俺達は2次転職しました。
「グハァッ! ……ククク、俺を殺したところでッ、悪神バアル様の復活は止められんわぁ!」
Linker達はレベル80を超えたので、まずはメインストーリーを進める事にした。
今もなおアースガルド防衛戦の仕様に若干の不満がないでもないが、どれだけそこに愚痴をこぼしたところで何も変わりはしない。
実際ネトゲの運営ではよくある事でもあるし、深くは考えないようにしようとLinkerは決める。
80レベルから受けられるメインストーリーは星と繋がる決意の塔最上階で発生する。
アースガルドから出たLinker達はそのままそのままクエストを開始した。
内容としてはアースガルドでも名前が出てきたバアルという悪の神が放った部下を討伐するというものだ。
レベルも上がってきたので敵も相応に強くなっていたが、なんとか撃破する事ができ、今は撃破後のムービーを見ている。
「間も無く、この星は繋がるッ! バアル様の封じられし、彼の地へとッ!! 貴様らの終わる時を、脅えて待つが良い、星の子らよッ!!」
そう叫ぶと同時に、全身に亀裂が走る。そこから光が漏れ、そして大爆発。
バアルの部下の高笑いと共にムービーが終了した。
「結構ストーリー動き始めたみたいだな」
「ああ。ただこのストーリー追加されたの去年の年末らしいからなあ」
次は本日追加されたばかりのストーリーに続くとの事だが、そこではまだストーリー完結というわけではないらしい。
「半年に1回かぁ。かなりゆったりペースなのか?」
「初期の頃は早かったらしいぞ。まあサービス開始当初はメインストーリーとか無くて、1年くらい経ってから追加が始まったそうだが……内容自体は俺らも知っての通りごく普通で、あってもなくてもどっちでもいいくらいの評価がされてるみたいだ」
進化カードの言う通り、話自体は特に当たり障りない感じの普通なところであった。
奇を衒って変なものができあがるよりはいいのかもしれないが、特に語るところもないのは困りものである。
「噂だと次のストーリーが最後だとはよく耳にするな。レベル150から受けられるようになるとして、それ以上はごく一部の人間しか見られなくなるだろうしその辺だろうと」
「150かあ」
遠いと言えば遠いが、近いと言えば近い。現在の3人のレベルは85。折り返し地点は越えている。
と言ってもオンラインゲームにおける後半戦が前半と同じ程度の難易度ではないのが普通なので、むしろ本番はここからかもしれない。
「つまり、そこが私たちの次の目標、という事だね」
「そうなりますね」
恐らくは半年後、多少の前後はあるかもしれないが、そこまでにレベルを150まで上げてメインストーリーに追い付く。
Linker達はそれを目指して頑張っていく事になった。
80レベルを超え、二次転職が可能になったLinker達は光都ロムディアの神殿を訪れていた。ここで各職の上位職へと転職できるのだ。
そして次の職は一つだけではなく、いくつかの選択肢がある。名前と簡単な説明が表示されるそれらを見ていると、どれも強そうに感じ3人は揃って悩んでいる。
「ナイトにしようかな」
しかしいつまで唸っていても何も変わらない。Linkerはいくつかあった選択肢から、ナイトを選ぶ事にした。
パーティを組んでいる味方全体の受けるダメージを減らし、回復スキルも使える。響きもシンプルでかっこいい。
「よし決めた! 俺はバトルマスターにするわ」
進化カードも職を選び終えたらしく、Linkerの後に続くようにそう言った。
残るはMLGなのだが、かなり悩んでいる様子である。
とはいえ急かすつもりもない。一度転職したら新しいキャラを作り直さないと他の職にはなれない仕様なのでゆっくり考えた方がいいだろう。
そう思って見守っていた2人だったが、そこにMLGは困ったように聞いてくる。
「私は殺人鬼かな?」
突然、これまでの自分の行動を悔いるような発言をされ、Linkerも進化カードもどういう事なのかわからない。
急に良心でも生まれたのだろうか。
「そんな先輩、自分を卑下するような事言わんでも……」
「そうですよ! 現実で殺したりしなければ先輩は殺人鬼なんかじゃありませんよ!」
「え? いや、次の職業の話なのだが」
何を言っているんだ、と言いたげに返され、再びLinkerと進化カードは顔を見合わせる。
「……本当だ、盗賊の二次転職先はローグマスターか殺人鬼の二種類のようだな」
「いや、殺人鬼は職業じゃねぇだろ!?」
「そうなんだがそこを決めたのは運営だし、それ言い出したら盗賊も職業か? ってなるしなあ」
「他にもっといい名前はなかったのかよ……?」
いくらなんでも人聞きが悪すぎる。2択ではあるが、これは流石に実質1択のようなものだろう。
「ただ殺人鬼になれば二刀流が可能になって、攻撃性能が飛躍的に上がるそうなんだよ」
1択とLinkerは思っていたが、MLGは特に気にしていないのか、むしろ前向きに殺人鬼になろうとしていた。
「え、先輩……? 殺人鬼ですよ?」
「うん、しかしゲームの中だからね。私はなんとも思わないかな。むしろ楽しそうだな、と」
「さいですか……」
本当にそれでいいのか、と聞きたくもなったが、MLG本人は楽しそうだったのでわざわざ止めなくてもいいかな、とLinkerは苦笑いしていた。
「よし、今日から私は殺人鬼だ! 名前に恥じない働きをしてみせるぞ!」
「人聞きが悪いなんてもんじゃなさすぎる!」
そんなわけで、MLGは殺人鬼になった。名前の酷さについてはまったく気にしていない様子だ。
ゲームは楽しいのが一番だとはLinkerも思うのだが、しかし止めた方がいいんじゃなかろうかとも時折思う。
というかこの人うちの学校の生徒会長だったはずだけどこんなかなりヤバイものを心の奥底に秘めていそうな人がトップで本当に大丈夫なんだろうか、と思わないでもないが現実でそれを出してはいないのでLinkerはやはり何も言わない。




