ガラード帝国魔法学院剣術大会③
――一週間後の休息日、遂にガラード帝国魔法学院剣術大会開催の日がやってきた。
空の機嫌は上場、暑過ぎず寒過ぎずの程よい気温。身体を動かすには絶好の天気の下で、険しき剣の道を進む若者達が、己が誇りと名誉を懸けて雌雄を決する……
「おー、こりゃ相当だな。聞いてた通り、結構なお祭り騒ぎじゃねえか」
会場である学院敷地内の魔法競技場の外周部にて。大勢の人々で賑わう辺りをぐるりと見回しながら、アクトは感嘆の籠った声で言った。
ここに集っているのは、何も学院関係者だけではない。制服でも講師用のローブでもない、ごく普通の格好をした老若男女――城塞学院都市オーフェンに住まう一般市民の姿も多く集まっていた。
普段は関係者以外の立ち入りを禁止する学院だが、こういったイベントなどではその固き門を開ける時がある。見物は無料ということもあって、街からは大勢の市民が訪れていたのだ。
ちなみに、この場にコロナとリネアの姿はない。毎年、剣術大会の観客席は満員状態になるという情報を掴んだため、彼らよりも早く屋敷を出て、席の確保に向かっていた。
(学院側としては、このタイミングで一般開放をしなければならないなんて、さぞ不本意だったろうな)
犠牲者も出た学院襲撃というテロ事件が勃発した直後に、こんな催しを開くのは揉めに揉めたに違いない。だが、ただでさえ閉鎖的な魔法科学院に悪印象を植え付けたくないという、上層部の意思が働いたのだろう。
(まぁ、お上の考えなんざ知ったこっちゃねぇし、そのお陰で大会が開催されたのも事実だしな。せいぜい満喫させてもらうとするさ)
そんな事を考えるアクトが目を向けたのは、競技場の入り口で大会参加受付の順番を待つ生徒達の列だ。一部はごく普通といった感じだが、殆どの者達は同じ制服姿でもどこか小奇麗な格好をしている。貴族の生徒達だ。
よく見れば、競技場に入っていく見物客の中にも、気品の漂う装いに身を包んだ中年の男女もちらほら見受けられた。普段は見れない我が子の活躍を一目見ようと訪れた彼らの両親だろう。
(流石にこのご時世に剣を修めようなんて物好きな奴らが参加するだけあって、どいつもこいつもやる気が漲ってるようだな。それとも、応援に来た家族に良い所を見せようってところか?)
どちらにせよ、やる気があるのは結構。参加を決めるまでに色々迷いはしたが、いざ参加すると滅多に経験出来ない剣の競い合いをアクトも楽しみにしていると、
「やはり納得がいきません。何故、私がマスターの力になれないのですか?」
アクトの傍らにちょこんと佇み、彼の制服の裾を引きながらエクスは尋ねた。コロナ達と違って、エクスは普通にアクトと共に屋敷を出発していた。
「い、いきなりどうしたんだ?」
「私の力はマスターの力。だというのに、私がマスターを支援出来ない理由に納得がいかないのです」
普段はまったくと言って良いほど感情を面に出さないが、心なしか、エクスはその無表情な頬をほんの少しだけ膨らませていた。
「それに、これは最も優れた剣の使い手を決める催しなのでしょう? ならばこそ、私の出番だと思うのですが」
「うーん……とは言ってもなぁ。大会じゃ、一次予選も二次予選も全員が貸し出しの木剣を使うことになってる。そもそもエクスが憑依してる愛剣が使えないんだ」
「では、外部からの権能を使った支援はどうでしょう? 私なら、媒体を介さず遠方からの支援も十分可能かと」
「それも駄目だ。今回、魔法関係の力は一切使えない決まりだからな」
剣術大会では、魔法の使用は勿論、魔力放出による行動強化も禁止。不正防止のため、魔道士の審判も目を光らせている。剣以外のあらゆる要素を排除した、純粋な剣技のみを競う大会だ。
