駆け抜け、互いの武器が壮絶なる金属音を響き渡らせた瞬間。腕が吹き飛んだかのような衝撃と重圧がアクトを襲った。石造りの床が砕けて凹み、頭上からのしかかる途轍もない重みに身体中が悲鳴を上げる。
力負けは明白。苦悶に呻きながら、アクトは戦斧の一撃を剣でギリギリ受け止め続けるが、いくら魔力で強化しようと、こうも一方的な受け身の状況では彼我の懸絶した腕力と体格差は覆しようが無い。
これはアクトが消耗しているからという話以前に、人間と合成魔獣の間にある根本的な肉体の規格と強度の違いがもたらす結果だ。
(重過ぎる……!!)
踏ん張って押し潰されないようにするのが精一杯のアクトに対し、捉えた獲物を確実に圧殺すべく、巨人は戦斧にさらなる力を込める。
アクトが全身全霊を込めることで辛うじて保っていた拮抗を、怪物の膂力が容赦なく打ち砕いた。
(マズ、い……!!)
そして、とうとう力尽きたアクトが剣ごと押し潰されるその寸前、
「「【唸れ風よ】!!」」
側面に回り込んでいたコロナとローレンの風魔《風戦鎚》の呪文が完成。二発の風の破城鎚が同時に吹き抜け、巨人の横っ腹に直撃した。
十分な安全距離から放たれた風の威力では、怪物の巨体を揺るがすには至らない。だが、横殴りの突風にあおられたことで、巨人の態勢が僅かに崩れる。それによって、アクトにかけられていた戦斧の重心がズレた。
「——ッ!!」
ほんの一瞬生まれた機会を逃さず、アクトは残った力を振り絞って腕に力を込め、ズレた重心の向きに沿って剣を傾ける。そして、半身を逸らしながら戦斧の落下地点を自身と反対方向になるように刀身を滑らせ、その軌道を捻じ曲げた。
強引に軌道を変えられ、攻撃対象を失った戦斧は有り余った破壊力で床を粉々に粉砕し、大量の粉塵を巻き上げる。
「先輩下がってください!」
「頼む!」
巧みなコンビネーションで満身創痍のアクトと素早く入り替わったアイリスは、生来の常人離れした脚力を以て大跳躍、立ち込める粉塵の中へ飛び込む。
未だ滞留する粉塵が作り出した視界不良を利用し、接近を悟られることなく巨人と肉薄。弾丸の如き勢いで粉塵を突き破り、巨人の頭部と同じ高さにまで跳び上がった。
「やぁああああああ――ッ!!」
そして、無系統《魔光昇華》の高密度魔力を纏ったアイリスの拳が、巨人の無防備な顔面にめりこんだ。
『ブルァアアアア!?』
魔力と身体強化で高められたレパルド族の拳撃の威力はかなりのものだった。相当なダメージを受けたらしく、巨人が苦悶の咆哮を上げながら大きくよろめく。
「【燃ゆる焔よ・風焼き裂いて・敵を斬れ】!」
「【吹雪く霊峰よ・高大なる頂より・白き一刺しを此処へ】!」
さらにその隙を逃さず、横並びに立つコロナとローレンが次なる呪文を完成させた。
このような巨体に対し、面制圧系の範囲攻撃は効果が薄い。
よって、炎熱《飛翔炎剣》、氷結《凍塊鋭突》。物理的作用力が高い魔法で確実なダメージを与える。
コロナの周囲に形成された複数の炎の剣が、ローレンの足元に展開されたゲートから切っ先鋭き氷塊の刃が、巨人目掛けて射出された。
戦闘開始時のもたつきを立て直し、「奇なりし絆縁」の攻勢が始まる――しかし、彼らが対峙する怪物もまた、ただの魔獣にあらず。殴られた顔の周りを苛立たしげに歪めながらも、巨人は先程のダメージから既に立ち直っていた。
『ォオオオオオオン…………』
殺到する炎剣と氷塊に対し、巨人はおもむろに口を大きく開く。
直後、周囲の空気ごと引き寄せられるような吸気音と共に、凶悪な牙が剥き出しにされた巨人に口内で、バチバチと紫電が迸る。
美しく、されど非情に凶悪な光を放つその稲妻は、加速度的に規模と光度を増していき――
カッ!! 光が、紫電が、稲妻が溢れ出した。一瞬、広間を白一色に染め上げた雷光が奔流となって吐き出され、コロナ達が放った魔法と正面から激突する。
「なっ……!?」
誰かが思わず零した驚声が、轟音に溶けて消えた。
炎、冷気、雷、三属性の相反するエネルギーが中間で壮絶に競り合い、それらの相互作用で発生・増幅した属性エネルギーを帯びた魔素が無秩序に発散し、周囲を滅茶苦茶に掻き乱す。
炎がうねり、冷気が立ち込め、雷が乱舞し、魔力の嵐が吹き荒れる。三属性の衝突点は、小規模な破滅を描いていた。
そして、そんな力比べの結果は――コロナ達の負けに終わった。拮抗を続けても尚、巨人の口からとめどなく吐き出される雷の奔流が、炎剣と氷塊を完全に呑み込んだのだ。
火力こそ随分と弱まったが、競り勝った雷と、さらには押し負けた炎と冷気が魔力の逆流を引き起こし、コロナ達に牙を剥く。
「嘘でしょ!?」
「防御が、間に合わない……!」