制約には分類上、「精霊武具」として現出するエクスも含まれる。気配を隠している状態ならともかく、戦闘になればエクスほどの精霊の存在は必ず露見してしまう。
「気持ちは嬉しいが、残念ながらエクスの出番は無しだ。俺を信じて、コロナ達と応援でもしておいてくれ」
「……最近、マスターは私の扱いが雑なように感じます。鍛錬以外で私を使ってくれなくて、正直、少し不満なのです」
「そ、そうか? 第一、エクスの力を借りないと駄目な状況なんて早々起こらないんだよ……」
手伝えない理由があるとはいえ、精霊として、契約を結んだ主の力になれないのは結構ストレスらしい。珍しくご機嫌斜めな様子のエクスに、アクトは引き攣った苦笑で応じるしかなかった。
上位精霊たるエクスの強大な力を行使しなければならないのは、真に命が懸かった本物の戦いだけだ。そんな死闘、そう何度もあっては身も心も持たない。
それに加えて、アクト自身も未だエクスの力を完全に制御するには程遠い状態だ。出力としては圧倒的過ぎる上位精霊の力をこんなところで使えば、対戦相手もただでは済まないだろう。
「まぁ、そう怒らないでくれよ。アイツらにも奢るって約束しちまったからな。優勝賞金取ったら、皆で美味い物でも食いに行こうぜ」
「むっ……それは魅力的な提案ですね。では、以前にマスター達と同じ組の者が話していた例のレストランに行ってみたいです」
「おいそれって確か、結構な値段の店だったんじゃ……分かった分かった。とりあえずそれは後で決めよう。な?」
寂しい懐事情をさらに犠牲して、アクトが何とかエクスを宥めるのに成功すると――刹那、何者かの射貫くような視線が彼の背中に突き刺さった。
「!」
ばっ、と反射的にアクトが勢いよく振り返ると――その生徒は、受付を待つ参加者達の列から、アクトを真っすぐ見据えていた。
女性を惹き付けるような整った顔立ちに、すらりと首元まで流した赤髪が特徴の美少年だ。ただ、コロナの燃えるような赤髪と違い、こちらは少し茶色がかって薄い。
アクトの知っている生徒ではない。だが、細められた視線は間違いなくアクトに向けられており、そこに込められた明確な‟戦意”がひしひしと彼に伝わってきた。
「「……」」
無言のまま睨み合う両者。あからさまな挑発、それとも……お返しといわんばかりに、アクトも男子生徒に対して同質の‟戦意”を飛ばした。自分に向けられた物よりも一層鋭い‟戦意”を。
すると、アクトの‟戦意”を受けても尚、男子生徒は揺らがなかった。むしろアクトには一瞬、薄く笑いさえした気がして……その時。受付の順番が回ってきたことで、男子生徒はアクトから視線を切り、そのまま待機室の中へ消えていった。
「…………」
――まったく見覚えの無い生徒だった。参加者の列に並んでいたのだから、向こうも大会参加者の一人には違いないのだろうが、いきなり赤の他人から敵意を向けられるような恨みを買った覚えは無い。
そこらのチンピラ程度なら逃げ出す程の‟戦意”をぶつけてもまるで動じない男……一体、何者……
「マスター、どうかされましたか?」
「……え? あぁいや、何でもないんだ」
得体の知れない相手の存在に警戒しているところにエクスの声がかかり、アクトはふと我に返った。
(危ない危ない。考え過ぎて思考の沼にハマるのは俺の悪い癖だな……全ては大会を勝ち抜いていけば自ずとはっきりする事だ。今はそっちに専念するか)
謎の男子生徒についてはひとまず横に置いておき、アクトは大会へ意識を集中させることにした。
「じゃあ、そろそろ時間だし俺も行ってくる。負けるつもりは毛頭無いが、俺が優勝出来るか見守っておいてくれよ」
「承知しました。力になれないのは非常に悔やまれますが……マスターのご武運をお祈りしています」
「ご、ご武運とはまた大袈裟な……ありがとな」
そう言って、アクトは穏やかな笑みを浮かべてエクスの銀髪を優しく撫でると、ようやく短くなってきた列に並び始めた。
そして、順番が回ってくるやさっさと受付を済ませ、最後まで自分を見送るエクスを背に待機室の中へと消えていくのだった。
◆◇◆◇◆◇
大会参加者全員の受付や参加者達への木剣の貸与、その他諸々の準備がようやく整い、ガラード帝国魔法学院剣術大会は規定の時間から少し遅れて開幕となった。
観客席から割れんばかりの歓声と拍手が轟く中、計五十人の大会参加者は二列になって待機室からフィールドに出て行く。そして、東西に特別に設置された舞台に半分ずつ整列し、観客席を一周するように四度、礼。
魔法競技場のフィールドは存外広く、遠目からでは正確な人物の特定は難しいが……整列する参加者達の中にはアクトや件の赤髪の男子生徒、そして意外な人物の姿もあった。
これまた中央に特別設置された壇に上がった大会運営委員長が大会開幕を宣言すると、観客席は先程よりも大きな喝采に包まれる。特にオーフェン市民の熱気は凄まじいものがあった。
トラブルなどで中止になる年もあったが、剣術大会は学院創立当初から行われている由緒正しき催しだ。これまでに開催された回数はもう三桁は軽く越えている筈だ。
確かに、今年に関しては色々と打算があったのかもしれない。だが、この観客席から伝わる熱気は、この大会が世代を経て学院の、城塞学院都市オーフェンの名物として人々に親しまれている証拠であった。
運営委員長と数名の来賓が長めの演説を行い、観客達が小さめの拍手を送ってところで、いよいよ大会開始となった。まずは、五十人を十六人に絞り込む一次予選だ。
くじの順番通りに参加者は東西の舞台に一人ずつ上がり、大会要項で通達された一から十までの剣技の型を披露していく。演舞用の現代剣術に則り、型は剣の軌道は勿論、手捌き、足捌きまでがっちり決められた一連の動作となっている。
求められるのは動きの正確さ、勇壮さ、美しさ。これらをさらに細かくした項目から審査員が採点を行い、上位十六名が二次予選に進むことが出来るのだ。
審査員は全員、現代剣術に精通のある熟練の者ばかり。ちょっとやそっとで高評価は得られない。故に、参加者達は少しでも自分や剣を美しく見せようと、緩慢とした動作で演じるのだが……
「何というか……意外と地味な大会なのね」
一次予選開始から約三十分が経過し、既に十数人以上の演舞を東側最前列の席で見物したコロナの感想は、それだった。
「そ、そうだね。想像してたのとちょっと違うというか……」
「……ふぁ」
隣で真面目に見物していたリネアも苦笑いで同意する。その隣のエクスにいたっては、興味無しと眠たげに欠伸までする始末であった。
「まぁ、無理もないわよね。こうも変わり映えの無い光景を延々と見せられたら、飽きるのも当然だわ」
今も東西の舞台上で披露されている二つの演舞を半眼で眺めながら、コロナは至極当たり前の道理を呟いた。
最初は目新しさもあって、コロナ達も現代剣術を修めた参加者達の演舞を美しいと感じた。だが、それを何十人もが遅々とした速さで同じ動きを繰り返せば、流石に退屈な出し物にもなるというものだ。
これは日頃、同居人の少年の苛烈な剣技を近くで見ているからだけでは無いだろう。現に、開会式の時はあれだけ熱気があった観客席も、今は盛り上がりに欠けていた。
(もしかしてだけど、これを観に来る人の本命ってこっちじゃないんじゃ……)
コロナの推測はずばり当たりだ。毎年、剣術大会を見物に訪れる者達にとって一次予選がつまらないというのは共通認識であり、目当ては試合形式の二次予選だという者も少なくない。