コロナ達は急ぎ防御魔法を唱えるが、自分達の魔力によって間接的に威力を引き上げられた雷が到達する方が早い。
この距離では対抗魔法による打ち消しも間に合わず、荒ぶる雷砲に少女二人が成す術なく吹き飛ばされようとした――
「【輝く円壁よ・二重の守りとなりて・彼の者らを包め】!」
その直前、コロナ達をくるりと覆うように展開された二枚の魔力障壁。その僅か数瞬後、到達した雷砲が眼前で炸裂し、二人の視界を凄絶に灼く。
しかし、半円状に張られた強固な二重の障壁は、正面からは勿論、上下左右からも回り込んでくる雷を完全に遮断。霧散・消滅する最後の時まで雷は障壁を喰い破らんと激しく迸ったが、その猛威が二人に届くことはなかった。
二人が火力勝負で破れるという万が一を想定し、後方に控えていたリネアが先んじて防御《守護光壁》を複数展開かつ、広範囲をカバー出来るように改変詠唱していたのだ。
「ふぅ、何とか間に合った……二人とも大丈夫?」
「助かったわリネア! いつの間にあんな即興改変が出来るようになったの?」
「本当に、見事な支援だったわ。……それにしても、今のは恐らく……」
複数の魔獣の特性や能力を掛け合わせて生み出された合成魔獣は、素体として大量の野生の魔獣が使われている。故に、あれは人造でありながら野生の魔獣由来の、原則として後天的な生命には宿らない魔力を持っている。
そしてあの雷は、並の魔獣を遥かに凌駕する莫大な魔力が、体内である種の魔法現象を引き起こし、それを特殊な器官から外部へ放出する――恐らく素体に用いられたであろう竜種の能力が一つ、「息吹」だ。
「図体とパワーだけかと思ってたけど、まさか『息吹』を使えるなんてね」
「流石に想定外だったわ。リネアが防いでくれなかったら、私達は間違いなくやられていた……」
魔獣の生態系の頂点に位置する竜種を象徴する能力なだけあって、その威力は凄まじかった。出現する魔獣の能力規格が「若き魔道士の祭典」用に調整されていなければ、この程度では済まなかっただろう。
もし、これが本当の実戦で、あの「息吹」が"本物”だったとしたら……たとえ魔力障壁で守ったとしても、コロナ達はこの世から塵一つ残らず消し飛んでいたに違いない。
「それで、これからどうするの? アンタの事だし、何か思いついてるんでしょ?」
「……」
油断なく巨人に視線を固定したまま話しかけてくるコロナに、ローレンは無言の肯定を返した。
危うい場面こそあったが、此処までの戦闘で得られた敵の情報を眷属秘術《機動定石》で精密分析した上で、彼女は一つの回答を導き出していた。
確かに、敵は想定を上回る怪物だった……それでも、あの怪物を討ち取る作戦は、ある。
しかし、そのためには万全を期すべくもう少し敵の力を見極める必要があるのと、作戦遂行に必要な最重要人物を何とか戦線復帰させなければらない。
ローレンはちらりと、作戦の要である人物――アクトを一瞥する。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
当の本人は、剣を杖代わりにして何とか立っている状態だ。魔力量こそまだ余力はあれど、肝心の体力は限界に近く、大戦斧の一撃をまともに受け止めたことで身体中が酷く軋んでいる。むしろ、あれだけの負荷に晒されながら立っているだけでも相当な胆力だ。
しかし、ローレンが頭の中で思い描く通りの全力の戦闘行動はとれないだろう。ならば最優先ですべき事は、
「リネアはアクトの回復に専念! 皆は、二人にアイツの攻撃が向かないよう持ちこたえて!」
「うん、分かったよ!」
「分かったわ! リネア、回復にどれくらいかかる!?」
ローレンの指示にアクト以外のメンバーが力強く応え、コロナがどれだけ時間を稼げば良いのかを、チーム一番の治癒魔法の使い手であるリネアに問う。
己の役割を理解したリネアはすぐさまアクトの元に駆け寄ると、脂汗を浮かべる彼の額に手を当て、身体の状態を確かめた。
「【天使の癒しあれ】」
そして、治癒《慈悲ノ御手》を一節で唱え、指先に暖かな癒しの光を宿す。アクトの自己治癒力を高めて傷と疲労を回復させながら、復帰までに要する時間を計算。
たとえ全快は無理でも、十分戦闘可能なレベルにまで回復させるには――
「二分お願い!」
二分。口で言うのは簡単だが、「息吹」を含めた一挙手一投足が災害級の被害をもたらす巨人の猛攻を凌ぎながらそれだけの時間を稼ぐのは、至難の業だ。
「了解!」
「任せてください!」
「分かった!」」
しかし、そんなリネアの無茶ぶりに対しても、コロナ、アイリス、ローレンは文句一つ言わず、全員が無条件の信頼を彼女に預けて行動を開始した。