しかし、観客には一般人の他にも貴族出身の参加者の親族も多く訪れている。演舞の伝統と格式を重要視する貴族側の要望を蔑ろにする訳にもいかず、一次予選は長らくこの形式で行われてきたのである。
「はぁ~~~暇だわ。一体、いつまでこんなのが続くのかしら……」
貴族出身ではあるが感性は一般人と同じコロナも、そろそろウンザリしかけていた――その時だった。
「あ、見て見て二人とも! 次、アクト君の出番だよ!!」
次の参加者を確認しようと身を乗り出していたリネアが、微かに色めき立った声でコロナとエクスに呼びかけた。
「え? 嘘? どっちどっち?」
「マスターが?」
呼びかけに応じ、先刻とは打って変わってコロナとエクスは食いつくようにフィールド上へ目を向ける。そこには、丁度待機室から出て東側の舞台に登るアクトの姿があった。
大またで堂々と舞台に立つ足取りに、緊張や委縮の気配は皆無だ。西側の舞台にはもう一人の参加者も既に登った後だが、こちらは少し動きが固くてぎこちない。
「やっと出て来たわね。さて、この退屈な見世物であいつはどうするのかしら?」
「契約を介して体内情報を確認しましたが、心拍・呼吸・血圧・体温、共に問題ありません。マスターなら容易にこなせます」
コロナ達のテンションが一気に跳ね上がる中、舞台に立ったアクトは北側に建てられた天幕下の審査員に深く一礼。続いて、開会式と同じように四方の観客席に向けて一礼。
その礼の間際、アクトは偶然、最前列の席に陣取るコロナ達と視線を合わせた。
自分をこの場に立たせるきっかけを作り、そして応援に来てくれた同居人達へ、アクトは向きを変える前に一瞬だけ固まり……口元に不敵な笑みを浮かべた。
「……ねぇ、リネア。今の見た?」
「ん? 何かあったの? アクト君、私達の事には気付いたみたいだったけど」
「さっきのアクト……すっごく悪い顔をしてたわ」
どうやらリネアもエクスもアクトの様子に気付かなかったらしい。コロナの表情が僅かに曇った。
(勝つ気はあるみたいだから大丈夫だと思うけど……アクトとの付き合いもそこそこになるから分かるわ。あの男がああいう顔をするのは、大抵ロクでもない事をしでかす時……)
コロナが波乱の予感を抱いていると、アクトは審査員達の方に向き直り、腰に携えた木剣を抜いた――刹那、おもむろに瞳を閉じた彼の身に異変が起こった。
『む? 何だねこの音は?』
『音……本当だ。それに何かしら、身体が前に引き寄せられるような……』
『しっ、静かにしてくれ……音はあの坊主から聞こえてくるぞ……?』
じっと佇むアクトの内側から、人体が発する物とは思えない重低音の轟きが生じたのだ。観客席にまではっきり聞こえる程の、周囲の大気ごと吸い寄せられるような、力強い呼吸音が。
(あれは……)
以前、同じ物を目にしたコロナは直ぐにその正体を察した。より近くに居る審査員達も異音に気付いたようで、かなり困惑した様子で目を見開いている。
アクトはそれを意に介さず、右手で握った木剣をゆるやかに頭上へ振りかぶり、まずは一の型――
「シィ――ッ!!」
鋭い気迫に大気が揺らぎ、強烈な踏み込みに大地が震える。直後、巻き起こった風圧が審査員席を通り越して30メトリアは離れているであろう北側の観客席にまで届いた。
観客席からは驚きやちょっとした悲鳴の声が重なって響き、風圧を正面から叩き付けられた審査員達は軽く腰を浮かせた。
彼らには一瞬、何が起こったのか分からなかった。遅れて理解出来たのは、アクトが型通りに剣を振り終えたという結果だけ。ただ、アクトの振りがあまりにも速過ぎたため、斬撃の軌道が認識出来なかったのだ。
『おい今の、見えたか……?』
『いや……全然見えなかった……』
『速っ……』
競技場全体がざわめきだすのも気に留めず、アクトは剣を振り抜いた体勢を入れ替え、西側の客席を向いて二の型。不可視の横一閃の後に吹き抜けた剣風が、観客達の髪を激しく揺らす。
今度も悲鳴じみた叫び声が上がったが、それに伴って歓声が混じり始めた。続けて三の型、四の型と超高速で演舞していく度に、歓声の割合は高くなっていき、拍手さえ沸き起こった。
「す、凄い盛り上がりだね。でもアクト君、あんなに速く剣を振ってるけど、審査の方は大丈夫なのかな……?」
これまでの演舞とは比べ物にならない程の周囲の熱狂ぶりに反して、リネアは不安げに呟いた。彼女の懸念は尤もである。
他の参加者が一つの型を約十秒かけるのに対し、アクトは二秒とかかっていない。いくら派手な剣技で観客を沸かしても、演舞の優劣を採点するのは審査員。芸術点が低くなるのは必至だ――本来ならば。
「……多分、アクトの狙いはそこなんだと思うわ。ホント、よく考えつくものね。でしょ、エクス?」
「えっと……どういう事なの?」
「えぇ、そうですよ。リネア、マスターはご自身の存在や印象を最も効果的に審査員達へ植え付ける為に、敢えてあのように剣を振るっておられるのです」
感心半分、驚愕半分にアクトの思惑を察したコロナが話を振ると、剣が関係するだけあってエクスは饒舌に語った。
アクトはただ無茶苦茶に剣を振るっている訳では無い。むしろ本気も本気、目には見えない仮想の敵を斬り捨てるつもりで舞っているのだ。彼が幾度となく経験してきた実戦と同じように。
それに、見れば分かる。型の披露に際して、アクトの動きからはあらゆる無駄が徹底的に削ぎ落とされ、超高速で振り抜かれる剣閃には僅かな乱れも無い。
身体の全てを余さず駆使した渾身の太刀筋は、‟魅せる技”として磨かれてきた現代剣術にも決して引けを取るものではなかった。
「アクトは、きっと考えたのよ。自分の剣を曲げずに他人を納得させるには、小細工抜きで勝負するしかない。自分自身が鍛えてきた剣技で、皆をぐうの音も出ないくらいに圧倒する、ってね」
「……そっか。決して何かに流されず、ただ自分の道を突き進む……ふふっ、アクト君らしいな」
「はい。それでこそ、私が契約を交わした主というものです」
演舞も終盤に差し掛かかったその時、三つの鋭い剣風が東側の客席をほぼ同時に吹き抜けた。この演舞の目玉と言うべき連続の型を、アクトは一息で重ねるように繰り出したのだ。
――お前ら、ちゃんと見てるか?
平時は滅多に流さない汗を滝のように流し、真剣な眼差しで自身の在り方を表現するアクトを、少女達は穏やかな眼差しで見守るのだった。
現代剣術の観点から言えば、どこまでも愚直で直線的なその剣は、単調・無骨・気品に欠けると揶揄されるに違いない。
だが、一人の少年が半生の先に研ぎ澄ませた鮮烈な技の冴えが、‟斬る”という純粋な概念が生み出す原始的な美しさが、そこには確かにあった。
『綺麗……』
観客席のどこかで、ふと誰かが呟く。
いつしか先程までの歓声は嘘のように鳴り止んでおり……アクトに拍手を送っていた観客、退屈そうにしていた観客、果てには審査員ですらも、この場の誰もが彼の剣舞に釘付けになっていた。
こうして、速度をまるで緩めることなく、遂に最後の十の型まで演じ終えたアクト。木剣を収め、汗を拭って一礼すると、アクトは割れんばかりの喝采を受けながら自身の番を終えた。
……ちなみに、アクトと出番を同じくして演舞を行った参加者は、審査員が採点をし忘れた事でやり直しとなった。しかし、先刻の凄まじい剣の迫力で委縮してしまい、結局、ボロボロの点数で終わってしまうのであった。
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